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『7人の聖勇士の物語』第11章(2) 聖ジョージが仲間の騎士たちとともに愛するサブラ王女を救出するお話。

こんにちは。
いつもお読みくださりありがとうございます。

知人のお母様のお宅が断捨離をなさるとのこと。
ここ数年、病気や怪我で入退院を繰り返す生活で、認知症が進んだうえに足腰もかなり弱られたので、車椅子で生活できるように家の中を広く使いたいから、ということでした。

私もとてもお世話になったお母様なので、何かお手伝いできることがあれば、と思っておりましたところ、知人から連絡をいただきました。

「もう使わないから捨てようと思う物を選んだのだけど、まだ綺麗な物もあるから、よかったら一つでも二つでももらってくれませんか」とのことでした。

写真のハート型の小物入れはその一つです。蓋に2羽の鳩がとまっているデザインで、とても可憐ですね。来客好きのお母様はお茶を振舞われる際に、この中にお花のついた可愛い角砂糖を入れて、おすすめしておられました。私もそうやっておもてなししていただいた思い出があります。

尊敬するやましたひでこ先生は、こうおっしゃっておられます。
「モノへの執着を捨てて、身の周りをキレイにするだけでなく、心もストレスから解放されてスッキリする。これが断捨離の目的です。必要もないもの、使わないものを手放すことで、本当に必要なもの、本当に価値のあるものがさらに浮かび上がってきます。」 
※詳しくはこちらへ https://yamashitahideko.com/


知人のお母様は、もうお客をもてなすこともないのかもしれませんし、だから、もうこの容器は必要ないのかもしれませんが、お砂糖をすすめるお母様のにこにこしたお顔を私は忘れることができません。これはもう暫くの間、私がお預かりさせていただきたいと思い、大切に頂いて帰ってきました。


『7人の聖勇士の物語』の続きです。

聖ディビッドは自分を救出してくれた聖ジョージに、タタール皇帝との約束について語ります。

『7人の聖勇士の物語』
第11章 聖ジョージの解放(2)

それから、聖ディビッドは聖ジョージにタタールの皇帝との誓いについて話しました。すると、イングランドの騎士は、魔術師は捕えてあるが、命を取るのは気が進まない、と告げました。

「しかし、奴の残酷さのしるしをご覧下さい。」と聖ディビッドは言って、大広間にある残り998台の鉄のベッドを聖ジョージに示しました。

「大勢の高貴な騎士や従者たちが縛られて横たわり、何年もの間雄々しい偉業に従事することを妨げられているのです。あの方々がおさめたであろう多くの勝利をお考えください。何人の囚われの騎士たちが解放され、何人の見捨てられた乙女たちがひどい監禁から救い出されたことか。その他どれだけ多くの気高い行いを成し遂げたかをお考えください!」

この言葉で聖ジョージの考えはすっかり変わりました。そこで彼は聖ディビッドに「あなたに魔術師を引き渡します。」と言いました。

ウェールズの勇士は城から出て、剣の一撃でオーマンダインのおぞましい首を切り落とし、その首を竿の先に刺して、忠実な従者オゥエンに渡して運ばせました。そして、タタール皇帝の宮廷に向けて直ちに出立する準備ができたことを聖ジョージに告げました。

聖ジョージの勇気と知恵によって解放された他の998名の勇敢な騎士と従者は、彼と命運を共にしたいという強い望みを示しました。そこで、聖ジョージは、彼らを率いて世界中をめぐり、皆の武名にふさわしい冒険を探すことを引受けました。聖ディビッドも、タタールの皇帝との誓いを果たしたら、聖ジョージを探し、彼の手伝いをすることを約束しました。

高貴なイングランドの勇士はしばしば美しいサブラのことを考えましたが、彼女がどこにいるのかは知りませんでした。とうとう、勇敢な騎士と頼りになる従者の一軍を率いてバガボーナボウ王国に到着し、サブラのことを尋ねますと、愕然としたことに、彼女は肌の黒いモロッコ王アルミドールに捕われて連れ去られ、以来地下牢で嘆き暮らしているというのです。

騎士たちを呼び寄せると、聖ジョージはこの出来事を話しました。すると彼らは、大声で叫び、剣を高く振り回しながら、「私たちもご一緒し、命をかけてもサブラ様を救い出します」と約束しました。

