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現場で起こるフォントのグレーな話

オープンな場でこのような話題を取り上げるのは大変気が引けますが、印刷物制作に関わる全ての人が意識が高いわけではありません。現場でのフォントの扱われ方についての体験と対策のお話です。

書籍制作会社でDTPをしています。表紙、本文ともにさまざまな種類の書体を使います。社内のルールとしては、Morisawa FontsとMac標準フォント、入手先がわかればフリーフォントも可という感じです。しかしなぜかそれ以外のフォントファイルがMacの中に蓄積されているのです。

謎フォントはどこから来る?

流入経路① 支給データ

フォーマットは社内作成だけではなく、他社から支給されることもあります。「◯◯シリーズ」の第何弾で、共通デザインだけど制作会社はバラバラみたいなことがよくあります。データはInDesign一式をいただくわけですが、パッケージされているので持っていないフォントが使われていても開けてしまうんですよね。同階層にいる「Document fonts」フォルダにフォントファイルが入っていると、一時的にインストールされた状態になるためです。
この仕様を知らないDTP作業者も多く、知らないうちに少しずつ出所不明のフォントが溜まっていくのです。開いてエラーが出なければ気付かないのも当然です。何らかの理由で読み込まないときに「Adobeのfontsフォルダに入れると解消するよ」というその場しのぎのTipsでごまかしたりしているので傷口は広がります。

流入経路② 嘘フリーフォント

フリーフォント配布サイトなら大丈夫と言えないのがこの業界の闇です。もちろん趣味で制作していたりCCライセンスを提示していて信頼できるサイトはたくさんあります。入手元をきちんと確認できれば良いのですが、これどこで拾ったんだろうという怪しいフォントを社内で見かけます。
特に多いのが欧文。フリーでこんないいもの手に入るわけないのでは? と思いフォント名やファイル情報に注目すると有名会社の名前が入っていたりします。たまたま早めに気付くことができれば問い合わせますが、既に案件が進んでいるとどうしようもないので見なかったことにするしかありません。
このパターンで厄介なのは、DLした本人に悪気がないことです。おそらくどこかの海外サイトでフリーフォントとして公開されていたのでしょう。これは桃の移動販売みたいなもので、正規ルートで配布しているかわからないので関わらないことがトラブル防止になります。

流入経路③ 安易なコピー

いろんなフォントを使うのは楽しいです。デザインの幅も広がります。人の作業データを見ていたら、持っていないフォントがあったので手元にコピー…したくなる気持ちはわかりますがダメなんですよね。共同チーム内で違うフォントを持っているのがそもそも変なので、どこで手に入れたか確認しないといけません。
フォントファイルは簡単にコピーできてしまうので、ライセンスを意識せず無邪気にコピーしてしまう人は多いです。

健全な環境をつくるには

ライセンスの意識を高める

そもそもの話、フォントが有料商品であるという認識を持ちづらい気がしています。パソコンに最初から入っているし、会社に入れば支給されるのでタダで使えている気分になるのかもしれません。最近はクラウド化とCCライセンスの配布が増えて自然消滅に向かっているので良い傾向だと思います。
他の人もやっているからという心理も大きいです。コピーできちゃう、訴えられるわけでもない、真面目に向き合うと仕事が止まってしまう、などの要因もあり健全化が進まないのだと思います。
しかし違法ですので無くしていかないといけません。無知は罪ですし、知っていながら何もしないのもダメなので指摘していきましょう。グレーな話なのでなかなか公の記事に出会わないのですが、周知のために「この記事を読んでくださいね」と言えるものがあるといいなぁと思います。

カバー画像は山路を登ったりキツネが跳ねたりしている絵です。


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