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「ランスロットとエレイン」第2回 ランスロット卿の負傷と、彼を探しにきたガウェイン卿がエレインに求愛するお話

こんにちは。
ゴールデンウィークも終盤ですね。GW中もお仕事だった方も多いと思いますが、週明けからお仕事、という方も多いのではないでしょうか。私は月曜日から出勤となります。お休み明けの仕事は少し気が重いですが、ゆるゆると始めていきたいと思います。

少し前までウグイスが鳴いていましたが、最近鳴き声が聞こえないなと思っていたら、今朝は「ホーホケキョ」と美しい声で起こしにきてくれました。小鳥は早起きですね。もう少ししたらホトトギスがやってきます。ホトトギスは夜もずっと鳴いているので、深夜の読書のよいお供になってくれます。

※ 画像はダニエル・ハンティントンの「森でお勉強」(1861年)です。パブリック・ドメインからお借りしました。

「ランスロットとエレイン」第2回目です。エレインの恋はどうなるのでしょうか。

「ランスロットとエレイン」第2回

ランスロットはラヴェインを従者として伴いキャメロットへと馬を進め、一人の隠者が住んでいる森へとやってきました。その夜彼らは隠者の庵に泊まり、翌朝馬を進めてキャメロットへと到着しました。王はどの騎士が賞品のダイヤモンドを得るにふさわしいかの判定に備えて高い玉座に座しておられました。ラヴェインは、玉座の豪華さや王がお召しになっている黄金をふんだんに用いた立派な衣服や王冠の宝石には特に何も思いませんでしたが、偉大なる王のお顔の高貴さと美しさだけが彼の心を占め、美しい妹エレインも王のお顔を拝することができればよかったのに、と思いました。
 
その後、大勢の勇敢な騎士達が闘いを始めました。皆こぞってなぜランスロット卿がその場にいないのか不思議がりました。彼らがもっと不思議に思ったのはあの見知らぬ騎士のことでした。その騎士は無地の盾を持ち、真珠のついた赤い袖を兜につけており、とても勇敢に闘って一人また一人と他の騎士を倒しました。そこで王は「確かにあの者はランスロット卿その人である」と言ったものの、その騎士の兜につけられている貴婦人の贈り物を見ると、「いや、あれはランスロット卿ではあり得ない」と言いなおしました。ついに試合が終ると、王は真珠で縁取られた赤い袖を身に付けたあの見知らぬ騎士が賞品を勝ち取った、と宣言し、ダイヤモンドを受取りに来るよう彼をお召しになりました。
 
しかし、誰もやってきませんでしたし、赤い袖をつけたあの騎士はどこにも見当たりませんでした。と言いますのも、ランスロット卿は最終戦で負傷を負ったので、試合が終るとラヴェインに付いてくるよう呼び掛け、急ぎ馬を駆って試合場から遠ざかったからです。二人が森の中へと馬で乗り入れるとすぐ、ランスロット卿は馬から落ちてしまいました。「槍の先が脇腹に残っているのだ。引き抜いてくれないか、ラヴェイン」と言って彼はうめきました。ラヴェインは最初、騎士に与える苦痛を考えると怖かったし、傷からの出血で騎士が失血死するのではないかと恐れました。しかしランスロット卿は非常に苦しんでいましたので、ついにラヴェインは勇気を出し、ランスロットの脇腹から槍の先を引き抜きました。そして彼は苦心惨憺しながら騎士を助けて馬に乗せ、ゆっくりと、骨折りながらあの隠者の庵に向けて馬を進めました。彼らがついにそこにたどり着きますと、隠者が出てきて彼の召使いを2人呼び、騎士を彼の独居室へと運ばせました。彼らは騎士の武装を解き、ベッドに寝かせました。それから隠者は騎士の傷の手当てをし、ワインを与えて飲ませました。
 
