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環の準同型写像〈龍孫江の環論道具箱〉

前回は環の直積を定義し,直積集合$${ \mathbb{Z} \times \mathbb{Q} }$$には2通りの環構造(加法・乗法)が定まることを見ました.器となっている集合は同じですが,そこに定義されている演算は異なるものです.では,この「2通りの環」は "同じもの” なのか? というのが問題です.

https://www.youtube.com/watch?v=Q8UNXEf_qBY

これをきちんと解決するには「2通りの環が同じものであるとはどういうことか?」を定式化しなければなりません.特に,2つの環を比較する方法が必要です.そのために重要なのが準同型写像の概念です.

定義(環の準同型写像)

$${A, B}$$を環とする.写像$${ f \colon A \to B}$$が加法,乗法および乗法単位元を保つ,すなわち

  1. 任意の$${a,b \in A}$$に対し$${f(a+b) = f(a) + f(b)}$$

  2. 任意の$${a,b \in A}$$に対し$${f(ab) = f(a) f(b)}$$

  3. $${f(1_A) = 1_B}$$

をみたすとき,準同型写像という.

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706字

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