サトウトシキ「ネオン蝶 第二幕」

サトウトシキ「ネオン蝶 第二幕」　原作は倉科遼の人気漫画。　脚本は中野太。

桜子（小松彩夏）は、叔母の紹介で憧れの銀座高級クラブ「手毬」で働き始め、老舗呉服屋の若旦那（高知東生）の紹介で不動産王の森田会長（森次晃嗣）の愛人になるが、彼は死亡。アッと驚くことに、伯母と桜子は親子だった！な前日譚。

映画を観ながら「いつまで前日譚なんだよ！」とツッコミまくってたら、もう半分まで終わっちゃった。サトウ監督からすれば「城定君、後はヨロシク！」ってことか（笑）エピソードの紹介ばかりがダラダラ続き、いつまでたっても物語が起動しない、真に不可思議な作品ｗ

どうしてこうなっちゃうんだろう？という最大の要因は、そもそも小松彩夏ちゃんにこの役をさせたの、ミスキャストじゃないか？疑惑。彩夏ちゃんは美人で、眉間に皺を寄せた表情とか工藤静香を彷彿とさせるが、とてもじゃないが銀座のホステスか務まるキャラじゃないｗ

第一幕目を観てる間は「ここは一旦、ハードルを下げるところまで下げておく作戦だね！」と好意的に観ていたものの、さすがに第二幕までこの状況が続くと「おいおいｗ」と文句の一つも言いたくなる所、彩夏ちゃんってヒロインだよね。何だか可哀そうになってきた。

本作の実質的なヒロインは、彩夏ちゃんが演じる桜子に張り合う、妖艶さと軽妙なお喋りで男たちを引き付けるナンバーワンホステスの太田千晶ちゃん！テレビ東京の「ギルガメッシュLIGHT」にレギュラー出演していたので覚えてる。彼女にはキラキラした圧倒的な華がある。

桜子が池袋の場末のスナック佳代から、銀座の高級クラブ手毬に進出したとき、手毬の節子ママ（あいはら友子）はホステスに必要な武器として、この三つのうちどれかを兼ね備えていることだ、と教える「喋ること」「飲むこと」「抱かれること」桜子にはどれも無い。

もはやここまでくると、サトウ監督の演出で、小松彩夏ちゃんが無いない尽くしにされてしまったのか、彼女自身が元々無いない尽くしなのかわからないが、テーブルマナーや敬語が滅茶苦茶だったりするのは、演出と言うより、彼女がホントに接客商売に向いてないキャラに見える。

ということで（←ということで、じゃねーよｗ）小松彩夏ちゃんは、例えば白血病で余命いくばくもない美少女とか、夜の学校のトイレから出てくる美女の幽霊とか、そんな役ならドはまりしたのかも知れないが、桜子ちゃん役は明らかにミスキャストで「どうすんべ」な感じw

桜子ちゃんが物語に行き詰まってしまう、もう絶対絶命感を救うのが、太田千晶ちゃん。第一幕で沙倉まなちゃんが魅力的などんくさい女の子を演じたのと対照的に千晶ちゃんは華やかなネオン蝶ぶりをこれでもかと見せつけ「ヒロイン、太田千晶ちゃんで良かったんじゃ？」と思ったのはナイショｗ

ピンク映画ファンとして嬉しいのは客の顔ぶれ。第一幕は吉田祐健が沙倉まなちゃんに中出しするどスケベ、本多菊次朗が小松彩夏ちゃんとチークダンスしながらケツをサワサワするどスケベを演じるんですが、第二幕でもレジェンドが引き続き登場！伊藤猛と川瀬陽太です。

伊藤猛は、銀座の高級クラブ手毬の支配人役で、これはかなり板に付いている。もう一人、イケイケ太田千晶ちゃんが独立して開業したキャバクラまがいの銀座スナックで、ホステスを口説いてお持ち帰りするどスケベが川瀬陽太（笑）ほとんど唯一の濡れ場がここなのだｗ

物語は、池袋から銀座に巣立ったはずの桜子が、また借りてきた猫みたいに振り出しに戻り、イケイケナンバーワンの加奈（太田千晶）に圧倒されつつも、常連の高畠（高知東生）に紹介された不動産王の森田会長（森次晃嗣）の愛人になる。この辺で物語はいったん安定。

桜子が「私に夜のお供をさせてください」と迫り、高知東生が「セックスするってことか？俺はそういう飲み方は嫌いだ」ときっぱり断る場面はカッコいい。そして、森田会長を紹介。これが太い客で、店を飛び出していった跳ねっ返りの加奈との売り上げ争に勝つという流れ。

森次晃嗣が別宅に桜子を愛人で囲うという設定、爺さんと孫くらいに歳が離れていて見ていて辛くなる。観客を幸せな気分にする画ではない。どこまでも小松彩夏は不遇な気がするｗまあ、彩夏ちゃんの演技自体、魚を焼いて焦がしちゃうような、これは地なの？という感じｗ

ここで、もうネタバレしちまいますがｗ森田会長がなぜ桜子を愛人にしたのか？それは、叔母の佳代も昔、森田の愛人だった、更に佳代は桜子の母親だった（←母娘丼かよｗ）これを桜子は森田会長からも節子ママからも聞き「ああ、憧れの叔母さんが実の母親だったなんて！」

おいおい！ちょっと待てよｗするってーと、母親の佳代は、桜子が実の娘だと知っていて、第一幕でスポンサーの諏訪太朗からの借金のカタに、娘の桜子の身体を差しだして処女を奪わせたことになるぜ！どうしよう、第三幕を観る気がしないよ、これ、修羅の世界だ・・・

ということで（←ということで、じゃねーよｗ）第一幕、第二幕でハードルが地面すれすれまで下がってしまった物語。ここで退場してしまうサトウ監督には「これで良いんですか？」と思わず叫びたくなるものの４話完結が前提の映画、後半で城定さんがどう巻き返すかだｗ

平成ノブシコブシの吉村崇は、銀座の夜の街を一人とぼとぼ帰る桜子に「君、銀座のホステスになったんだ！夢が叶ったんだね！」と話しかけるサラリーマン。第一幕では物語には若干の関与していたが、もう第二幕ではエキストラばりに関与しないｗ第三幕は出番あるのか？