城定秀夫「いっツー THE MOVIE」
城定秀夫「いっツー THE MOVIE」 原作は岡田和人のハイスクール・ラブコメ漫画「いっツー」
主人公(中山達也)が壇蜜そっくりの美少女先輩(副島美咲)に憧れ、映画部活でゾンビ映画に挑戦!ここにゾンビ大好き眼鏡オタク少女(小明)も入部。無事にゾンビ映画が完成するまでを描いた、ほのぼの青春映画の良作。
原作漫画なんかどうでもいいじゃない!俺はゾンビ映画が大好きなんだ!トロマ映画ラブ!でも、ウッディアレンはもっとLOVE!「ボクはゾンビに恋してる」青春映画に目覚めた映研部長、もう30代も後半の彼が主役w
ヒロインの小蜜こと副島美咲は、壇蜜にルックスが似ていることから、壇蜜本人に「小蜜」と命名された、個性的な顔立ちの美少女で、本作出演時点で19歳。偶然の振りで主人公にパンチラを繰り返し「オナニーのネタ、撮ってんじゃねーだろーなw」と怒る、危ないツンデレ感で世の男性の劣情を刺激。でも、壇蜜に似せた髪型で本来の良さが消されている気も。
小蜜と対照的なキャラで後半から飛び込んで来る、小暗、いや、小明。自身、複雑な家庭に育ったリアルに「ゾンビオタク」であり、素顔は美少女なのにわざわざ眼鏡にイケてない髪型、城定監督のドンピシャタイプと思われる熱狂的なゾンビ映画マニアにしてクラス内カーストは最下位、イケてる女子に「このメガネブス!」と罵られる、オタク男子憧れのアイドルである。
原作漫画は、中学三年生の時に、学校見学で美少女のパンチラを携帯に撮ってしまった少年が、そのパンチラ画像を励みに懸命に受験勉強し合格。いざ入学してみたらその美少女は映画部の先輩で、部活でいろいろとエロいことが起きる、という話だが、私は漫画は未読(笑)
で、実写版がこれなんですが、前後半合わせて150分もある大作です(笑)前半で恐らく原作漫画の部分は消化して、恐らく後半は城定監督の趣味で勝手に撮ったと想像。圧倒的に後半の方が面白い、私にとってだが(笑)映画愛、更に言えばゾンビ映画愛に溢れた映画だ。
映画部のゾンビ映画マニアたちが、「ゾンビ映画大図鑑」を手に、トロマ映画のようなB級、C級ゾンビ映画のタイトルや内容、出演者をクイズに出しあってキャッキャとはしゃぐ。友松直之「レイプゾンビ」に登場した、女性に一切無害な「アキバ帝国臣民」とはこういう人たちなのだ、と実写化で確認する(笑)
タイトルの「いっツー」とは、片想いのこと。前半は小蜜に対する中山君の片想いのみだが、後半は牛乳瓶眼鏡におかっぱ頭の変態少女・小暗、いや、小明をぶっこんで、話が一気に面白くなる。小明の中山君への片想いがゾンビ映画撮影を動かし、小蜜の心も動かす。
映画内ゾンビ映画が三本、登場する。「学園地獄 SCHOOL OF THE DEAD」「LOVE FOR ZOMBI~ボクはゾンビに恋してる~」「青春 OF THE DEAD」で、二本目が本作のキモ。映画部が渾身で演出するハイライトシーン、男子高校生たちがゾンビ化して女子高生たちに襲い掛かる。
本作はほのぼのレイプゾンビ、というか、友松監督が「レイプゾンビ」撮ってるタイミングだから、まんま「レイプゾンビ」オマージュなのではないか(←「レイプゾンビ」にオマージュなんてあるのかよw)見比べると友松監督の怨念と城定監督のほのぼの感、個性が面白いw
モチーフは「ウディ・アレンの霧と影」に登場する台詞「最も長続きする愛とは、片想いである」だそうだが、この映画の客層に全く訴えかけないだろwむしろ、ピンク映画とかB級ホラー映画とか、低予算で斬新でお手軽な映画を観続けて来た映画バカの心に響く作品w
そもそも、小蜜のような美少女がなぜ場違いな映研に入部しているのか?それは共働きで忙しい両親に代わって、ゾンビ映画を一緒に見ながら留守番をしてくれた近所の優しいお兄ちゃんという、よくよく考えたら、いつ性犯罪に巻き込まれてもおかしくない少女の頃の思い出w
映研のメンバーは、30代後半のw部長兼監督と、アフロの部員、眼鏡の部員、それに小蜜の4人で、小蜜に誘惑されチンコをモロ出しで校舎を走ってしまった中山君はマル秘映像をネタに脅迫され映研に入部する。そして異常な怖がりの中山君にゾンビ映画の宿題が迫り来る!
