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必要とされていない。

年末に買ったのですが、ようやく読み終わりました。今年の3冊目。追分日出子さんによる小田和正評伝「空と風と時と 小田和正の世界」。

文字通り、小田さんの生い立ちから昨年までを追いかけた本です。

初めてオフコースの名前を知ったのは「ギターブック」という雑誌の増刊号「フォークギター」って言うやつに「愛を止めないで」のスコアが掲載されていたのを見たのが最初だったと思います。

その本買ったのは中学1年の時で、「さよなら」より前だったと思う…ちょっと自信ないですけど。愛を止めないでも、その曲を聴いたのはもっと後で、同級生が口ずさんでいるのを聞いて「あの歌はこんな歌なのか」と思ったくらい。当時はラジオでもあんまり流れてなかったという印象なのですが。さよなら以降はもうあっという間にオフコースに町の色が塗り替えられた印象ありますけど、そこで流れてくる曲にはあまり惹かれなかったなあ。

それでも、そのレベルでもやっぱりNextは見たし、武道館10日?アリスは抜かれたのかあとかね、思ってました。音楽雑誌でオフコースは解散したのか?みたいな時期を横目で見ていたのを覚えています。まあ自分にとってはアリスの活動停止に始まって海援隊とか次々に解散していくその世代の人たちになんか時代が変わるんだなあみたいなことを思っていた。直後にやってくるバンド時代にしばらくついていけなかったんですね、アコギの音がまったくしなくなって。

そんな頃、ずっと気に入って聴いていたのはセレクションの最初のやつでした。

オフコースの話は、書き始めるとずいぶん長く書けるので^ ^この本の話から離れてしまうからまた別の機会に。

この本の中で僕が一番印象に残った言葉がこの記事のタイトルです。

小田さんがこういうことを思っていたというのがちょっと驚きでしたけど、売れなかった時代、なんでもできる生い立ちを持った人が周りから受け入れられないことに対して感じた衝撃というか挫折?の言葉なのかな、と。

僕は別に小田さんみたいにエリートでもなんでもないので、彼に比べるべくもないんですけど、偶然だけどこの20年くらい若手に対してずっと言って来たのは「選ばれないということに向き合えるか」ということなんです。

それは自分がテキトーにやって選ばれないのは当たり前だけど、真っ向勝負の真剣に打ち込んでもどうにもならない時がある。その時言い訳しないで向き合えるか、ということ。

たぶんこれは、その当時の言い訳だらけの自分に向かって言ってるんでしょう。この本読んでいて、その言葉を読んだ時に反射的にそう思った。

オフコースが売れるまでの試行錯誤からソロ以降現在に至るまで、僕にとって興味深かったのは、全編を通して歌詞の話でした。

小田和正と言えば「せつない」と「黄昏」という言葉が僕の持つ小田イメージだったんだけど、この本を読むと、この本のタイトルにもある「空と風と時」がメインの感じもする。

風ってそれぞれの中で感じる強さとか温度とかみんな違うと思うんですね。どんな風に心揺さぶられるかとかね。小田さんの書く風はどういう風なのか、読んでいて初めて興味を持ちました。

たくさんね、歌詞も掲載されています。トーンを揃えるためなのか偶然なのか、驚くほど同じテーマで小田さんは詞を書いている。そして年を経るごとに、同じ言葉なのに、強さを増しているように感じる。同じテーマを、いろんなものを通り越していく中でキレを増して書き上げていく。

自分のことですけど、今年毎日記事を書いているのは理由があるんです。言葉にキレを持ちたいと思って。修行、じゃないですけど、練習?ほんとうに読んでくださる方には感謝しています。読んでくださる方がいるというのはとても大きな励みになります。

毎日書いているとネタがとか言うけど、そんなことはない。でも間違いなくあるのは、触るものに対しての知識とか教養の有無ははっきり出てしまいます。これをエクスキューズするくらいなら書かない方がいいと思う。これは別に他の人の記事に対して言っているのではありません。人は人。それよりも自分の言葉にキレがあるのかどうか、はっきりいうといま不安になっているんです。年をとるということはどういうことか。「どうでもいい」と思うことだと思う。どうでもいいと思うと歌詞なんか書けない。これが今自分が怖いと思っていることです。

小田さんの話を読んでいて、言葉を紡ぐことに対する情熱というか伝えたいことというか、そういうところに感銘?刺激?を受けました。632ページ。良い本です^ ^

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