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曖昧になるゲームと映画の境界線! それぞれはどう進化する?

先日、友だちに勧められて、映画『エブエブ』こと『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を鑑賞した(しかも「ぜひ観て!」とnoteのサポート経由でおごってもらって。ありがとう)!

マンガ『ドラゴンボール』のセリフよろしく、感嘆符の数の多さで映画の感想を表すのであれば……「めちゃくちゃ面白かった!!!!!!!」のひと言である。

まさに、アカデミー賞総なめなのもうなずける!

© GAGA Corporation. All Rights Reserved.

これから鑑賞する人のためにネタバレは避けるけれど、設定や脚本、そして展開や映像演出など、ところどころに"ゲームっぽさ"を感じる作りで非常に魅力的な作品だった。

こう、"がっちりとゲームネタが盛り込まれてますよ"という映画ではないのだけど、『キューブ』(1997年)や『マトリックス』(1999年)、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014年)などを観たときに感じた、「なんかいろんな仕掛けや設定がゲームっぽくで楽しいな!」という気持ちに近かったのである。

\"ゲームと映画の関係"にはさまざまなパターンがある!/

さて、"ゲームと映画は親和性が高い"という話は、すでに言い尽くされた感もあるけれど、あたらめて自分なりに"ゲームと映画の関係性にはどのようなパターンがあるのか"というのを、やんわりとまとめてみた。

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▼【関係性その1】映画を原作としたゲーム

それこそファミコン時代は、『スパルタンX』(任天堂・1984年)をはじめ、『ゴーストバスターズ』(徳間書店・1986年)、『グーニーズ』(コナミ・1987年)、『ロボコップ』(データイースト・1989年)など、人気の海外映画をゲーム化した作品が多く見られた。

もちろん、日本映画のゲーム化に関しても、『スウィートホーム』(1989年)や『もっともあぶない刑事』(東宝映画・1990年)といった作品がリリースされている。

また、ファミコン以前まで遡ると、"伝説のクソゲー"としても名高い、ATARI 2600用のゲーム『E.T. ジ・エクストラ・テレストリアル』(ATARI・1982年)が思い浮かぶ。

パッケージはカッコイイんですけどね。
© ATARI
このドット絵はアートとしてはかっこいい。
ゲーム『E.T. ジ・エクストラ・テレストリアル』。
© ATARI

当時はゲーム機の性能上、グラフィックをドット絵(ピクセルアート)で表現していた時代。原作映画とは似ても似つかぬキャラクターや世界観のゲームも多かったが、それでも当時の子どもたちは想像力を働かせて、映画の主人公になり切って楽しんでいたのである。

そして近年では、PS2の『ゴッドファーザー』(エレクトロニック・アーツ・2007年)や、PS4の『スター・ウォーズ ジェダイ:フォールン・オーダー』(エレクトロニック・アーツ・2019年)など、より実写に近い映像および演出の”映画を原作としたゲーム”も増え、さらにここ最近では、映画『ハリー・ポッター』シリーズの世界を舞台とした『ホグワーツ・レガシー』(Warner Bros. Games・2023年)の人気が記憶に新しい。
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▼【関係性その2】ゲームを原作にした映画

そして、"関係性その1"とは逆に、ゲームを原作にした映画で言えば、古くは『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』(1993年)や、『ストリートファイター』(1994年)、『モータルコンバット』(1995年)などが挙げられる。

筆者の私物。映画『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』のフィギュア。
同映画のトーキングフィギュア。背中にある紐をひっぱるとしゃべる。

ちなみに、"アニメ映画"というくくりならば、さらに古く、山瀬まみがピーチ姫、和田アキ子がクッパ役の声優を演じた『スーパーマリオブラザーズ ピーチ姫救出大作戦!』(1986年)なども有名だ。

松竹のホームページにはきちんと作品データベースとして
当時の『スーパーマリオブラザーズ ピーチ姫救出大作戦!』のチラシが掲載されている。
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なお、2000年代に入ると、ゲームを原作にした映画は一気に急増し、『トゥームレイダー』(2001年)、『バイオハザード』(2002年)といった、その後シリーズ化された人気映画も誕生している。

当時、ゲーム原作の映画が急増した理由のひとつには、ゲーム機の性能の向上に伴い、"実写のような演出や見せ方のゲーム"が増え、より映画との親和性が高まっていった、ということもあるのかもしれない。

