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【ブルアカ】考察:各学園のモチーフについて(前編)

こんにちは。
 「学漫同人物語〜2人が求める最終回〜」が開幕しましたね。特に考察したいことはなかったので、ここでは触れませんが、雑に突貫するストーリーラインが青春らしくて良かったと思います。

カードめくりの時間だ!


さて、みなさんご存知の通り、ブルアカにはいろいろなモチーフがあります。分かりやすいもので言えば、アビドス駅の駅舎が鳥取駅をモチーフにしていたり、エデン条約編でアズサが見上げているビルが渋谷のQFRONTだったりします。

鳥取駅
渋谷スクランブル交差点、QFRONT

また、各キャラクターの使う武器にもそれぞれモチーフがありますよね。


ダネルMGL


これらと同様に、各学校にもその元となったモチーフの存在が考えられます。この記事では、各学校がどのようなモチーフである可能性が高いかを考察していきます。
 あくまで私が可能性が高いと考えたものであり、それがモチーフであることが保証されるものではないことは、あらかじめご了承ください。

なお、この記事には、現在実装されているすべてのメインストーリー(カルバノグ2章まで)のネタバレと、イベント「隠されし遺産を求めて~トリニティの課外活動~」のネタバレ、他いくつかのイベントの情報が含まれます。
 特にメインストーリー未読の方は、ここでブラウザバックすることを推奨します。











はじめに:国家か神話か

実際の考察を行う前に、必ず触れておくべき話題があります。それは、学園のモチーフがそれぞれ固有の国家であるか、それとも神話であるか、という問題です。

例として、モチーフが分かりやすいアビドス高等学校について考えてみましょう。アビドスのモチーフは明らかにエジプトです。神秘がエジプトの神格であると明言された生徒が2人もおり、砂漠という地域特性、セイント・ネフティスグループという名前からもそれが読み取れます。
 さて、それではアビドスはエジプトという国家がモチーフでしょうか? それとも、エジプト神話という神話がモチーフでしょうか?

あれやこれや

多くの人はエジプト神話がモチーフだと考えると思います。もちろん、私もそうです。
 しかし厄介なことに、今までは、神話だと確定する根拠がありませんでした。ぱっと見はエジプト神話だと感じますが、それを考察するには、エジプトという国家でないと言えるほどの理由がなかったのです。

そう、今までは

ここ1, 2ヶ月のうちに、これをある程度払拭できる情報が立て続けに開示されました。具体的には、聖徒の交わり・グレゴリオの存在と「隠されし遺産を求めて~トリニティの課外活動~」です。
 詳しいことは後編のトリニティ総合学園の項で書きますが、これらにより、神話をベースとしているであろう根拠を多少増やすことができました。

重要証拠

これらより、この記事ではそのモチーフを示す際、「エジプト」「日本」などの国名ではなく、「エジプト神話」「日本神話」などの神話名(大きな括りにはなりますが)で表すことにします。


1. モチーフほぼ確定


アビドス高等学校

《アビドス高等学校》
モチーフ:エジプト神話

アビドス高校は、先述の通りエジプト神話がモチーフだと思われます。
 根拠は大きく3つあります。

1つ目は砂狼シロコと小鳥遊ホシノの神秘が、それぞれアヌビスとホルスとされていることです。シロコが実はウプウアウトだったと言われる可能性など考えられますが、少なくともエジプト神であることは間違いないでしょう。

エジプトのナイル川デルタ

2つ目は砂漠です。正確に言えば、エジプトはナイル川デルタの肥沃地帯を中心に発展した地域です。人口の95%がナイル川デルタの緑地に住んでいるため、実は砂漠国家と言いにくい面もあります。
 とはいえ、ギザの三大ピラミッドや大スフィンクスはエジプトの象徴です。そうはいってもエジプトの国土のほとんどは砂漠ですし、砂漠化に困っていることも含め、地理的にはエジプト的であると言ってもいいのではないでしょうか。

アビドス遺跡

3つ目は名称です。「アビドス」はナイル川西岸に実在する、オシリス信仰の聖地です。「ネフティス」はアヌビスの母である葬送の神です。「ホルス」はラーの息子ともオシリスの息子ともされる天空の神です。
 ここまでエジプト神話の固有名詞を借用しながら、エジプト神話と無関係と言い張るのは流石に不可能でしょう。

