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さざ波のようにくりかえしくりかえし。-おとなの目で読むこどもの本ー10

寝てるってば!
『ねえ、おきてる?』


 私はいわゆるロングスリーパーです。

 それはもう、赤ん坊の時から。
 (だがしかし、ただいま年齢的な症状で大絶賛こま切れ睡眠中……)

 対照的に兄はショートスリーパーだったらしく、生まれた時からなかなか眠ってくれず、母をかなり悩ませました。 

 なのに次に生まれた私はいつでも昏々と眠り続け、逆に「生きてるのか?」と、本当に息をしているのか手をかざして時々確認したそうです。

 そして時が巡り、兄の息子たちは由緒正しく眠らない赤ん坊で、妊娠出産で疲れている義姉をそうとう悩ませ…。
 元気な子に育ちました。
 兄家族が実家へ帰省している時に私も泊まってみると、地元球団の応援に使う鳴り物を打ち鳴らし「朝だよ~」と家族全員を起こしてくれたのも良い思い出です。
 そんな彼らも気が付けばもう高校生。
 はやいな。

 こどもが朝元気に目覚めるのは、毎日が楽しくて仕方ない証拠ですね。

 彼らを取り巻く大人たちの努力の賜物でもありますが、若いなあいいなあとカスッカスの大人は羨望のまなざしを送ります。
 なんなのでしょう、あのつやつやな髪と真っ白な白目は。

 ちょっと羨みの沼に落ちかけたところで本題に参ります。

 子育てそして睡眠つながりで、今回紹介するのはこちら。

 『ねえ、おきてる?』

  作・絵: ソフィー・ブラックオール
  訳: もとした いづみ
  出版社: 光村教育図書

 なかなか眠らない坊やの思い出を綴ったものです。

 何が凄いって・・・。
 眠っているママの目をこじ開けてくれるのですよ、このお子様は!!
 そしてあろう事かこう言うのです。

『ねえ…。ママ…。おきてる?』

『ねえ、おきてる?』

 寝てるよ。
 眠っているに決まっているだろ、まだ朝の四時なんだから!!

『おきてない』 

『ねえ、おきてる?』

 ここで、彼女は答えるべきでなかった・・・。
 それは、延々と続く禅問答の始まりだったのです。

『なんでおきてないの?』

『ねえ、おきてる?』

 優しいママは律儀に答えます。

『ねてるから』
『なんでねてるの?』
『まだ夜だからよ』
『なんでまだよるなの?』
『おひさまがでてないからよ…』

『ねえ、おきてる?』

 このあと、ずーっと坊やのなぜなにが蛇行したり振り出しに戻ったり…。
 それに付き合ううちに時間は経ち…。
 坊やの待ち焦がれた朝がやってきますが、結末はご想像に任せます。

 この絵本を読んだ私の感想は、『お母さん稼業は大変だ』。
 いや、子育てに関わる全てのおとなたちは大変だ。

 これにつきます。

 愛がなければやってられない。
 愛があってもやってられない。

 そう思うのが、24時間365日親でいること。
 私のようなへっぽこには母親になることなど、ほんとうに無理なことだったな・・・。

 でも、こんな時期もあっという間に過ぎてしまったからこそ、絵本が出来たのではと思うのです。
 作者の中で昇華された話なのだと、信じたい。
 子供向けというより、やはり子育て経験者が「そうそう、そうなのよ!!」と共感する絵本
(ちなみに絶賛子育て中の同僚に尋ねてみたら目をこじ開けられた経験有りだった…)
かな…と思います。

 目をこじ開けられても、眠りを妨げられても可愛い。
 それは我が子ならではなのでしょうね。

 そして。

 絵本の力でなんとか夜を乗り越えてください、世の中の戦う親御さん方。

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