生きること、学ぶこと
(問い)松本美奈の授業が目指すものとは?
帝京大学で松本美奈(当時、読売新聞)の授業を観る。
「(相手、対象に)なりきって(コミュニケートする)」という教養課程の授業である。ジャーナリストであるだけに、学びに「時間」の使い方を導入する。大体1~3分で区切り学生に活動させる。緊張感と集中力は自然と高まる。記事をコンセプトマップに描く予習を経て、チームワーク学習では話し手と聞き手の立場になりきってコミュニケーション力を磨く学習である。これができるようになるまでにはいくつもの要素をクリアーしていかなければならない。学生の成長が楽しみな授業である。
まさにオーセンティックラーニングであり、社会に通用するアクティブラーニングである。エキサイティングに学生は活動する。90分間、緊張と集中力を持続する、否、せざるを得ない。時間を1分、2分、4分、5分という単位で区切る。テンポがとてもよく、学生の集中力は高まる。締め切りに追われる新聞社の環境である。
学びのプロセスで重要なひとりで考える時空間を持ちつつ、グループ活動を多用する。そのグループ活動が秀逸である。グループ活動はメンバーの組合せによっては学習というより単なる雑談に陥ることが多々あるが、そういうことが生じない仕掛けをもっている。
松本が社会に通用する学びとして強調するのは、
①仮設を立てる
②それについて3つの問いを立てる
③自ら回答を考える
①−③のプロセスが機能すると課題についての自分の考えをまとめることができる。
問いは教師が立てるものという日本社会での学び方では社会に出て生きていけない、という強い信念がある。さらに、書くことは4つの力を必要とする。
①自分に質問する力
②考える力
③構成する力
④表現する力
この4つが社会に出て生きて行く力になると言う。
授業終了後に全員のポートフォリオにコメントをいれて、さらに総合アドバイスを映像で履修者に返すという離れ業、これが松本美奈の考える授業である。15回がつながり授業が回を重ねて進化していく仕組みです。
ICEモデルを進化させた広島県安芸高校の前校長の柞磨昭孝先生は言う。「「学習」には他者性 (otherness)が存在すると言う。”No man is an Island entire of itself;”という英国のJhon Danneの詩があります。他者、社会に貢献しているという意識が学びになければモチベーションは継続しないということでもあります。」