彼らは直ちに出立し、肌の黒い王アルミドールの領土に到着しました。聖ジョージは身分の低い巡礼の姿に身をやつして町に入り、従者ド・フィスティカフも同じ服装で彼に付き従いました。美しいサブラがどんなおぞましい地下牢に閉じ込められているのかを確かめるためでした。

彼女の名前をささやきながらあちらこちらと歩き回り、出会った人全てに彼女のことを尋ねましたが、わかりませんでした。

そうしているうちについに、彼は1羽の美しい白い鳩が巨大な城の頑丈な城壁の下の、地面にあいた穴から飛び立つのを見たのです。その鳩を捕まえると、彼は羊皮紙の紙片に「イングランドの聖ジョージがサブラ様をお助けに参りました。ここにいらっしゃるならお知らせ下さい。」と記して、それを鳩の翼の下に結わえ付けました。

鳩は、穴に入ったかと思うとすぐに騎士のところへ戻ってきました。翼の下には同じ羊皮紙があり、「私、不幸なサブラはここにおります。ああ、お助けください、そして乙女の感謝と愛をお受けくださいませ!」と書かれていました。

すぐさま仲間の騎士たちのところへ戻り、巡礼の衣服を脱ぎ捨てると、聖ジョージは彼らを率いて出撃しました。

彼らはあちらこちらから城壁を襲撃しました。梯子を登る者、互いの背に乗る者、皆決死の勇武をふるいましたので、そこかしこでムーア人の兵士たちは撤退しました。

とうとう、アルミドールが戦いの騒ぎと叫び声を聞きつけて胸壁へと駆けつけました。続いて、高貴なイングランドの戦士と肌の黒い王との間で命がけの闘いが行われました。しかし、臆病者のアルミドールは相手に背を向けて、お付きの者たちにまぎれて逃げ出しました。さもなければ、彼は確実に殺されていたでしょう。幸運にも開いていた裏門から逃げ出しながらアルミドールは、「後日戻ってきて戦うぞ。」と高慢にも言い放ちました。

かくしてムーア人の城を勝利のうちに占拠し、聖ジョージと麾下の騎士や従者らはあらゆる扉や門を開け放ち、あらゆる廊下を探索しました。そしてついに薄暗い丸天井の地下室に至りました。その中には小さな扉がありました。聖ジョージは戦斧で大音響をたてて扉に打ちかかりました。扉が勢いよく開かれると、そこに彼の愛する美しいサブラがいるのが見えました。サブラの美しさは長い監禁のためにくすんでいましたが、失われてはいませんでした。

聖ジョージと騎士たちはムーア人の城を手中にしましたので、この機会を称えるため大晩餐会を催しました。その席上で、ブリテンの戦士が美しいアフリカの王女と結婚することを、布告官がしきたり通りに発表しました。布告は3度なされましたが、誰も異議を唱える者はなく、美しいサブラはこれまでの不幸を耐えしのんだ報償として、ヨーロッパ、いや世界で最も気高い騎士の花嫁となったのです。

ムーア人たちは聖ジョージの勇武と礼節にたいへん感じ入りましたので、主だった者たちや領主、貴族、そして国務を司る顧問官たちはへりくだった様子でやってきて、彼にその国の王位を授けました。しかし、聖ジョージは、その場にふさわしい多くの言葉を尽くして次のように明言しました。自分はまだ魂が渇望してやまない名声を勝ち取ってはいないので、そのような名誉は辞退しなければなりません、と。

聖ジョージは、彼がオーマンダインの城から救出した998名の騎士と従者を解散し、彼らがしてくれた援助に温かな感謝を述べ、誠意をこめて彼らの幸福を祈りました。

彼らはそれぞれの国や故郷へと出発しました。そして、結婚している者は、長らくの間彼らの不在を悲しみ、(皆がそうではないにせよだいたいの場合は)彼らの帰りを待ち望んでいた妻や子供のもとへと旅立ちました。

聖ジョージと美しい花嫁、魅惑的なサブラも旅立ち、忠実なド・フィスティカフに付き従われて、多くの見知らぬ異国を通って行きました。でも、ド・フィスティカフの奥さんはといえば、夫が帰ってきてイングランドで彼女や子供たちの世話をしてくれるほうがよいのに、と切望していたのでした。

今回はここまでです。
サブラ王女は無事に救出され、愛する聖ジョージの幸せな花嫁となりました。彼らの冒険はまだまだ続きます。

次回をどうぞお楽しみに!


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