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自由詩「負けないぞ」

    こんばんは。ローランです。
    今日も自由詩です。この作品は以前にTwitterで掲載したものを改題改訂したものです。
   
    蜘蛛の糸ってお話がありますよね。とても素晴らしい仏教のお話です。でも私には、どうにも意地悪なお話にみえてしまうのです。どうせ切れてしまうのがわかっているのに、これ見よがしに糸なんて垂らさなくてもいいじゃないか、期待を持たせてから落とすなんてちょっと酷くないか?と思ってしまう私はへそまがりな厄介者です。まるで世の中を表現しているみたいで、うーん…とどうしても思ってしまうのです。
    だから地にいる者として一矢を報いてやるぞと、努力すればできないと思うようなことでも出来るようになるんだと信じて、書いてみました。

    では、今日もお楽しみ頂ければ幸いです。


努力すればきっとサクラサク


「負けないぞ」


成功者になりたいなら
これを掴んで上っておいで
天から垂らされた細い細い糸
地の底から夢を追う者たちが
手を伸ばしその糸を必死に掴もうとする
四方八方から手を出すものだから
細い糸はゆらゆら揺れて
余計に掴みにくくなる
ある者が大声で叫ぶ
待て!一人ずつ掴もう!
だが誰も聞く耳をもたない
我先にと糸を求める手はさらに増え
地の底は混乱の極み
天から糸を垂らした者は
地の底でもがき苦しむ者を見て嘲笑っている
これだから成功者になれないんだよと
それが世界の構造だ
わかってはいても
這い上がりたい者たちはどうしても視野が狭くなる
その結果、一斉に掴もうとするものだから
糸はプツリと切れてしまう
糸が切れると
天上の者はまた新しい糸を垂らしては地の底の者を嘲笑う
なんどもなんども繰り返しては笑い者にする残酷な成功者たちの遊び
だが地の底の者たちも負けてはいない
糸が切れてがっかりしている者たちに声をかける者がいた
一人ずつ掴もうと言った者だ
切れた糸を拾い集めよう!
そしてその者は皆を説得し
切れた糸を何年も何年も
長い時間をかけ編んでいった
努力の甲斐あって
ついに敷物が出来上がった
それほど大きくはなかったが
天上の特殊な糸で編んだので
空飛ぶ絨毯に仕上がっていた
そしてみな順番にその絨毯に乗って目指す世界に飛び立って行った

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