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屋号で活動する理由

「職人」と「作家」は何が違うのか。
この話題は永遠のテーマかのごとく
よく物作り界隈で議論されます。
明確なルールはないのですが基本的には
OEM、下請けといった形で問屋さんやご商売されてる方などから
お仕事を頂いて製作するのが職人で
自身が個人名を出し個展などで生計を立てているのが作家だと
僕自身は認識しています。

とは言え、一部自分の名義で作品を出す職人もいるし
逆に実は聞いてみるとOEMを受けていてそれが売り上げのメインだったりする
作家もいます。
あるいは著名な作家となると
弟子が実際の製作を行い銘だけ自分が入れる作家も中にはいます。
そうなると有名作家は正確に言うとプロデューサー的な立ち位置になります。
実のところ職人や作家という肩書は明確に線を引けない曖昧な言葉です。

ちなみに正しい日本語で言うと
実用的なものを作る場合は「製作」
アートなどの芸術作品を作る場合は「制作」が正しい表記です。
意外と皆さん知らないので
取材の原稿で訂正したりすることがよくあります。
誰も気にしていないとは思いますが念のため笑

さてここからは僕自身の話をします。
僕、酒井義夫は「ろくろ舎」という屋号で活動しています。
これはハナから作家としてではなくメーカーとして
やっていくという宣言でした。

メーカーというのは
自社の屋号で自らの責任を持って商品を企画し
伝え、売るという全てを総括した肩書きだと僕は認識しています。

僕はまず独立した当初から仕事を上流から受けて進めれる
立ち位置を模索してきました。
それは以前の原稿でも書きましたが
下流でただ仕事を待つだけではいつか死ぬと考えていたからです。

僕の現在の仕事の仕方は多岐に渡っています。

職人として丸物木地の製作。
デザイナーと職人の間に立って潤滑油のように調整するディレクター。
受注会の開催あるいは自社の製品を作る上での企画、デザイン、販売。
自社のプロダクトを職人に振る問屋的な立場。

職人でもありつつデザイナーでもありつつプロデューサーでもあると共に
問屋のように見える立ち振る舞いも全てが僕の仕事です。

これは一気にそうなったというわけではなく徐々にそうなっていきました。

元々というか、なりゆきというのがリアル。
なぜならこれも書いたことがありますが
僕はどこかに目標は設定していないからです。

とは言え、なぜそうなっていったかは言語化できます。

漆器を作る素晴らしい技術や文化もそうですが
もっというとそれに携わる方々に惚れたからです。

そしてその僕が惚れたくらいの熱量で買い手に届いていないということが
どうにも納得できなかった。

続けるうち、僕がその熱量を伝えるためにその場その場で何をするか。
その選択をしていかなければいけないなと感じるようになりました。

もちろん、自身でも製作はしますが
それだけにはこだわりません。
僕自身が直接やり取りすれば価格のコントロールもできるので
むしろ人に振ってもいわゆる下請けでやっているよりも割の良い値段の
仕事として産地にお金を落とすことができます。
また、若い独立仕立ての職人を下から支えることもできます。
実際に現在はうちのオリジナルのBASEシリーズは一部を除いて
若い職人達や産地の塗師さんに製作をお願いしています。

僕個人は自分で全てを作らなくてもいいと考えています。

自分が作ることでより良くなるのであれば作るし,
僕が手を動かさない方が良いのであれば僕は作らない。

優先すべきは漆器がしっかりとお客さんの所に正しい知識と共に届くことです。

元々、この木工という業界に入った当初は全部自分で作らなければいけない。
外注なんておかしいなど
ガチガチのクラフト原理主義だったわけですが随分と変わったものです。

さて現在。
独立して6年経ちました。
当然のようにそもそも1人ですので
徐々に僕自身の露出も増えていき作家的な扱われ方をするような場面も
増えてきました。
ここは僕自身のパーソナルな特徴や工芸という分野によるところも
大きいのですが
独立当初はあまり想定していなかったのが本音です。

これからは上記に書いた立ち位置以外にも
個人名義で何かを発表することも徐々にですが考え始めています。

なぜならそれがマクロで考えた時に上記のこと全てを押し上げることに
繋がるのではないかと感じているからです。

酒井の名がもっと売れれば
全体が潤うことに繋がるのではないか。

もしかしたらすごく強欲でゴリゴリに何か高みを目指しているように写るかもしれませんが僕に会ったことがある人はそうは思わないでしょう笑

とにかくサボり癖のある
だらしない人間なのですが
「唯一、人だけは裏切れないないなぁ」という一点のみで僕は動きます。
綺麗事のように聞こえるかもしれないですが
これは本心そう思っています。
そこ一点がなければもうずっと前に白旗を上げています。
だってしんどいからね笑

これはずっと変わらないのだろうなと思っています。
もう、これはしょうがない。
諦めですね。
きっとこういう奴は儲からない。
なのでこんなやり方はお勧めはしません笑

ではまた。

2020/7/5 ろくろ舎 酒井義夫













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