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タイ語の翻訳小説「824 月明かりのロンド」ができるまで③

◎40年前に訪れたとたん、タイに心を奪われた

⚪️初めて訪れたバンコク

40年以上前、初めて訪れたバンコクは、もちろん高速ビルもない、物価が安くて世界へな格安チケットが買える場所という理由で、バックパッカーの聖地、拠点のひとつだった。

バックパック旅行に目覚めたばかりの私は、早速バンコクに飛び、ギリシャ行きの片道チケットを入手した後、しばらくタイに滞在した。バンコクの安宿街カオサン(翻訳小説 「824 月明かりのロンド」にも登場します!)に宿をとり、そこで仲良くなった人たちと、何をするでもなくつるんでいたが、あるときサムイ島に遊びに行こうという話しになり、お金はないが時間はたっぷりある我々バックパッカーは、バスでふらりとサムイ島に行った。

⚪️電気がなかったサムイ島

サムイ島ではバンガローに泊まったのだが、当時は電気がなく、夜の灯りはフロントで手渡された懐中電灯だけ。吸い込まれるような闇の中、もちろん、聞こえるのは引き寄せる波の音だけ。波音と鼓動を合わせながら、自分も地球のひとつであることを強く感じながら、私は懐中電灯の光を頼りに短い日記を書き、夜を過ごした。
闇はこんなにも深くて、自分はこんなにもちっぼけだ。でもものすごく確かに自分はここに存在している。

⚪️サムイ島で会ったステキな女性

そして夕食は仲間とビーチで食事をした。様々な背景を持つ年代も異なる人たちといろんな話をし、タイの人たちとも随分仲良くなった。そのうちのまだ学生だった女子とは特に気があった。彼女の首元に、当時流行った、蓋を開けると小さく切り抜いた顔写真などを入れられる「ロケットペンダント」があった。私はてっきり、島に一緒に来ているボーイフレンドのとびきりの一枚を肌身離さずだと思い、見せていただいてびっくり。なんとタイで熱烈に支持されていた前国王ラーマ9世の、写真ではないか。
いやぁ、真に国民のことを思い、タイの父とみなから慕われていたラーマ9世。まさか、恋人以上、アイドル以上だなんて。
驚いて目を見張る私に、ちょっとはにかんで笑みを返す彼女がとても愛らしく、敬愛しています、たぶんそのように話してくれた。傾倒とか盲信とか、ではない、まっすぐな人をまっすぐに尊敬することの意味を、1番最初に教えてくれたのは彼女だ、と今になって思う。

まさか住むとは思わなかったが、あれからタイは大好きな国になった。

今日はこんな話をしたくなった。
じゃ、またね。




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