あの日、あの時、あの店で。

書店員としての仕事は、
新刊を売場に並べて
追加の本を発注するだけではありません。

レジでの接客も書店員の大切な仕事だと思いますし、
なんなら僕は接客がいちばん重要な仕事なんじゃないか
と考えています。

書店員なら選書や品揃えで訴求しないと、
という声もあるかもしれないですが、
まず「お客さまに来店していただかないと」
いけないわけで、
なおかつ「また来よう」
と感じていただかないとダメなわけです。

僕が今勤務しているのはナショナルチェーンのお店で、
週末ともなれば「不況とは何ぞや」というような人混みになります。

なので、
品出しや発注などは本当に一分一秒を争うような状態に
日々なってしまいます。

けれども、
その混雑を言い訳にして、
「忙しさ」や「苛立ち」を外に漏らしてしまっては
非常に危険だと思うのです。

いくら品揃えが良くて、
在庫も充分あるようなお店でも、
書店員がみんなピリピリしているようなところには
何度も足を運びたくはならないはずです。

今、書店に来てくださるお客さまは、
インターネットで簡単に手に入るのに、
わざわざ店舗に出向いて探しに来てくれている人たちなんです。

その人たちが「やっぱりネットがいいや」
って感じてしまったら、
もうおしまいなんです。

新学期や年末、
繁忙期はもちろんあります。
けれど出来る範囲内で、
「リアル書店だからできる接客」を
しないといけないな、と思うのです。

まるで推理ゲームのようなお問い合わせに応じる、
お探しの棚まで同行案内する。
「親身になる」
ということがどれほど大切なことか。

僕に限ってですが、
どうしても自チェーンでは調達できそうにない時は、
近隣の他チェーン店さんをご案内しています。
きっと「サービス外だ」って怒られそうなんですが(笑)

けれど、
うちのような大きいお店でこそ実践することで、
お客さまの心に残ってまたリピートしてくれるんじゃないか。

「あの時親切に案内してくれたから、あそこに探しに行こう」
が成り立つんじゃないか。

それを信じて僕は毎日接客をしています。

書店員は「本と人の橋渡しをする」仕事です。

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