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誰も知らない

これは絵の展示だっけ。
一瞬そう思いかけた。
光の淡く眩いきらめき、絵の具を塗ったかのように緑と青が混ざった海、出来過ぎにも思える構図。

でも、それはまごうことなき写真で、常に移ろいゆく一瞬たりとも同じ姿を見せない自然のワンシーンにはっと息をのむ。

夕日が海に沈む瞬間、海に夕日が対称に映るタイミングを狙ってシャッターを押された時に偶然発生したという稲妻。
狙っていたとしても、良くも悪くも思い通りにならないだろう。

1秒毎に驚く速さで姿形を変えるに違いない自然たちの、二度と再現できないシチュエーションが可視化されて目の前に差し出されている。
普段人間が立ち入ることのない、未知の世界。
こんなにも美しいものたちが存在するのかと、ありきたりな言葉だけど「自分がちっぽけに思える」とはこのような感覚のことを言うのだろうか。

海中の生き物たちを撮影した写真のキャプションに、印象に残るものがあった。

「海の中の生物たちは、美しくデザインされた模様や色彩を持つものが多く存在します。ただそれは、普通、誰にも知られることなく静かに一生を終えるのです」

確かこのような内容だったと思う。
誰かに見てもらうためでもなく、そして誰にもその美しさを知られなかったとしても、自分の生を全うし、ひっそりと海の一部となる。
その誠実さ、真っ直ぐな生き様に憧れる。

私は普段全く写真を撮らないけれど、撮ることでしか残せない生きた証があるのなら、自分も未来に何かを残せたら、と強く思う。

高砂淳二写真展「この惑星の声を聴く」で購入した
ポストカード

【おまけ】
とても可愛い構図の写真があったので、ポストカードを買いました。これにセリフを付けるとしたら…
カニ:「昨日、アイス勝手に食べてごめんやで」
トリ:「ええで。許したる」