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優雅な読書が最高の復讐である

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2021年12月の記事一覧

優雅な読書が最高の復讐である/さよならイヴ・バビッツ

優雅な読書が最高の復讐である/さよならイヴ・バビッツ

12月17日、作家のイヴ・バビッツがハンチントン病の合併症によって78歳で亡くなった。
編集長から許可をもらって、CDジャーナルの2020年秋号に私が書いた彼女についての記事をここに再録する。

どこにも出かけられなかった今年の春はイヴ・バビッツの「Eve’s Hollywood(イヴのハリウッド)」(1974)を読んで過ごし、やはりどこにも行けなかった夏はイヴ・バビッツの「I used to b

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優雅な読書が最高の復讐である/A Sunday in Ville-d’Avray

優雅な読書が最高の復讐である/A Sunday in Ville-d’Avray

11月。

ソフトの立ち上がりが悪く、その間にちょっとだけ目を通そうかと思った小説を一気読みしてしまう。タイトルは「A Sunday in Ville-d’Avray」。ドミニク・バルべリスというフランス女性作家の英訳本である。

 今年、アルフレッド・ヘイズの「In Love」という小説に夢中になり、感想を書いている人はいないかとサーチしていて見つけたブログで、この小説を見つけた。アンニュイな日

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優雅な読書が最高の復讐である/レイチェル・カスク

優雅な読書が最高の復讐である/レイチェル・カスク

11月。

 朝、レイチェル・カスクのJusticeという短編を読んだ。

 この作品におけるJusticeという言葉を訳するのは難しい。正義や道理、というのとも、報いというのとも違い、その全部の意味であるかのようでもある。

 レイチェル・カスクの小説の特徴である、長い独白が占める割合の大きな小説だ。話している人間はカスク本人らしき作家にインタビューをしに来た女性の記者。カスクは何年か前にもこ

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