以上により、アビドス高等学校のモチーフはエジプト神話であると言えます。


百鬼夜行連合学院

《百鬼夜行連合学院》
モチーフ:日本神話・日本の民間伝承

百鬼夜行学院も、先述の通り日本神話がモチーフだ……と言いたいところですが、それだけでは語弊があるので、少し解説します。
 なお、陰陽術や忍術、桜や和服風の袂のある制服など、どこからどうみても日本モチーフなのは間違いないので、そこに関して説明することはありません。

語弊というのは、モチーフとされているのが神話の神々ではなく、民間伝承の妖怪だと考えられることです。

実のところ、神話の神々と伝承の妖怪には、さほど大きな違いはありません。

落雷

「雷が落ちるのは、ゼウスの雷霆による天罰だ」
「雷が落ちるのは、空に住む雷獣が足を滑らせて落ちてきたからだ」
 どちらも落雷の起源の説話であることは同じです。神のゼウスがやったにせよ、妖怪の雷獣がやったにせよ、自然現象の説明ですから結果は変わりません。


ゼウスと雷獣

神と妖怪を分ける違いは、強さです。神は強く、妖怪は比して弱いものです。ゼウスと雷獣が戦えば、間違いなく雷獣が負けるでしょう。

魑魅魍魎

転じて、弱い神が習合して妖怪とされることも、また強い妖怪が崇められて神となることも、よくあります。
 百鬼夜行学院の不良グループ「魑魅一座すだまいちざ」の「魑魅すだま」は、山林に棲まう怪物たちのことです。魑魅魍魎ちみもうりょうという言葉からも分かる通り、彼らは山の気から生じる妖怪とされていますが、一方で元々は山の神だったという説もあるようです。神と妖怪は可逆的で、とても曖昧な存在なのです。

さて、神道では神が八百万やおよろず千万ちよろず、数限りないほど多い数いる、と表現します。神がそんなにいるなら、神になったりならなかったりする妖怪も、相当たくさんいるんじゃないでしょうか?

百鬼夜行連合学院とは、このようにたくさんいる妖怪や神々が、戦国時代のようにグループを作って戦い、それを百花繚乱紛争調停委員会が平定して作られた連合である。そういうイメージではないか、と思います。
 なぜ素戔嗚尊などの強大な神々ではなく妖怪がフィーチャーされているかは分かりませんが、そこら辺はまた神秘について考察するときに考えたいと思います。

以上より、百鬼夜行連合学院のモチーフは日本神話・日本の民間伝承であるとします。


山海経高級中学校

《山海経高級中学校》
モチーフ:中国神話・中国の民間伝承

高級中学校」は中国において、日本の高等学校普通科に相当する教育機関のことです。ブルーアーカイブは基本的に女子高校生のキャラクターしか出てきませんから、ある意味当然ですね。

一方、「山海経」は同名の地理書を指していると考えられます。地理書といっても、これは日本でいう風土記のようなものです。各地の動植物や地形だけでなく、その地の文化や伝説、空想上の存在や、起源神話についての記述もあります。

山海経に記述される伝説の生き物より、刑天・帝江・并封
ちなみに、この珍獣たちの中に一体だけ神様がいる


山海経は中国における最古の地理書であり、多少散逸しているものの、中国神話研究の要となっている書です。

チャイナドレス風の制服や、中国風の街並み、薬師サヤの好物が刀削麺であることなどを踏まえても、中国、ひいては中国神話がモチーフであることに疑う余地はないでしょう。

百鬼夜行連合学院と比較して背景に迫れそうな情報が少なく、またメインストーリーの実装予定もないので、大したことは言えません。
 そんな中、個人的に山海経関連でモチーフを注目しているのは「五塵の獼猴」こと申谷カイです。


申谷カイ

申谷カイは、さる、すなわち猿をモチーフとしているのではないかと言われています。中国神話世界で猿と言えば、まず挙がるのは孫悟空(斉天大聖)です。カイの腕をよく見ると、孫悟空の頭の輪っかこと緊箍児きんこじに似たデザインのブレスレットをしていますね。
 悪行三昧だった孫悟空が三蔵法師の導きによって改心したように、申谷カイも先生の導きで改心するのか。それとも、孫悟空の原型ともいわれる無支祁むしきのように、封印されて終わりになってしまうのか。どうなるのでしょうか。

孫悟空

話を戻しましょう。以上により、私はアビドス・百鬼夜行と同様に、山海経高級中学校のモチーフは中国神話であるとします。
 玄武商会(四神)や梅花園(四君子)、錬丹術研究会(仙丹)などは分かりやすいですが、玄龍門の玄龍が何か分からないので、ご存知の方はコメントください。


