ある動画を見ていた時の怖い話

　あなたはこんな話を聴いたことがあるだろうか？
「怪談話とかの配信をしているときに、霊は画面の前にいる」
　これは、とある番組にてユーチューバー業界の怪談話がテーマの時、スタジオにいた配信者が語った言葉である。
　昔から、百物語など怪談をしているとやってきてしまうという話は存在する。彼らも生者が何を話しているのか気になるのかもしれない。
　え？　そんなの嘘臭い、幽霊とか実話怪談を話しているときの怪異は嘘っぱちだって？
　そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
　今から語るお話は、そうじゃなかったのかもしれない方のお話。因果関係があるのかないのか、誰もわからないがちょっぴり鳥肌が立ってしまうお話だ。
　それは、今から数年前の夏のことだった。

　当時、それなりに登録者のいるユーチューバー、仮名Kの動画をよく見ていた。Kは確かにいろいろあったが、時折見える人柄の良さや天性の才能というべきであろう姿がかっこよくて好きだった。
　Kは夏になるとSNSのフォロワーから怖い話(いろんな意味で)を募集し、その中からピックアップして話すという企画を毎年やっていた。怪談的な怖さから、人が怖い話まで様々そろっていた。私は上がってすぐにこの動画を見た。
　それぞれの話に突っ込みを入れながら進めていき、最後の話になった。K曰く「ぶっちぎりで怖い」と先に宣言しながら読み始めた。
　内容は本当に怖くてうろ覚えだが、何となくこんな内容だった気がする。
　投稿者はある日、夜遅い時間に友達と家で遊んでいた。飲み物が足りなくなり、コンビニに行ったその帰りに交差点か何かで白い影を見つけたという。白くて、うつむいているような感じだった。
　酔っていたこともあり、友人とふざけてなぜか写真に撮ったそうだ。
家に帰りつくと、インターホンが鳴りマンションのエントランスにその人影がいた。慌てて確認しに行くと、有名な自殺スポットの写真があったという。
　その後、あまりの気持ち悪さに写真を消そうとしたが、初期化しても消えなかったという話だった。
とまあ、ありがちではあるがとても怖い話だった。とても怖かったが取っても不気味だった。気持ち悪いなあと思いながら、動画を閉じ、学校の課題を取り組み始めた。
　30分後くらいだろうか？　母が自分の部屋に用事があったらしく、部屋に来た。
　母もKの動画を見たらしく、この話題で盛り上がった。
　ふと、母が思い出したように「最後の話でモザイクが飛んでいた」と言い出した。私は、上がってすぐ見ていたが、そんなものはなかったと告げると、母はあったという。どうせ、電波障害だろうと思い、私のスマホでその動画を母と一緒に見直した。
　モザイクは、確かに飛んでいた。それも、上がってすぐではなく数分後から確認されているものらしかった。コメント欄はモザイクの指摘でいっぱいになっていた。その中にはK自身のコメントもあった。彼が言うには元の動画にモザイクなどなかったという。
「あれ？モザイク移動してない？」
　母がそういった。どうやら、母が見た時とはモザイクの位置が違ったらしい。母が見た時はモザイクはもう少し小さくて画面の横の方だったという。
　しかし、今見た動画ではモザイクはKの顔の真横にあった。
　母と私は気味が悪くなり、入念に履歴を消した。
　
　それから数か月後。あの動画のモザイクが気になり、再び動画を開いた。
　問題の個所に来るとかならずモザイクがあった。ただ、不思議なことにそのモザイクはKの顔に半分くらいかかるほど大きくなっていた。
　きっとこれは、動画の破損だ。もしくはバグに違いない。そう思って再び履歴を入念に消した。
　その後、割とすぐにKはある事情活動休止に追い込まれた。

　無関係だとは思いたいが、あれはいったい……。