ソラノムコウ

適当に書いてます

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最近の記事

死の狭間で

『死の狭間で』    人間の平均寿命は約80年。江戸時代の人は40代で死んだというからだいぶ長寿になったものだ。 しかし、生まれてきた人全てがその天寿を全うするとは限らない。 病気、交通事故、自然災害と危険要因は多い。 もし、80歳まで生きることができたらそれはきっと運がいい事なのだろう。 俺は今26年間という短い生涯を終えようとしていた。 なぜならば、まさに今乗っている飛行機が墜落しようとしているのだ。  運悪く交通事故に遭遇して、

    • 胃腸が弱い私の話

       私は胃腸が弱い。とにかく弱い。大食いなくせに弱い。  ちびまる子ちゃんの登場人物に照らし合わせれば永沢の陰湿さと藤木の気の弱さ、小杉の食い意地を兼ね揃えた私が山根の胃腸の弱さを更に強調したようなものだ。  なので私はどこに遊びに行こうとも旅に出ようともトイレの位置は事前にリサーチし把握している。  遊園地などのレジャー施設などは混雑具合までも予想しているのだ。  セイロガン糖衣Aは常にポケットの中だ。  だが準備万端にしておいても不測の事態として空前絶後のビッグウ

      • 走らなかったメロス

        メロスは激おこした。 必ず無知蒙昧の王を殺害しなきゃ!と奮起した。メロスは全く政治がわからぬ。まるでチンプンカンプンだ。 メロスはただの村人だ。笛を吹き羊と遊んでばっかりの無職のろくでなしだが悪に関しては敏感な面倒くさいやつだ。 村を飛び出し30キロ離れた市にタクシーで乗り付けた。 メロスには父も母もなく恋人もいない。しかも童貞だ。妹が1人いるが器量の悪さから結婚できずにいた。 そんな妹を嫁に貰ってくれる物好きがいたもんだからメロスは歓喜した。 「こ、これで念願の

        • 人間ドックで死にそうになった話

          私はその日は人間ドックだった。 普段からジャンクフードばかり食べている私にとってはまさに恐怖そのもの。 再検査となればまたもや余計な費用がかかるというもの。 元旦から毎日10km走りまくっていた。まさに焼き付け刃もいい所で突然体が変化するわけでもない。 それでもやらないよりはマシだろうとひたすら走っていたのだ。 そして満を持して迎えた人間ドック。 ドラゴンボールで言えば100倍重力で修行した孫悟空のような気持ちだった。 運命の体重計に上がる。 86kg→74k

          迷信

           偏屈で有名な爺さんが亡くなった事は小さな田舎町ではセンセーショナルに報道された。  亡くなった状態が異常だったからだ。  頭部が亡くなっていたのだ。それも鋭利な刃物で切られたという訳ではなく千切れた感じだったらしい。  熊の仕業かと推察する者もいたが、偏屈で町で会う人に言いがかりをつけては『殺してやる!』と叫んでいたのだ。誰かに殺されたとしても不思議ではない。  当然町の人は疎ましく思い誰も爺さんの家に寄り付く人はいなかった。身寄りもなく、孤独に暮らしていた爺さんが

          クソジジイの話

           今にしてみれば奇妙な光景だった。  子供の頃に体験した話である。  通学路の途中にトタンで覆われた建物があった。3mほど上の方に小窓があるのみで正面の扉は施錠され開いてるのを見たことがなかった。  建物の高さから2階建てだろうが人が出入りしているのを見たことがない。  その建物の前を通る時はなぜか怖くて早歩きして通り過ぎていた。  そんなある日、道路に大便が落ちていた。大きさから犬のものだと推測されたがアスファルトに直接落とされていたために不自然な感じだった。

          クソジジイの話

          死なない男

           ゾンビと来れば死体が歩き人々を襲うモンスターとして知られている。  倒す方法としては頭を破壊すればいいというのが共通の方法である。 「おはようございます」  朝、出社してきた男に誰もが絶句した。 「お、おい…大丈夫なのか?」  その男に声をかけるがいつものように返事が返ってきた。 「すいません、昨日ちょっと飲み会の後ひき逃げに遭いまして…」  その男の体はズタボロになっており、腕が奇妙な方向に折れ曲がっていた。  その男の名は万年平社員の落合だ。  落合は

          箱の中身

           実家の蔵には先祖代々伝わる古い箱がある。  それは厳重に鉄の鎖で封印されており、ガラスケースの中に収められ触れることは出来なかった。箱の表面には何らかの彫刻が施されており高級なものであったと想像できた。  子供の頃、父に箱の中身は何か?と聞いたことがある。  父は口篭りながらも 『箱の中身は何もないんだ、箱そのものに価値があるからね』と言った。  子供の俺はそれで興味が薄れてしまい箱の存在すら忘れていた。  あれから20数年の時が流れ息子を連れて帰省した時、父の

