20作目:星に手を伸ばす
「あそこのおほしさま、見える?」
ぼくにくっついてきみが言う。
「見えるよ。あたりまえじゃないか」
「聞いてみただけだもん」
きみはすねてしまったね。
ぼくも、ちょっといじわるしたくなったんだ。
「ごめんなさい」「いいよ」
あいことばのように、くりかえすやりとり。
きずついてまたくっついて、
――いつのまにか離れない程強く結びついていたね。
「あの日の星、今でもあそこにいるね」
「ああ、見えるよ。当然じゃないか」
「聞いてみただけよ」
ふふふと笑い合い、沈黙が降りる。
「いつか、ふたりであの星まで行こうとか言ってたっけ」
「ああ、そんなこともあった」
行ってみたい気はするけれど、でも。
「でも、もう死ぬまで居たい場所に居る」
僕の言葉に振り向いた、瞳の星が瞬いた。
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