ふつうの話、少女漫画、ふつうの話

友達のことを書こうと思います。

て、言っときながら今現在の
マイメンのような人達のことを惚気るのではなくて。

なんかよくわからんのですが、
私は出会った瞬間にでひょいひょいと人と親しくなることがあります。

それは初対面の人に、"初めて会った気がしない"とか
"友達に似てる"とか、出会い頭に懐かしい存在に当てはまるようなことです。
それを私はありがたく受け止める気はないし、
嬉しくとも思えません。自然なことで、
でも自分の中のなにがそうさせてるのか未だにわかりません。

私はパーソナルスペースが多分他の人よりかは無くて
心を常に開放して生きてるから
いろんな人がやってきてくれるのかな?と最近ぼんやりおもいます。それやとしたらありのままを受け入れてもらえててありがたいなぁ。めっちゃ幸せやん。

まぁ、でも、だいたいぼーっとしてるだけの人なので。

そんな私は高校生の頃に、あるバンドのミュージックビデオを見ました。
Twitterで回って来て知ったんかな?
そのミュージックビデオをみて、
そのミュージックビデオにでてたモデルの女の子のファンになりました。

モデルの女の子は古着屋の店員さんでもあって、元々snsで見たことがあったので綺麗でなんか雰囲気やばい同世代の人がいるという認識で知ってはいたけど、ミュージックビデオに出てる彼女をみて私は完全に彼女に堕ちた。

私という女子高生は授業中にネットサーフィンを
すいすい乗りこなすサーファーでして。
授業中にネットで買い物をし、授業中に眠り、好きな人の後ろ姿を見つめてノートに落書きしたり、バイトを詰めすぎたり、それはそれはごく普通の女の子でしたので、ミュージックビデオをみた日からは、国語でも数学の時間でもその子のsnsを見たり教科書に隠れてミュージックビデオをみたりネットで服買ったり、服買ったり、してました。

それで、ミュージックビデオを何回も観た末に、
この人に会いたい!と思って
放課後、電車に乗って彼女がいる古着屋さんに行きました。ほんなら店入ったら普通にいてるんですね、びっくりした。あんなにTwitterで見てたのに?
話したら同い年で、もっとびっくりしたりして。
もっと話したら案外ふつーにたこ焼き食べたりするんですね、そりゃそうかとか思いながら
気づいたら彼女と遊ぶ約束してました。パーソナルスペースはこの時の私にも無かったんですね。お互いになかったんかな?

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"なぜかはじまってゆくこと"って、いつか途切れるように終わってしまう気がしてこわい。
急に遠くなってしまうんかな?て思ってしまって。
でも、終わる時はそれがタイミングなんやろう、
どんな事も、どんな時でも。

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彼女に誘われて二人でパーティーに行きました。
同世代から二つ上の世代くらいまでのお洒落な人がたくさんいて、右見れば酔うた男がどこぞやのお洒落さんにキスしてるわ左見ればデザイナーなんかな?みたいな人同士が挨拶してるわみたいな、外の通りにでたらどこぞやの古着屋の店員がゲロ吐いてるわで、なんかごちゃ混ぜDJブンブンぴえん〜みたいな空間で。
華やかな場所が得意じゃない田舎の女子高生はビビって縮こまりました。

それでも彼女が手を引いてくれてたから
まぁなんとかみたいな感じで楽しかったことを覚えてる。

彼女がいまはどこでなにをしてるのか知らない。ただ、あのパーティーの夜を思い出すと違う世界のことを想像してる様な気持ちになる。

その日のパーティーはどんな風に終わったんやっけ?
もう覚えてへんな。

私が通ってた高校は、私が入学する5年前に2つの高校が合併して名前を改めて新しくできた学校で、私はその学校の5期生だった。元ある二校のうちの片方の校舎に新しい学校として創設されたから校舎が新しいわけではなかった。プールサイドのフェンスも机の上の落書きもグラウンドも合併する前から何年もずっとあったことがわかるくらいこの場所に馴染んでる。
私のクラスの教室は外側の窓側の席に当たればグラウンドが見えて日当たりがちょうどよくてよく眠れた。体育の授業の笛の音や掛け声を遠くから聞いてはうとうとしたり、カーテンに隠れてどこかのクラスの体育をぼんやり眺めてた。
クラスメイトにいろんなバンドの追っかけをしてる美穂っていう子がいて、
美穂があのミュージックビデオのバンドのファンって言うからほな一緒にライブいこよって約束して、
学校が終わり次第着替えに帰ってすぐに電車に乗ってライブハウスのある市内に向かった。美穂のリュックにはいろんなバンドのラバーバンドがついてて、黒いリュックにカラフルなラバーバンドが映えてた。
ライブハウスに向かうまでの道中、おなかがぺこぺこすぎて、雨が降ってたけど歩きながらコンビニのおにぎりと豚汁飲みながら傘さして歩いた、めっちゃ器用。もう忘れてしまっただけでその時は脇腹から手が生えてたんかも。スティッチ?