          バレンタインの悲劇

          「バレンタインなんてお菓子業界の陰謀である!」 私はそう言いきった。今まで女子にモテた試しがない。 ちびまる子ちゃんの登場人物で言えば永沢くんか藤木くんのようなポジションであった私はこれほど嫌らしい小学生は見当たらないであろうくらいにひねくれていた。 だが当日となると万が一を期待して下駄箱を見るが当然チョコレートの箱なんてありゃしない。それどころかあるはずの上履きすらなかった。 散々下駄箱を探しようやく見つけ教室へ向かうといつもと空気が違うのを感じた。 その違和感は

          バレンタインの悲劇

          どんと祭の唄

          宮城県には『どんと祭』という神事がある。 これは正月にやってきた年神様を御神火を焚いてお見送りをするためである。正月飾りを神社に持ち寄りお焚き上げし一年の無病息災を願うというものだ。 小学生の頃に子供会というものがあり、クリスマスの行事に参加していた。 集会所の傍らで大人達がどんと祭について話し合っていた。 「なんだがどんと祭盛り上げる方法ねぇが?」と地区長が神妙な面持ちで訊く。皆は柿ピーをボリボリ食べながら「そうねぇ…」と呟いた。 どんと祭は夕方に火を点けるのだが

          どんと祭の唄

          超ド底辺で働く私

          私は塗装職人である。 ガテン系でありながら文章を書きイラストを描くことを楽しみにしている変わり者だ。 職人の多くはヘビースモーカーで大酒飲みでギャンブラーだ。休み明けの話題となればパチンコで勝った負けたの話で持ちきりだ。 気が付けばそういう業界に身を置いているわけで決して目指して入ってきたわけではない。 体育会系の縦社会で性格に一癖も二癖もある職人の世界は一般社会からは隔絶された業界なのである。 今にして思えば学生時代に勉強をしておれば、もっといい会社に入れたものを

          超ド底辺で働く私

          気付かれた

          「こんにちはーっ!」 「こんにちは。」  山にハイキングに来ると先輩は陽気に挨拶をする。そして、こう言った。 「山ですれ違う人には元気に挨拶をしとくんだ。そうする事で印象強くして万が一遭難した時に発見されやすいんだ。」  なるほど一理あるなと思ったが最初から遭難する事を前提にしてるのかと思うと多少戸惑う所はあった。しかし、装備が十分であっても相手は自然だからどんなプロでも些細な事で遭難する事もある。  こんな趣味で低い山に登るにも気を引き締めなければならなかった。

          トンガ海底火山噴火によって予定が狂った私の1日

          1月16日未明に突然スマホが鳴り響いた。 眠り眼をこすり画面を凝視すると『トンガ大規模海底火山噴火による津波警報』とある。 トンガ??どこだっけ? 私の家は海から離れたチベットにあるために特に気にすることなく眠りについた。 翌朝。 それはすでに地球規模で危機的状況に発展していた。なんとも凄まじい噴火だ。 テレビに映し出された日本地図に黄色や赤のラインが添ってる画面はあの東日本大震災の忌々しい記憶を甦らせる。 食い入るようにテレビを見つめていると親父殿がなにやら荷

          トンガ海底火山噴火によって予定が狂った私の1日

          人生屁みたいなもの

          恥の多い生涯を送ってきた。 人生は敷かれたレールの上を走ってるわけではない。 時として想定していない事象が起き絶望や失望、挫折を経験し黒歴史を刻んでいく。 それを時折思い出しては奇声を発しながら戸棚に頭を打ち付け落ち着かせるものだ。 その日、私は火曜日ということでイオンへ買い物に出かけていた。イオンの火曜市はお得だが夕方ともなるとやたら殺伐とした雰囲気だ。普段は優しいレジのおばちゃんも今日ばかりは必殺!仕事人の中村主水のように鋭い眼光を放っている。ここまでに何万点もの

          人生屁みたいなもの

          その時!歴史が動かなかった職人

          花粉が落ち着き心地よい風に吹かれる初夏になろうかという季節。世間はGW(ゴールデンウィークというらしい…)で浮かれ賑わっていた。 連休何か予定ある?とラーメン屋で飯を食ってるとあちらこちらからよく聞こえてくるが我々職人には祝日というものはない。極端な話で言えば365日平日である。 「家族とディズニーランドに行くよ」なんていかにも良いパパをしてそうな爽やかな若い兄さんの言葉にうちひしがれチャーハンを吐き出しそうになる。 その後、軽バンで缶コーヒーを飲みながら一服してると助

          その時!歴史が動かなかった職人

          我慢したけど結局駄目だった話

          「このままだと5年後には大変なことになるよ」 ぶ厚いレンズの向こうのつぶらな瞳が私を見つけてこう言った。抑揚の無い無機質な口調でありながら実に深刻な言葉である。 健康であるというとは当たり前過ぎてありがたみが感じられないものだ。どこも痛くも痒くもないにも関わらず私は病院の椅子に座り、目の前には齢80歳になろうかと思われる先生がふかふかの椅子に鎮座していた。 「え?死ぬんですか?」と問うと先生は「死ぬかもしれないね」と続けた。 普通に考えれば先生の方が先に死にそうなのだ

          我慢したけど結局駄目だった話