2. 情報がなさすぎる学校


クロノス以外ロゴが出てない学校たち


《オデュッセイア海洋高等学校》
モチーフ:ギリシア神話

ゴールデンフリース号

今のところ、複数の船で構成されていることと、晄輪大祭の発祥地であること、豪華客船ゴールデンフリース号がその一端を構成していることぐらいしか分からない謎の高校です。

オデュッセウス

とはいえ、その名前に大きな手がかりがあります。「オデュッセイア」は古代ギリシア文学最古期の叙事詩です。これを完全な神話というと語弊がありますが、とはいえ数々の神が登場する立派な伝説譚です。
 オデュッセイアでは、英雄オデュッセウスがポセイドンの妨害やセイレーンなどの怪物に四苦八苦しながら、なんとか海を渡って故郷に帰る物語を描いています。海を渡ることを題材とした話であり、船の上の学校としてはぴったりのモチーフでしょう。

一方、オデュッセイアの時代だけをモチーフにしているのかと言えば、そうでもありません。

金の羊毛を得るイアーソーン

例えば、「ゴールデンフリース」は日本語で「金の羊毛」などと訳される、ギリシア神話でしばしば出る秘宝のひとつです。
 特に有名なのはイアーソーンの冒険譚に登場する「金の羊毛」でしょう。これを主題とする「アルゴナウティカ」は、英雄軍団アルゴナウタイを乗せたアルゴー号が、コルキスの王アイエーテースから「金の羊毛」を取り戻しに行く、という話です。

豊見コトリさん、ありがとう……

また、オデュッセイアが晄輪大祭の発祥であるという設定は、古代オリンピックが元ネタでしょう。古代オリンピックは、ギリシア神話の英雄アキレウスが親友の死を悼むために始めたとされるものです。
 これに着想を得てクーベルタン男爵が提唱したのが近代オリンピックで、こちらが現在我々が五輪などと呼んでいるものになります。

今出ているすべての情報が、オデュッセイア海洋高等学校がギリシア神話をモチーフにしている説を補強しています。
 以上より、オデュッセイア海洋高等学校のモチーフはギリシア神話とします。

《ワイルドハント芸術学院》
モチーフ:ケルト神話

ワイルドハント芸術学院は、オデュッセイア海洋高等学校よりさらに情報が少なくなります。というのも、「マツモト」という生徒が所属していないことしか分からないからです。

マツモト氏の絵(?)

この「マツモト」は早瀬ユウカの絆ストーリーに登場した人物で、最近久々にその絵が、「白亜の予告状」のステージ背景として登場したそうです。もちろん、私は気づきませんでした。

となると、参考にできるのは「ワイルドハント」という単語だけです。

ワイルドハント(ペーテル・ニコライ・アルボ)


ワイルドハントとは、ヨーロッパ全域に分布する「伝説の猟師の集団が、馬や猟犬と共に大挙して地上や空を駆ける」という伝承です。
 本当にヨーロッパ全域で形を変えて見られる話なので、この「伝説の猟師たち」を率いている人物もオーディンだったりアーサー王だったり、フランシス・ドレイクだったりホレおばさんだったりと、まるで統一性がありません。

そういう時にどう考察するなら、消去法で見ていくしか手段はないでしょう。

まず、北欧神話は除外されます。これは、ヴァルキューレ警察学校のモチーフが北欧神話と思われるからです。(もちろん、モチーフ被りの可能性はありますが、今のところそれを想定する理由もありません)
 ガブリエルなどの天使や聖人によるワイルドハントの伝承も除外されます。これは、トリニティ総合学園と被るからです。

次に、イタリアを除外します。イタリアはローマ神話や北欧神話、キリスト教などの影響を受けた、さまざまな伝承の多い地域ですが、一方でそのどれもが既存の学校のモチーフとして使われています。事実上被っているようなものなので、これも除外して良いと、私は考えました。


ガリアはこの辺り。とても広い。

そうして残るのが、ガリアとイングランドです。
 ガリアはフランス全体を含むめちゃくちゃ大きな地域のことで、ケルト系民族とゲルマン人が混在していたことで知られます。
 イングランドはグレートブリテン島の右下半分の地域のことです。紀元前七世紀ごろにケルト系民族が入植し、ローマによるロンディニウムの建設を経て、現在のロンドンに繋がる地域でもあります。