会場についてなんとなく彼女もくるんかな〜って薄ぐらい中、見渡してみたけどおらんかった。そりゃそうか。
ライブハウスのロッカーに友達と私の荷物を押し込んで、にわかにしか好きじゃないバンドのライブの空気感に染まって楽しんだ。

でも次の日には、なんで行ったんやろう?て思うくらいその日のライブもバンドも聞いた曲を一曲一曲、振り返っても好きにはなられへんかった。

でも彼女がいたら頭に焼きついて、
口ずさむくらいには好きになってたかも。

それから何日か経って、彼女に会った時に、
こないだあのバンドのライブいったで〜。て言ったら、特に関心がなさそうな返事が返ってきた。
ああ、なんやろう、冷たい奴って思った。
彼女は特別美しくて、綺麗で人を惹き寄せる力があった。今思えば、私が惹かれていただけなのかもしれへんなって思える。
彼女のスタイルのよく変わるショートカットは金になったり黒になったり、刈り上げたり、ゆるく茶色くなっても似合ってた。笑って下を向くまぶたは少しおもたそうでとろんとして、彼女の細い体に余る服の袖までもがどんな瞬間でも造形物みたいやった。

いつも必死な自分に比べて、
ラフに構えても彼女の絵になる姿が
あの頃の私は本間に好きやった。格好ええなーって思ってたんよ、むちゃくちゃな所も。
あの冬のことを振り返る時には真っ先にこれからどうする?みたいな10代のありきたりな会話をしたことを思い出す。

私は高校卒業後、美術の短期大学に進学して、あっという間に社会人になった。過ぎてみれば2年という時間はかなり短くて、すぐに流れて、
待って!と思っても時は待ってはくれず。
時よ止まれ!と思う時には必ず、私の頭の中には落ちてく砂をつかもうとする映像が頭に流れる。
私はやっぱり変なやつなのかもしれん。
社会人一年目の夜はカーテンのそばに布団を敷いて、ぼーっとしていた。涼しくて、カーテンの隙間に未来の兆しを透かして願ったりしてた。あしたをやり過ごすことで精一杯なくせに。

その頃には彼女はsnsの世界から遠ざかっていた。
私も彼女とは友達という距離からではなく、
彼女の名前をTwitterでエゴサーチしないとモデルとして活躍しているのかさえわからなかった。
検索結果は1年前の更新で止まったまま。
彼女とのLINEも同じ時期で止まってる。

高校卒業する間近の冬、
彼女がうちに泊まりにおいでよと言ってくれたので
少し遠かったけど、彼女の住む街までいった。
泊まりがけで行かないと日帰りで行くにはちょっとキツい距離だった。
彼女は彼女のうちからの最寄駅で待ってくれていて、改札抜けると真前にいた。来るまでの距離が長すぎたから、彼女の姿を確認すると安心した。
駅の外で須磨の海がきらきらしてる。

夜はたこ焼きしようって約束だったから、スーパーに具材を買いに寄ってから彼女の家にお邪魔することにした。
スーパーまでの道中は山道で、長いトンネルを歩いてくぐった。
買い物を終えてスーパーをでたら、たこ焼きの出店があった。夜ご飯はたこ焼きやって言ってんのに彼女は出店でたこ焼きを買おうとした。いつでもとびきり自由な人、さすがにそれは引き留めたけど。
今ここでたこ焼き食べられたら夜に食べる分のおいしさが半減するやんな。

彼女の家に着くと、"じい"がいた。
彼女のじいちゃん。
私は何も知らなかったのだけど、彼女はじいちゃんに育てられたらしい。じいは私たちが焼いたたこ焼きを食べた。
私たちはじいが焼いてきたさつまいもを半分こした。
冬にみんなで囲む食卓は、とろけるくらい温かい気持ちになる。じいは私が土産で持ってきたサブレをバリバリたべて、もうひとつをポケットにいれて、残ってる仕事があると言い出かけた。
こんな寒い夜にまだ働くのか、と思ったことを覚えてる。