あの見知らぬ騎士が姿を消したことがわかり、彼が負傷していたことを耳にしますと、アーサー王は「あれほどの勇敢な勝利者には賞品が届けられるべきである。あの者は疲労して傷も負っているから、遠くへは馬を進めていない筈だ」と言いました。そしてガウェイン卿の方を向いてダイヤモンドを渡し、「あの騎士を探しに参れ。そして彼があれほど天晴れに勝ち得た賞品を渡して参れ」と命じました。しかし、ガウェイン卿は王の命令に従いたくはありませんでした。彼は試合に引き続いて催される宴席とお楽しみから離れたくなかったのでした。とはいえ、アーサーの騎士達は皆、服従の誓いを立てておりましたから、ガウェインは行かないと恥ずかしいと思い、不機嫌そうに、真の騎士にあるまじき様子で、宴席を後にしたのでした。

ガウェイン卿は森の中を駒を進め、あの負傷した騎士が横たわっている庵を通り過ぎました。彼は残念な思いで頭が一杯でしたので、探索はおざなりで、ランスロット卿が見つけた隠れ家を見逃したのです。

馬を進めるうちに彼は、アストラトへとやってきました。エレインと父上、そして兄のトール卿は騎士を見つけると、中へ入って試合はどうなったか、誰が賞品を勝ち取ったかを教えてください、と彼に呼びかけました。そこでガウェイン卿は、白い真珠で縁取られた赤い袖をつけた騎士が賞品を得たが、負傷したため、賞品を受取りに名乗り出ずに馬を駆って去ってしまったことを話しました。また彼は、その見知らぬ騎士を見つけ出してダイヤモンドを渡すよう、王が自分を遣わした次第についても語りました。

エレインがとても美しかったので、それに王の命令を果たすことにさほど気乗りもしませんでしたので、ガウェイン卿はそこで長居し、「アストラトの百合の乙女」と一緒に古い城の庭を歩き回ったりして過ごしました。彼はエレインに貴公子や貴婦人の雅びな物語を語り、彼女の愛を勝ち得ようとしました。しかし、彼女は自分が盾を預かっているあの騎士の他には誰にも心惹かれることはありませんでした。

ある日のこと、エレインはのらくら者のガウェイン卿に我慢がならなくなりましたので、見知らぬ騎士が彼女のもとに残していったあの盾をお目にかけましょう、と言いました。「もしあなた様が盾に彫り込まれている紋章をご存じでしたら、お探しの騎士様のお名前がおわかりになりますから、その方を早く見つけ出せるのではないでしょうか」と彼女は言いました。
 
その盾を見るとガウェイン卿は叫びました。「それはランスロット卿の、アーサー王の宮廷随一の高潔な騎士の盾です。」
「アーサー王の宮廷随一の高潔な騎士様。」エレインは愛おしそうに盾に触れ、呟きました。
「ランスロット卿を愛しているのですね。あなたなら彼を探し出せるでしょう。」とガウェイン卿は言いました。「このダイヤモンドをあなたにお渡ししますから、あなたが王のご命令を果たして下さい。」

そしてガウェイン卿は麗しのエレインの手にくちづけすると、彼女にダイヤモンドを預けて、馬に乗り、アストラトを立ち去りました。宮廷に到着すると彼は貴族や貴婦人たちにアストラトの美しい乙女のことや彼女がランスロット卿を愛していることを語りました。「彼は彼女の贈り物を身に付け、彼女は彼の盾を守っているのです。」と彼は言いました。しかし、ガウェイン卿があの見知らぬ騎士を見つけ出せず、ダイヤモンドをアストラトの麗しの乙女に預けて帰還したことを耳にすると、王は不機嫌になりました。「そなたは真の騎士として私のために務めなかったのだな」と彼は重々しく言いました。ガウェイン卿は黙したままでした。彼は自分がアストラトでのらくらしていたことを思い出したのでした。
 
  
今回はここまでです。
お読み下さりありがとうございました。
次回をどうぞお楽しみに。

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