狩人ハーン

私は、これらの地域に伝わるケルト神話が、ワイルドハント芸術学院のモチーフではないかと考えました。ケルト神話ならば、ガリア・イングランド・ウェールズ・アイルランドを包括してモチーフとすることができます。
 ケルト神話はアーサー王伝説との関連も強く持っているため、ワイルドハントの名がつくことは不思議ではありません。また、狩人ハーンを始めとする、「ケルト神話を起源としたワイルドハントの妖精」という存在もしばしば見受けられます。少なくとも北欧神話ではない、という前提か考えると、可能性はそれなりにあるのではないでしょうか。

地理的な範囲が広すぎてどうとでもこじつけられるとはいえ、イギリスの大英博物館、フランスのルーブル美術館など、芸術に力の入る地域ではあります。

従って、現在の情報から推察される情報からは、ワイルドハント芸術学院のモチーフはケルト神話だと思われます。


ちょこちょこロゴが出ている。

《クロノススクール》
モチーフ:ギリシア神話(ティーターン)


オデュッセイア海洋高等学校と被ってる……


農耕神クロノス

クロノス(Kronos)は、ギリシア神話に登場する神で、農耕を司っています。
 原初の神であるガイアとウーラノスが産んだ12柱の神、ティーターンの1柱であり、ゼウスの父でもあります。

とても大雑把な神話のあらすじです。
 クロノスは、「お前は子に権力を奪われる」という予言を恐れ、子が産まれるたびに丸呑みにして閉じ込めていました。それに怒ったガイアがゼウスを隠し、アマルテイアという牝ヤギに育てさせたことで、大戦争ティタノマキアーが起こります。この戦いでクロノスは敗北して、世界はオリュンポス十二神に統治されることとなったのでした。


あえて無理やりでも「被ってない」を堅持するなら、オデュッセイア海洋高等学校と違って、ティーターン神族がモチーフとされている、という可能性は注目すべきでしょう。
 クロノスが支配していたティーターン神族の時代は、黄金時代と呼ばれています。神と人が共に生き、働く必要も争うこともない理想の時代です。もちろん、そんな時代があるわけないのは現代では常識ですが、それをさも現実であるかのように伝える……ということが、クロノス報道部のイメージの元になったのかもしれません。

なんにせよ、モチーフがギリシア神話であること自体は、現在の情報から考えた限り間違いないでしょう。

従って、クロノススクールのモチーフはギリシア神話とし、ティーターンと書き添えることで、オデュッセイア海洋高等学校と区別することにします。

《ハイランダー鉄道学園》
モチーフ:スコットランド周辺の神話?(アルスター物語群、へブリディーズ諸島民間伝承など)


ハイランド地方。
左側のゴチャゴチャした諸島部がへブリディーズ諸島。
左下の島が北アイルランド(アルスター)。

たぶんこのゲームに登場している学園の中で、最も情報がない学校です。ハイランダーとはHighlander、高地に住む人という意味で、もっぱらスコットランド北部のハイランド地方の住人のことを指します。

スコットランドの神話は、ほとんどが断絶したか流入したか同化したものです。
 最も古くハイランドに住んでいたのは、ピクト人と呼ばれる民族でした。ピクト人は小さな王国の連合を持ち、複雑な社会や神話も持っていたと思われますが、記録があまりにも少なく、実態がほとんど分かっていません。
 その後、ハイランド近い地域であるアルスター(北アイルランド)の神話に影響を受けて行ったことは間違いありません。アルスターの神話といえば英雄クー・フーリンや戦女神モリガンデアドラなどが有名ですが、これらはスコットランドにも伝わっています。

鉄道に関してですが、これはもう全く分かりません。イングランド王国は鉄道発祥の国で、そのお隣さんであるスコットランド王国にもたくさんの鉄道が整備されています。
 が、それを言ったら植民地整備の一環で鉄道が敷かれたインドにもたくさんの鉄道があります。


機関車トーマス

あるいは、機関車トーマスに関連した連想でしょうか?
 しかし、機関車トーマスの舞台であるソドー島はマン島がモチーフです。スコットランドに比べれば、アイルランドの方がよっぽど近いので、そうであれば「アルスター鉄道学園」とか、「トリスケリオン鉄道学園」とか、もっとらしいものがあったはずです。

ここから導き出せる結論は「何も分からない」です。
 ただ、それだとちょっと寂しいので、当てずっぽうで、モチーフとされる可能性が高そうな説話を上げることとします。つまり、スコットランド神話、アルスター物語群とへブリディーズ諸島民間伝承です。ストーンヘンジをピクト人によるものと考える場合は、これもモチーフとされうるでしょう。

これにて、ハイランダー鉄道学園のモチーフはスコットランド神話ということにして、この前編を終えたいと思います。


後編へ続く。

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