二人きりになったとき
彼女は、じいは癌なの と言った。私は私のことではないのに胸がギュッて苦しくなって
何泊でもしていいよという彼女のそばに、できるだけいたいと思った。明日の夜もここにいたい、なんかわからんけどそばにいたい。18歳の時の自分なりに気持ちが動いた。学校はもうすぐ卒業やし休んでもいけるなと思ってその日は二人ともすぐに眠った。
明日いっぱい話せばいいやんって。

ソファーで寝ていいよ、うちはベッドで寝るからって言ってたのに朝目覚めたら私が眠るソファーの下で毛布をかぶって彼女は寝てた。

結局、事情があって私は翌日に帰ることになった。
夜ご飯を食べに二人で大阪まで出てそれから解散した。昨日たこ焼きを食べたのにお好み焼きを食べた。私はなぜかお好み焼き屋で芋焼酎を一升のんだ、
お店の人がたんまりと、ついでくれたから。
お店を出る時にお店の人からお菓子の詰め合わせをもらった。理由を聞けばその日は開店一周年記念らしい。私たちは、お店の人におめでとうと伝えて店を出た。それからその流れで、また と言ってさよならした。帰りの電車で彼女のTwitterをみたらフォロワーの多い呟きの少ない彼女のアカウントには私の寝顔がかわいいと明朝に呟かれていたことを確認した。
変なのって思ったけど、それがなんか嬉しくて、変なのは私の方やなって笑えた。

彼女のうちに泊まりにいった日から一年以上、
全く会わなくなった。私はその間に高校を卒業して、短大に進学してた。
彼女には何度か連絡をしては返ってきたけど会えなかった。私はそれがなんかこわかった。
突然出会って、急に離れてくことにどう対処していいかわからなくて、若さ故に理由を求めてしまって。
今でもわからん。  

短大一回生の夏、
彼女に彼女ができたことをsnsで知った。
そっか、と思う傍自分の記憶が蘇って
あの時、わたしは彼女にとってどんな存在だったのかと改めて思った。手を繋いだパーティーの夜から、
淡々とした呟きが並ぶ彼女のアカウントの中、
もう少し一緒にいたかったと、ツイートされた最後の日まで。
やけどそんなことを考えても仕方がない、
私はその日も絵を描いた。何を描いたかは覚えてないけど。短大一回生の夏は半ばを過ぎていた。

二回生の夏頃、三ノ宮の画廊に出かけた。
日本画家さんの個展で、その人の絵が見たくて電車を乗り継いで来た。三ノ宮はうちからは結構遠いから、滅多に来ない。
短大生の頃は特別お金がなくて、毎日同じデニムスカートを履いていた。それも少し絵具がついてた。暑いなか、重たいデニムはちょっとキツい。路地を抜けた先に画廊があって、そんなに歩いてないのに画廊に着く頃にはへとへとやった。
日本画家さんの作品はすごく感動したのに、いまはその人の名前もどんな絵だったのかも覚えてない。
まじまじと絵を見つめて、満たされた私は画廊を出た。そのタイミングで彼女からLINEが入った、
「今何してるん?」
どうしてこうも、この人は突拍子もなくやってくんのかな。

三ノ宮にいてることを伝えると、彼女も三ノ宮にいるらしかった。私は夕方からバイトがあるから、それまでならと伝えて三ノ宮駅で待ち合わせをした。
夏が来る手前の涼しい暑さと日差しの中、彼女はスケボーを片手にやってきた。金髪やった。
私は高校生のときより遥かに太っているから彼女に会うのはちょっと恥ずかしかったけど会えることの方が嬉しかった。
三ノ宮駅から一番近くのドトールで手短に話した。
もう、何を話したかも忘れてしまったけど彼女に会ったのはこの日が本当に最後だった。
駅のホーム、向かい越しに彼女はまた連絡するといってさよならをした。
"また" とかないでしょう、元気でね、と思い小さく手を振った。

あのミュージックビデオをみてから5年がすぎた。
私はあのバンドのあのうたを今でも口ずさんでる。

彼女とある日突然仲良くなって、突然離れたせいで、何かが突然はじまることがこわかった。でも今は"なぜかはじまること"は、過ぎた時間を未来が意味のあるものに変えてくれるだけのことなんやと思えるようになった。
どんな人とも出会った瞬間の関係が続くとは限らんし、
その時に思ったことが当時のまま心に残り続けることも難しいなって、最近よく思う。答えあわせをするみたいに、心は常に動かされてる。まちがいさがしみたいな答えあわせはしたくないから、人に触れることで、この体に余るほどの心をもらってることだけを答えにしたい。

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