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[西洋の古い物語]「真実を述べた鳩」


こんにちは。
いつもお読み下さり、ありがとうございます。
今日は、鳩と蝙蝠のお話です。
ご一緒にお読みくださいましたら幸いです。
※ 画像はフォトギャラリーからお借りしました。美しく、少し悲しげな鳩の姿に心惹かれました。ありがとうございました。

 
「真実を述べた鳩」

あるとき、鳩と皺の寄った小さな蝙蝠が一緒に旅に出かけました。夜が近づくと嵐がわき起こり、二羽の旅の道連れはあちらこちらと身を寄せる場所を探し求めました。しかし、鳥たちは皆巣の中でぐっすり眠っておりましたし、動物たちも穴ぐらや巣穴の中で寝込んでおりました。二羽はどこへ行っても歓迎してもらえず、最後に年老いた梟殿が住んでいるうつろな木へとやってきました。梟殿は暗闇の中でしっかりと目を醒ましておりました。
 
「ここをノックしてみよう」と抜け目ない蝙蝠が言いました。「ご老体が眠っていないことはわかっているんだ。今時分は奴が獲物探しをする時間なんだよね。嵐の夜でなかったらいつもは狩りに出かけていないのさ。」そして蝙蝠はキーキー声で言いました。「ごめんください、梟殿!嵐でひどい目にあっている二羽の旅の者を一晩泊めてくださいませんか。」
 
自分以外のことなどどうでもよい老梟はしわがれ声で彼らに入るよう言い、夕食を一緒に食べるようにとぶつくさ言いながら勧めました。あわれな鳩はあまりに疲れておりましたので、とても食べることができませんでした。しかし、貪欲な蝙蝠は目の前に広げられたごちそうを見ると元気が回復しました。蝙蝠はずるい輩でしたので、すかさず宿主におべっかを言って良い気分にさせました。彼は梟の知恵と勇気を誉め称え、立派な振舞いと気前の良さを褒めちぎりました。年老いた梟殿がいかに賢かったとしても、勇敢でもなければ立派でもないことは誰だって知っているのですけどね。気前の良さに関して言えば、梟殿があのかわいそうなミソサザイに対してどれほど利己的であったかを鳩も蝙蝠もよく覚えておりました。あの時、全ての鳥の中で梟だけが、あの小さな「火の運び手」に羽毛が焦げてしまって震えている体を覆うよう羽の一枚も与えることを拒んだのでした。
 
おべっかはことごとく梟を喜ばせました。彼は羽を膨らませたり逆立てたりして、なるべく賢く、立派に、勇敢に見えるように努めました。彼は蝙蝠にごちそうを遠慮なく食べるよう一層気前よく勧めました。狡い蝙蝠はさっそく勧めに応じました。この間、鳩は一言も発しませんでした。彼女は身動きもせずに座って蝙蝠をじっと見つめておりました。彼女は、そんな心にもないおべっかの言葉を聞いてびっくりしていたのです。突然、梟が彼女の方に顔を向けました。
 
「ところで、あんた、ピンクの目のお嬢さん」と梟はしわがれ声で言いました。「心配そうに黙ったままだね。食卓を共にするにはつまらぬ相手じゃな。なあ、あんたは何か言うことはないのかい?」
「そうだとも」と意地の悪い蝙蝠は叫びました。「ご親切なこちらのご主人に賞賛の言葉もないのかい?この素晴らしく気前のいいご馳走を、こんなに美味しくて行き届いた食事を、贅を尽くした、優雅なる、実に結構なご馳走を、こんなに快くご提供くださっているのだから、ご主人は相当の返礼を受けるべきだと僕は思うよ。小さい鳩さん、何か言うことは?」
 
しかし、鳩は首をうなだれ、友達を恥ずかしく思いながら、仰々しくなく簡単に述べました。
「ああ、梟様、今夜あなたが私に与えてくださいましたおもてなしと避難所に対して心から感謝いたします。嵐に打たれていた私をあなたは迎え入れてくださいました。空腹だった私に、あなたはご自身の一番良い食べ物をくださいました。蝙蝠さんのようにおべっかを言ったりお上手を言ったりは私にはできません。そういうお作法は教わったことがございませんから。でも、あなたには感謝しております。」
 
