小泉八雲とイエイッ 1
小泉八雲-ラフカディ・ハーン(1850-1904)は、日本に帰化し妻から伝え聞いた怪談や古典を基に作品を書き上げた明治を代表する再話文学者です。その作風には幼少期の体験が多分に影響している。
父母に去られ大叔母に養育され、2歳から12歳までの間を過ごしたアイルランドは、妖精などの怪異が登場する伝承が多く残ることで知られ、八雲自身も周囲の大人からそれらの昔話を聞かされて育ちました。
多神教の社会であるアイルランドと日本の基層文化は驚くほど近く輪廻転生観とか民話にも似たものが伝承されている。日本とアイルランドは、ともに自然信仰や精霊信仰といった考えを根底に持ち、ユーラシアの西果てと東端 に位置しながらも「神秘」と「幽玄」の世界観を共有しています。
能には異世界の住人(鬼、神、天狗、亡霊など)や人間の怨念、情念などが登場します。ケルトにも共通の考えが存在し、万物に精霊が宿るといった日本の「八百万の神」に通じる自然信仰や精霊信仰が根付いています。これらの神秘性や異世界、そして死との繋がりは、日本の思想や能の表現と非常に似通っています。
八雲と同時代人で、同じくアイルランドにルーツを持つウィリアム・バトラー・イェイツ(1865-1939)は、詩人・劇作家・思想家と多彩な活動をしてノーベル賞を受賞した、時代を代表する文豪です。
彼はアイルランド民話を調査・編纂し、著作として世に発表しました。また、彼の書く詩や劇は、それらの民話や伝承から大きな影響を受けていました。この世ならざるものに強い関心のあったイェイツは日本の能に興味を持ち、そこから着想を得て戯曲『鷹の井戸』を書き上げています。
八雲は東大で英文学の講師として学生への講義の中でイェイツを非常に優れた文学者として称賛しています。
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