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続1・囲碁界と将棋界の比較

 前回の記事を書いたのち、せっかくなので少し古い動画だがこちらの動画を見た。

 非常に見ごたえがあった。分かったことは5つある。

① 囲碁界と将棋界の盛り上がりの差を「藤井聡太」に求めることはできない。
 将棋界と囲碁界の比較の上で、囲碁界からはよく「藤井聡太効果の差だ!」といわれることがある。
 しかしながら、残念ながら囲碁界にも2020年近辺に藤井聡太効果に匹敵しうる効果を発揮しえたスターが登場している。
 一人は「仲邑菫」プロの登場であり、(特別枠とはいえ)10歳でプロ入りしている。
 きちんと火をつけていけば十分に盛り上がれる材料である。
 もう一人は「芝野虎丸」名人の登場であり、こちらのほうがインパクトが大きい。
 なのしろ「最年少名人」である。作られた要素が全くない。
 しかもキャラクターも相当面白い人物のようである。
 こういうキャラクターは将棋界的な考え方をすると配信対局のゲスト解説にピッタリであり、アシスタントに存分にいじり倒されたら間違いなくキャラが引き立つ。
 これだけの材料をそろえながら、それを生かせずに「藤井聡太効果」というのは相当つらいものがある。

② 「言葉」の差
 囲碁においても将棋においても内容や作戦などを表現する様々な「言葉」があるが、先人たちが開拓してきた言葉の「インパクト」において、将棋のほうが分がある。
 私は囲碁は全くできず、将棋は多分13級くらいの腕前だが、囲碁の「大模様作戦」とか言われても何のことかイメージがわかない。多分見てもわからない。しかし、将棋の「穴熊囲い」といえば、なんとなく意味は分かる。これは圧倒的に「言葉」の差である。

③ 囲碁と将棋の「戦績の配信速度」の差
 将棋棋士の戦績については、ほぼリアルタイムに近いくらいの速度でその結果がわかる。少なくとも、現地にいたりリアタイ視聴をしていなくても翌日には結果がわかる。
 しかしながら、囲碁においてはその結果を知るのに数日かかるどころか、囲碁棋士自身も自分の戦績を把握していない人が多いということである。
 ここからは私の考えであるが、なぜこうなるかといえばおそらく将棋界では「トーナメントプロとして一流ではなかった町道場を経営しているプロ」の意見がある程度反映されるのに対し、囲碁界では上記のようなプロの意見が反映されないからであると思われる。
 たとえば、プロが経営している町道場の子供たちであれば、当然先生の成績は気にするだろうし、そうなるとすぐに結果を知りたくなるというニーズは存在すると思われる。そういうニーズを反映できるかどうかというのが「日本将棋連盟」と「日本棋院」の差であろう。

④ 「囲碁メシ報道」をあまりしていなかったという事実
 「将棋メシ」というのは将棋に関する報道で定番になっている。
 どうやら1937年というとんでもない昔から行われているらしいが、先の動画の囲碁担当記者が言っていたように盤上とは全く関係がないのに結構評判がいい。
 棋士の側としても、特にタイトル戦においては、羽生善治九段などは写真を撮ろうとするとニコニコしながら「これ拒否すると怒られるんですよね」と冗談をいいつつ協力するというくらい、定番となっている。
 当然囲碁でもそのくらいのことはやっていると思っていたが、まったくやっていなかったというのには正直驚いた。

⑤ 囲碁界から見ると将棋界の報道は「盛っている」と思っていること
 囲碁界からすると、将棋界における様々な報道、特に「藤井聡太が指した新手」などに対する報道について、特にネット記事などにおいては「盛っているんじゃないの?」ととらえられているらしい。
 具体的に言うと、1か月に一回くらい「10年に一度の手」が出てきているというのではないかということである。
 特にネットでの配信などにおいては、人気商売なのだからある程度「盛ってなんぼ」であり、「危機と言っている割には囲碁界というのはずいぶんおとなしいのだなぁ」と感じたものである。

 以上、ここで2時間近い動画を見てみたのだが、比較面で大いに役に立った。
 このシリーズはおそらく続きそうであり、次回は「人材」に絞って書いてみたいと思う。