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自炊をする理由

 私は数年前からよく自炊をするようになった。最初はオートミールにハマり、いろんなレシピを探しているうちに、普通のご飯(?)も作るようになった。そして自炊を継続するきっかけになったのは、蒸篭の購入と八百屋の存在だ。

 蒸篭はしばらく前から同僚に勧められていたのだが、絶対に手入れできないと思って手が遠のいていた。しかし『ちょっと意識が高い系の生活への憧れ』という不純な動機から、電車で30分かけておしゃれな調理雑貨のお店に赴き、ついに蒸篭を買った。蒸篭は本当にいい香りがして癒される。蒸した食材にもその香りがほんのりつくし、食感もべちょっとならず、ホクホクでおいしい。

 蒸篭が自分の生活の一部になったことで、野菜をよく食べるようになった。そのタイミングであるフランス人女性のInstagramを見るようになった。野菜をたくさん使ったヘルシーなレシピを紹介していて、私の野菜料理ブームに拍車がかかり、スーパーではなく近所の八百屋に行くようになった。1人暮らしでは使い切れない量だと思っていた野菜も1玉使い切れるようになり、買い物が楽しくなった。そしてとにかく安いことに感動した。1週間分の食材が、1000円かそこらで手に入る。こうして私の自炊サイクルは順調に回り始めた。

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 このように書き連ねると、食べることが大好きな雰囲気を感じるが、私は食への興味は薄い方だ。「今日何が食べたい?」と聞かれて、すんなり答えが出たことなんて1度もない。幼い頃はよく「食べたいものがないと献立が決まらない」と母を困らせた。
 
 私が自炊を続けられる本当の理由は、「料理というタスク」を淡々とこなすことができるからだ。何を作りたいかリサーチし、その情報をもとに必要な食材を考える。冷蔵庫の在庫状況や値段によって、時に代替できるものがあれば変更していく。キッチンではどのような計画で進めれば効率よく作業を終えられるか検討し、不測の事態に適宜対応していく。このように黙々と作業をこなしていく快感と、遂行できた達成感を味わいたいのだと思う。そして作った料理を写真に残しておけば、自分のやり遂げた仕事を一目で確認することができる。「私結構頑張ってるじゃん」と簡単に思える。私にとっての自炊は、自己肯定感を上げるための作業でもある。

 食への興味がなくても、自炊は楽しい。

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