「なんだって!」と蝙蝠は、ショックを受けたふりをして叫びました。「ご親切なご主人にそれだけしか言うことはないのかい?このお方は紳士の中でも最も賢明で勇敢でご立派で気前の良い方ではないだろうか?僕たちに対するご親切だけでなく、ご主人の気高いお人柄を賞賛する言葉はないのかい?僕は君のことが恥ずかしいよ!これほどのおもてなしに君は価しない。このお宿は君にはもったいないね。」
 
鳩は沈黙したままでした。劇中のコーディーリアのように、たとえ自らの幸福のためであろうと彼女には真実でないことを言うことができなかったのです。
 
「全くもって、お前は愛想の無い客じゃな」と梟はどなりました。腹を立て、プライドを傷つけられて、梟の黄色い目は鋭く、獰猛になりました。「お嬢さん、お前は感謝を知らぬ鳥じゃ。蝙蝠君の言う通りじゃ。お前は儂が与えた気前の良いもてなしに価しないわ。お前が入れてくれと頼んだこの気持ちの良い宿もな。出て行くがよい!儂の棲み処から出て行け!嵐の中へ立ち去れ。そしてお前の沈黙が雨風を鎮めるかどうかみてみるがよい。出て行け、命令じゃ!」
 
「そうですとも、彼女を追い払いましょう!」と蝙蝠は皮の張った翼をはばたきながら梟の言葉をなぞりました。
そして二羽の非情な鳥たちは哀れな小鳩に詰め寄り、彼女を暗い嵐の夜へと追い出してしまいました。
 
かわいそうな小さな鳩!一晩中彼女は逃れる場所もなく、嵐に打たれ翻弄されました。それは彼女があまりに正直で、あの虚栄心たっぷりの年老いた梟におべっかを言うことができなかったからなのでした。しかし、夜が明けて輝く朝がやってくると、雨に汚れ疲れ果ててはおりましたが、彼女は鷲王様の宮廷へと飛んで行き、彼女の災難をすっかり王様にお話ししました。高貴な鳥の王様は大いに憤りました。
 
「阿諛追従と残酷のかどで、蝙蝠には二度と日没まで外を飛ばさぬ。」と王様は叫びました。「梟については、例のミソサザイに対する所業の故に、既に同じ罰に定めておる。だが、今後は、いかなる鳥も、蝙蝠であれ梟であれどちらともいかなる関係も持つことを許さぬ。両者を夜間にうろつき回る追放者となし、我々の面前に姿を現すことがあれば襲撃され罰せられ、皆から避けられて孤独の中に暮らす者とせよ。追従と不親切、欺瞞と冷酷――これらほど憎むべきものがあるだろうか。あやつらには暗闇に身を包み、昼の晴れやかな光を避けるようにさせよ。」
 
「そなたは、小さな鳩よ、今回のことを教訓とし、おべっか使いを仲間とすることを避けなさい。そういう者は間違いなくそなたを困難に陥れるのだから。しかし、率直さと正直さのためにそなたは常に愛されるであろう。そして、そなたへの朕の愛情のしるしとして、この世が存続する限り、そなたの名(“dove”)は詩人たちによって愛(“love”)と韻を踏んで用いられるであろう。」
 
 
「真実を述べた鳩」はこれでお終いです。

鳩は家に入れてくれた梟に心からの感謝の言葉を述べましたが、心にも無いおべっかで相手を喜ばせて利益をせしめることがどうしてもできなかったのですね。物語の中にもありましたが、シェイクスピアの『リア王』に登場するコーディーリアを思い出させますね。鳩は梟を怒らせてしまい、嵐の中に放り出されてしまいますが、鷲の王様が正しいお裁きを下してくださり、よかったと思います。

しかし、この世の中は今回の物語のようにはいかず、むしろおべっか使いは権力者に可愛がられてのさばり、おべっかが言えない者は疎まれ、虐げられることも多いのが現実です。鷲王様のような裁定者がいらっしゃればいいけれど、訴えでも守ってもらえず、余計叩かれる、ということもあるでしょう。悲しいことですね。私たちは社会の中でどのように生きていくのが正しく、賢いのか、生きていくうえで何が大切なことなのか、いろいろと考えさせられました。

最後までお読み下さり、ありがとうございました。

このお話の原文は以下の物語集に収録されています。

次回をどうぞお楽しみに。
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