前半は主人公の中山君に同化して、自分が高校生で童貞で美少女に片想いしていた頃を思い出してドキドキするだけで終わってしまう。ここで城定監督は考えたのだ「このままではいけない!」ゾンビ映画は凄くヘンテコで、中山君に片想いするヘンテコな女子高生も必要だ。
城定監督の強い思いは、プログラムピクチャーだったはずの本作を大幅にスピンアウトさせていく。とにかく、ゾンビ映画オタでキモイ眼鏡女子の小明が、通うのが辛いだけの学校で「ゾンビ映画好き」という同士を見つけ、その一員である中山君に心惹かれていくという過程w
ここに城定監督の化身と言うべき、映研部長がどんどん存在感を増してくる。ロケハンで「低予算でも面白い映画は撮れる」いざ撮り始めると予算が足りない「お前ら、自分が撮りたいように撮れ、金は俺が何とかする」そして、部長は道路工事現場のバイトで金を稼ぐ。
そもそも、30代後半でPFFに何度も落選してる奴が何で高校生なんだよwというシュールな設定は置いといて、彼の低予算映画を懸命に撮りたいという熱意は周囲のスタッフたち、いや、部活の仲間の心を動かし「ボクはゾンビに恋してる」学校内エキストラ募集に奔走する。
映研部長が書いた渾身の脚本、それは「某国の生物兵器である女子高生が学校内で彼女に片想いした男子を全員ゾンビ化し、ゾンビ男子は女子の身体に噛みついてゾンビウィルスをまき散らす」このハイライトシーンに、男子ゾンビが女子に襲い掛かるエキストラが必要なのだ。
映研部長は30代後半にもなってまだ高校生なので(笑)道路工事現場でもバカにされる。そしていざ始めた交通誘導、両側通行なのに片側を止めるヘボっぷりで、両方向から来た車両の怖いアンちゃんに凄まれる。そのうちの一人、久保和明が「いっツーじゃねーじゃんか!」
でも、この久保和明の一言で城定監督、いや、映研部長はひらめくのだ。そうだ!非協力的な全校生徒の、片想い相手を調べ上げ、そいつがゾンビ映画のエキストラするって言って回れば、みんな協力してくれるんじゃねーか?そう簡単に行かないはずだが、これは映画だw
ここでエキストラ集めに「いっツー」ですよ(笑)高校生の最大の関心事。片想いする同士の生徒を集めて襲わせればいいじゃん!これで問題は万事解決。試写会では片想いだった男女がみなカップルになり、小明と中山君も変態同士、無事にカップルになった、と思われた。
この映画が一番面白いのは、実はラストシーン(笑)もう完全に主題からスピンアウトしちゃって、観客の大半は怒って帰っちゃった後かもしれないけどw小蜜が卒業証書を手に「私、やっぱり自分の気持ちに素直になるの」と中山君に抱き着くが彼は勃起してしまい「ハイ、カット」
中山君が勃起した巨根を必死で鎮め、アフロが部長に「中山君のおさまり待ちでーす」「桜の花びら、あとワンカット分しかないんだから」まさに卒業の季節、台本の表紙には「青春 OF THE DEAD」30代後半になってゾンビ映画オタをやっと卒業した映研部長に泣ける(笑)
ムード歌謡歌手の鼠先輩が、生活指導の教師役で登場。昭和歌謡研究部の顧問だが部員はいない(←高校生だぜw)体育教師じゃなくて英語教師w授業中「ポッポ」ネタを何度も入れるが生徒は笑わない。むしろヘタレ男子コンビの「DMMサンプル動画だけでオナニー」が笑えるw
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