そして最近はというと、『名探偵ピカチュウ』(2019年)や、『ソニック・ザ・ムービー』(2020年)がヒットを飛ばしたのも記憶に新しい。

さらには、そもそも映画的手法を取り入れて人気を博したゲーム『アンチャーテッド』(SIE・2007年)が、実写映画『アンチャーテッド』(2022年)となって公開されたのも、"逆輸入的な感じ"で面白くもある。

そんななか、個人的にはこの春公開予定の『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(2023年)が非常に楽しみなのである。

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▼【関係性その3】ゲームカルチャーを取り入れた映画

ほかにも、ゲームの"なにかしらの要素"を、作品のエッセンスとして取り入れた映画も多い。

たとえば、映画『ジュマンジ』(1995年)。オリジナル版はボードゲームの世界に閉じ込められた主人公たちの冒険を描いたアクション映画だが、リメイク版の『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(2017年)は、ボードゲームではなくテレビゲームの世界に入り込んでしまったと、いう設定に変更されている。

3回死んだらゲームオーバー(ライフ制)というルール、そして登場キャラクターごとの得意技を活かした演出など、まるでアクションRPGを体験しているような楽しさが味わえる作品に仕上がっている。

また『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』(2010年)は、日本のゲームやアニメに対するオマージュが満載だ。

主人公のスコットが、付き合い始めた彼女の"元恋人7人"と次々に戦っていくというアクションコメディ映画なのだが、元恋人と戦うときは、格闘ゲームのようにスクリーンにライフゲージが表示されたり、また相手を倒すとコインになったりなど、まさにゲーム世代が楽しめる作品に仕上がっている。

さらに、ゲームカルチャーやゲームネタを、さらにより濃く(直接的)に描いた作品として、VRゲームを題材にしたサスペンス映画『イグジステンズ』(1997年)、アーケードゲームの世界に住むキャラクターたちの物語を描いたフルCGアニメ『シュガー・ラッシュ』(2012年)、クラシックアーケードゲームのキャラクターたちが地球に攻めてくるSFコメディ『ピクセル』(2015年)、VR世界を舞台にさまざまなゲーム・アニメ・映画ネタが織りなすSFアクション『レディ・プレイヤー1』(2018年)などがある。

『イグジステンズ』は、鬼才デビッド・クローネンバーグ監督によるSFサスペンス。
ちょいグロいですが、個人的に好きな1本。

そして、ちょっと毛色は異なるが、米海軍特殊部隊とテロリストの戦いを描いた戦争映画『ネイビーシールズ』(2012)は、一人称視点の映像演出が多く、銃を構えて交戦するその映像演出は、まるでFPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)のような雰囲気だ。

さらに、そのFPS視点の映像演出をさらに昇華させ、全編一人称視点で撮影されたのが、SFアクションの『ハードコア』(2015年)だ。この作品も、とてもゲーム的な映像に仕上がっている。ただ、3D酔いしやすい筆者にとっては、ずっと観ていられないのが難点だ!(笑)


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\ゲームと映画のボーダーラインはどこだ?/

ゲームと映画の違いのひとつに"インタラクティブ性"の有無がある。

とはいえ、"ゲームは能動的、映画は受動的"という時代は、過去のものになりつつある、とも感じている。

というのも、昨今、アクションや謎解きといった能動的な楽しさではなく、映像やストーリーを中心に楽しむ"インタラクティブムービー"のようなゲームも広く受け入れられている。

また逆に映画は映画で、Netflixの『ブラック・ミラー: バンダースナッチ』(2018年)や、『ボス・ベイビー: ベイビー株式会社を救え!』(2020年)のように、ユーザーが選択肢を選んで能動的に物語を作り上げていくインタラクティブ性のある作品も増えてきた。

そして、(過去にインタラクティブな映画はいくつかあったが)時代が進めば、さらに映画館でインタラクティブに楽しめる技術が出てくるだろうし、映画の楽しみかたも少しずつ変わっていくのかもしれない。

このように、ゲームと映画の違いを語るうえで、もう"インタラクティブ性"の有無は曖昧になってきている、とも感じる。

……と、ちょっとまとまりのない文章になってしまったが、ゲームっぽい楽しさを感じた『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を見終わったあと、そんなゲームと映画の境界線は今後どうなっていくのかな、なんてことを、ふと思ったりしたのである。


<まとめページ>【ローリング内沢の】エッセイ・コラムいろいろ

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