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AG#10 Takamine PT-010-ST

Specification

トップ:スプルース単板
サイドバック:ローズウッド
ネック:マホガニー
フィンガーボード:ローズウッド
ブリッジ:ローズウッド
ペグ:タカミネオリジナル
ピックアップ:STEREO PALATHETIC

About

初期のタカミネの音、つまり初期のプリアンプの音はどちらかというと硬質で、イメージではカキコキいう感じ(伝わるでしょうか)です。当時(70年代後期)のプリアンプ付きアコギと言えばオベーションしかないような時代ですが、オベーションは中域の強い丸い音で、トーンコントロールこそあったものの、OP-24が搭載されるまでこの音色は変えようがない感じでした。タカミネのパラスティックピックアップはその音色に対して、アコギならではの倍音を入れようとしたのかなと思える、オベーションと全く違う音色です。ニールヤングのFRAPやアリスが使っていたShadow、そして最も有名なバーカスベリーなど、いわゆる貼りピエゾ(昔はコンタクトマイクと言っていたと思う)は当時のPAではプロ以外、充分にアコギらしさを持った音色が再生できていなかったと思います。みんな「割り切って」使っていたと思います。今では逆にそれでしか出ない音としてみられるという皮肉な感じもありますが…ともあれ、充分なパワーと音色を持ち、価格を抑えたラインナップは間違いなく若者にアピールする存在でした。とはいえ、一番下のモデルが6万円だったと記憶しています。当時の中級者以上向けだったのかな。アルフィー使用で大ブレイクするまでは音にうるさい人が選ぶギター、みたいな感じでしたね。80年代の中盤、あるアマチュアのイベントを見に行ったらほぼ全員がタカミネユーザーで驚いたことがあります。

Story

僕がギターを買う理由のひとつに、「あの頃レコードやライヴで聴いていた音を再現してみたい」というものがあります。これもまさにそれ。アルフィーの初期の音。84年春あたりまで、アルフィーのエレアコと言えばタカミネがメインでした。80年代前半というのは、ようやくアマチュアが「国産エレアコ」を手にし始めている時代です。当時、エレアコはプロのためのものだった。われわれアマチュアは、プロのステージを見て、グヤトーンとかモーリスのコンタクトピエゾをつけたりという感じだった。85年ごろから徐々にアマチュアのステージでもエレアコが見られるようになるけれど、アコースティックな音にこだわる人はタカミネが多かった。もちろんモーリスもヤマハもピックアップ搭載のモデルはあったけど、です。上で書いた「硬質な感じ」と「バランス」がライヴでも録音でも使える感じだったからだろうと思います。そのタカミネ、90年代以降、長渕剛が使い始めてから後には「ザクザク感」という名のもとにドンシャリの強調されたEQ設定になりました。初期のものと90年代以降のものはほぼ別物です。ジャクソンブラウンがいまだに初期のプリアンプを移植しながら使っているように、マニアは初期のプリアンプの付いたギターを探すんです。僕はその後、90年代にCSNが来日したときスティーブンスティルスがタカミネを弾いてるのを見てドレッドノートモデルを探し始めました。でも、なかったんですよね、なかなか。初期のプリアンプを搭載しているドレッドノートサイズのモデル。もうあきらめかけていたとき、細坪さんのライヴでギターを弾いている久保田邦夫さんがこのモデルを使っていて意欲再燃^^数年がかりで見つけました。なんとステレオアウトできるようになっているモデルです。使わないけど(笑)。トップは単板でよく鳴るし、非常にバランス良い現役感満載の個体です。テンションが柔らかくエレキ的なリードプレイにも向いています。

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