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さざ波のようにくりかえしくりかえし。-おとなの目で読むこどもの本ー9

これだけは譲れない。
『しろちゃんとはりちゃん』


 食の好みは人それぞれで。
 たとえどれほど親しい人同士も、好みが合わない時にはそれがきっかけでちょっとこじれてしまうのが、食べ物の恐ろしいところです。
 場合によっては国際問題を引き起こすほどですから。くわばらくわばら……。

 身近な話として、私の場合は幸運にも夫と味の好みと食べられないものが同じなので助かっています。
 家庭によっては家族の嗜好に合わせて作り分けねばならないと耳にするたび、この件に関しては本当に。
 ただし、彼は玉ねぎとニンニクとらっきょうといった球根系の食材は身体が受け付けないので、それを入れない料理となります。
 というか、玉ねぎを食べると腹を下すスイッチを押してしまったのは何を隠そうこの私。
 まだニンニクがちょっと苦手…と言っていたころに、新玉ねぎまるごとスープを晩御飯に出した日を境に激変し、誠に申し訳ないことを…してしまったと反省しています。
 いやもう本当に、可愛そうなことを……。
 私自身は熱した玉ねぎが好きなので(年のせいかにんにくは苦手になっている)、一人の時に食すようになりました。

 さて。

 紹介するのは、そんな『食べたいもの』で喧嘩をする二匹の話。
 今回もけっこう、いやかなりネタバレしています。
 ご容赦ください。

 『しろちゃんとはりちゃん』
  作・絵: たしろ ちさと
  出版社: ひかりのくに

 白ウサギのしろちゃんとハリネズミのハリちゃんは大の仲良しで、森の中の一軒家で一緒に暮しています。

 何をするにもいきがぴったり。
 それが楽しかったのに…。
 ある日、喧嘩するのです。

 『カレーが食べたいね!!』

 ここまでは一緒だった。
 だけど、同時に食べたいのを叫んでみたら…。

 『えびカレー!!』
 『たまごカレー!!』

 両者一歩も譲らす大喧嘩。
 そして売り言葉買い言葉で、ハリちゃんが出奔します。

 『ふーんだ、あんなやつ、いないほうがいいんだ… おならくさいし』

 と、強がりを言うしろちゃんですが、季節は真冬。
 日は暮れても帰ってこないハリちゃんのことがだんだん心配になり、しろちゃんの妄想は悪い方へと膨らみます。
 もう死んじゃったかも、とさめざめしているところへ、けろりとしたハリちゃんがそこに。
 二人は仲直りして、えびとたまごのカレーを作るのです。
 ふたりだから、二倍おいしい。
 カレーの美味しさをかみしめるのでした。
 でも、またすぐに…?

 現在、手元に本がないので台詞に関してはざっくり書いています。
 実際に手に取って違っていたら申し訳ありません。

 たしろちさとさんの絵と言葉がとても可愛らしくて、おとなも子供も楽しめそうです。
 賑やかにみんなで読むのが良いかな。

 で、子供相手としては『友達といると楽しいね』という本として紹介するのかなと思いますが…。
 オトナ相手の穿った見方をしますと。
 『バカップルの話』です。
 ええと、「痴話喧嘩は犬も食わない、オオカミも狐も喰わない」ってところでしょうか。

 明るく、楽しい話です。
 ずどんと落ちている時には、ちょっとほんわかさせてくれることを約束します。

 それにしても、エビカレーか…。
 ツウだなあ。
 我が家の定番はチキンか豚だわ…。
 そして時には卵好きの夫のために二つに割ったゆで卵をトッピングします。
 皆さんのお好きなカレーは、どんなカレーでしょうか?

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