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生きるための「孤独対策」は可能か

 先日、コミケは孤独を癒しうるかという記事を書いた。

 圧倒的多数の人にとって孤独はしんどいものである。そして、一般的には何らかのイベントや組織に関係し、相互に存在と貢献を確認しあい、時には面倒くさいと思ったりしながらあれこれかかわっていくことでどうにか孤独をカバーしながら生きている。
 この「組織」というものにも種類と機能がある。
 今回はその強さ・機能・種類というものを、自分なりの雑な分析で考えてみたい。

 まず、機能としては、「メンバー全員の生存を目指す」ということと「何らかの業績を上げることを目指す」という2つのものがある。両極端なものを上げるとすれば「家族」と「企業」である。
 「家族」は基本的にメンバー全員の生存を目指すことが第一である。例えば家族でエベレストに登山するという目標を立て、それを達成したとして、帰りに家族の一人が死んでしまったとしたらそれは機能としては「失敗」ということになるのが一般的である。(全員が覚悟しているという特殊そうなケースは除く)一方、企業としては、メンバー全員が生きていても大赤字を連発し続ければ企業は解散となり、やはり機能を果たせ居ていないということになる。いずれも極端な状況と極端な例だが、「生存目的」-「業績目的」という軸が存在する。

 もう一つの軸は「強い」か「弱い」かである。これは、「時間的な永続性」・「利益の共有」・「空間の共有」の度合いが強いかどうかである程度考えることができる。永続性が長く、利益の共有が前提であり、空間を共有している時間が長いほど、「強い関係」であるといえる。

 さて、組織の「種類」となるが、典型例としては①職場②家族・地縁③趣味(学問や知識なども含む)がある。
 まず、①の職場についてであるが、基本的には業績重視である。しかしながら、メンバーシップ型の職場の場合、必要以上の利益よりもメンバーの生存が優先になる場合が多い。特に、こちらの記事に記載した「快適性」を優先した新規メンバーの採用などの場合、部分的には「生存重視」をとっており、将来も生存重視を志向するようになる。
 一方、ジョブ型職場の場合は、場を共有したりするものの、メンバーシップ型職場ほど利益を共有しているわけではない。なので、いくらかだが「強さ」は下がるケースが出てくる。しかしながら、場を共有したりしている以上大きなものではないこともありうる。一方、メンバーシップ職場ばよりも業績が分かりやすくなる傾向があるため、業績を重視するようになるが、おそれでも既存のメンバーには一定程度の心理的な親密性が働くと思われる
 大きな組織の経営層となると、基本的にメンバー一人一人にこだわっている場合ではなく、替えの利く人材であれば替えを利かせればいいということになる一方、業績圧力は強くなる。よって、より業績重視によることになる。
 クラウドワークやyoutuberなどにおいては、空間を共有するケースが減るため、紐帯の「強さ」という面では大幅に下がると思われる。(ただし、メンバー内部での協業が起こっている場合はむしろ強くなる)業績が非常にはっきり数字に出るため、業績重視になりがちである。
 次に、家族と地縁について考察する。旧来は両者とも「強く」かつ「生存重視」であった。しかし、子供の成人した後の自由や離婚の多発・成人後の移動の自由や職住分離などにより、いくらか「弱い」ものとなり、かつ「ある目的のために集まる(PTAなど)」ようになり、次第に「メンバーの生存重視」というものが薄れていると思われる。
 次いで、「趣味の世界」となる。趣味においては、わかりやすいようにコミケに例えると、「一般参加する人」と「サークルなどで参加する人」の2通りがある。一般参加者は「弱い」紐帯であるといえるが、それでもコミケ特有の価値観を共有したり、様々なものに対する興味という「エネルギー」を必要とするところから、それなりの「シンパシー」という強さが必要になる。また、一般参加でも仲良くなる人はできうるが、それをつなぐにはそれなりのエネルギーを自分でかけなければならない。サークル参加となると、何らかの成果物が必要になるところから、いくらか業績重視になり、また、その過程で紐帯も強くなる。
 さて、ここまで書いて、空白の部分が存在する。
 それは、「業績をある程度以上必要とする超強い紐帯の組織」「業績をある程度以上必要とする超弱い紐帯の組織」そして、「生存重視の組織」である。


 まず、「業績をある程度以上必要とする超強い紐帯の組織」については、旧いものでは宗教団体が存在する。宗教団体は世界に自分たちの思想を布教しようという強い業績指向を持つこと組織から自分たちの侵攻を守るというそこまで強くない業績指向を持っている団体が存在するが、いずれも極めて強い紐帯によって支えられている。現代では高密度なオンラインサロンなどもこれに該当する。
 一方、「業績をある程度以上必要とする超弱い紐帯の組織」は、低密度なオンラインサロンなどである。例えば、このnoteの安いメンバーシップやマガジンでのやり取りなどが該当する。
 最後に、新たな「生存重視」の組織であるが、決定版といえるものはなかなか見当たらない。一応福祉団体や当事者団体などが推定されるが、本質的に外部からの無償に近いリソース提供を必要とする性質や、いわゆる「弱者」が集まりやすいことなどから、運営者に負担と情報が偏りやすく、それが搾取などにつながりやすいことから、なかなか成立が困難なものとなっている。

 孤独への対策として「生存重視」の中間団体こそ求められているが、そのリソースをどうやって確保するかははなはだ困難な問題となっている。