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福耳の行方
ところで私は福耳で、しかも耳たぶが分厚い。
福耳は幸福を呼ぶ。
みたいな話を聞いて、ふーん福耳っていいなぁと思っていたけれど、実際、私自身がわりと弾力のある福耳で、それに気付いたのは大人になってからだった。
おしゃれに目覚めのは大学生の頃で、ピアスを開けるが怖い派のわたしは、イヤリング至上主義だった。
というのも、ピアスに関する白い糸の都市伝説を信じるピュアな子供時代を過ごしてしまったことが要因かもしれない。
結局今も変わらず、イヤリング派なのだけれど、耳に密着するタイプのイヤリングをつけると、イヤリングが耳たぶと一緒に前にぐりんと持ち上がってしまう。
おっ、どうしたどうした?
と思って位置を調整するけれど、やっぱり上がってしまう。
しかも右側の耳が特にそうなる。
耳たぶが厚いと、ピアス開けるのも大変よー、とか、ピアッサーが上手く刺さらなくて、にっちもさっちも行かなくなるよーなんて言われたものだけど、イヤリングとて大変だ。
垂れ下がるタイプでも少し上がるし、とにかく思った通りの、モデルさんがつけているような素敵な感じにならない。
でも耳に密着するタイプのイヤリングが好きなので、今日もイヤリングを頑張ってつけてる。
そんな私に幸せなど来るのか。
と、耳たぶを触りながら考える。
今日は近場に出かけるので、最小限の荷物を持って家を出た。
お気に入りのミッフィーちゃんのバッグと、財布とスマホ、そしてICカード。
腕時計を忘れたことに今気づいた。
でも、今日はお気に入りのバッグだし。
買ったばっかりのイヤリングだし。
そんなささやかな幸せを大事にしながら今日も、ホームに滑り込んでくる電車を待とうと思う。
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