明星大提訴〜やはり来た!

明星大(東京都日野市)経営学部2年の学生が17日、新型コロナウイルス感染防止で対面授業がなくなったことによる提訴を見てやはり来たか〜と思った。というか、これが最初の訴訟であることに驚いている。

米国では、既に大手弁護士事務所Havens Bergman(消費者救済集団訴訟を得意分野とする事務所)によるオンライン授業に関するクラスアクション(集団訴訟)が起こっている*1 Havens BergmanのHPから、Complaint(申立)も確認できたので読んでみたが、Ivy League校(Brown UniversityやColumbia University)や有名私立大学(Boston UniversityやUniversity of Southern California)出身の学生もこの集団訴訟に加わっており、今後もHaven Bergmanが大々的に集団訴訟への参加を呼び掛けている為、この訴訟に加わる学生が今後も増加するのでは・・・と思った。米国のクラスアクションと日本の集団訴訟との違いは、原告団の立ち上げの有無である。米国の場合、被害者の立場におかれている消費者は訴訟に参加しない旨を意思表示しない限り、自動的に訴訟に加わることになる。日本で集団訴訟を起こす為には、被害者一人ひとりからの同意を取り付け、原告団を立ち上げる必要がある。今回のオンライン授業クラスアクションでは、2020年に大学に対して授業料を支払い、Covid-19によりオンライン授業を履修する事を余儀なくされた学生たち(訴訟対象となっている大学の)全てが被害者の立場に置かれている。

Breach of Contract Claim: 米国では、高等教育機関に対しての「教育の質」に関する訴訟では原告の主張を認めないことが多い。学生と大学の関係は、契約関係(Contractual Relationship)だと考える解釈も存在するが、この場合の契約とは具体的にパンフレット、大学ホームページ、その他の大学広告に記載されている内容のみに限定しているケースが多い。例えば、大学HPにはNursing Department(看護学部)が存在し、卒業後には国家試験受験資格を得ることが出来ると記載されていたにも関わらず、入学後に看護学部が廃止されその大学では受験資格を得ることが出来なくなったな場合などには契約違反だとの主張が認められる可能性が高い。しかし、私の知る限り米国の大学では授業をin-personで必ず実施する旨を記載している可能性は低く、多くの大学のHPでは”Subject to Change”項目があった様な気がする・・・(プログラム概要や授業科目、授業形式、担当教員などは、場合によっては変動する)Breach of Contract (契約違反)での主張は認められない可能性が高い気がする。

Educational Malpractice Claim: Educational Malpracticeとは、教育過失(医療過失訴訟の教育版)であるが原告の主張が認められることは非常に少ない。医療過失とは異なり、教育に関しては明確なスタンダードが存在せず過失の証明が困難であるからである。また原告側の主張を認めれば、今後多くの教育機関が膨大な訴訟に直面することになる。そもそもリモート授業に切り替えた教育機関側の判断が、過失だと認められる可能性は極めて低い。

キャンパス運営費用に関する主張:Covid-19の影響によりキャンパスが閉まったていた為、通常期より運営費用が発生していない(オンライン授業になっため通常期に比べて、光熱費やその他の関連費用が発生していないのに)にもかかわらず設備費が減額されていないのは問題である。大学側はオンライン授業に対する予想外の費用が発生した為、実際に設備費用が減額したわけではなくむしろ増加したと述べている。

Covid-19によるリモート授業への切り替えは、非常に難しい問題だと感じる。非常勤講師として大学で講座を担当することもあるが、リモート授業と対面授業を比較した場合どちらの授業方法にもメリットとデメリットがある。仮に緊急事態宣言期間中に対面授業を実施して、感染者を出せばフルボッコである。もう一方で、大学とは専門的な知識を提供するだけではなく学生同士や教員との触れ合いを楽しむ場所でもある。

親目線でいうと、共働きの我が家でみーちゃんがオンライン授業になった時には非常に大変だった。授業料や設備費もそこそこ高額なので、オンライン授業で満足したわけではない。しかし、オンライン授業から学んだことも多く子供自身が一人でノートパソコンを使って授業に必要なタスクをこなせたことは大きい。

教育を提供する側から言うと、オンライン授業を行うには通常授業の3倍程度の準備時間と20万以上の出費が発生した。また我が家では2LDKの賃貸マンションに住んでいたが、夫婦二人とも在宅勤務になり仕事部屋を作る必要性が出てきたので引っ越しもした。

オンライン授業クラスアクションは、原告の主張が認められる可能性は低いと思うが今後も裁判の進捗状況には興味がある・・・

参照サイト:https://www.hbsslaw.com/sites/default/files/case-downloads/tuition-brandeis/05-28-20-hagens-berman-tuition-covid-19-class-action-lawsuit-brandeis.pdf

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