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透明の色 【とはずがたり】

大学生の頃は心理学を専攻していた。
希望していた教授のゼミに難関を突破して入り、それなりに真面目な学生をしていたつもりだ(卒論時期に半年くらいゼミをサボって失踪疑惑がたってたような…)。

心理学は好きだった。でも、本当は気付いていた。
自分が心理学の方面に致命的に向いていないことくらい。

私が心理学に、特に”他人の心”に執着した理由は
「視えない他人の心を知ることで、他人を出し抜いてやりたい。負かしてやりたい」
というなんとも可愛くない理由だった。
でも、それは逆を言うと
「自分を他人から守りたい。もう傷つきたくない」
という自己防衛の気持ちもあったと思う。

いずれにせよ、私は心理学の知識や論文へはかなりの強い興味があったが、他人にも自分にも致命的に興味が持てなかった。

「可愛げのない女だ」そう思われても仕方ない。でも、言い訳位聞いて欲しい。
私が物心つくころには、視える世界はずっと薄いベールに包まれていて、自分の感情や気持ちはどこか遠い場所にあって、上手に周囲の雰囲気に合わせた感情をわざわざどこか遠くにもらいにいかないといけないようなイメージだった。
当時医者にかかればそれなりの病名がついたかもしれない。
でも、そんなことやっている余裕はなかった。
一日でも、例え一時間でも早く、私は実家から逃げないといけなかったからだ。
何らかの病名や障害名がついてしまったが最後、過干渉の実家は私を外には出さないだろうから。

その後、私は大学を出て就職。
社会人3か月目からあちこち原因不明の症状が出はじめて、特定疾患の難病宣言をされたり、「貴女は典型的なうつ病ですが、自覚はないんですか?」とあっさりうつ病認定されたり、休職したり、夜間の専門学校に通ってその時の同級生に片思いをしてお金を貢いだり、失恋したり、もう人生終わりにしようと首をくくろうと思った時に「最後にイイ思いしようぜ」と思い立ちレズ風俗のキャストのお姉さんに抱きついて大泣きしたり、ビアンバーデビューしたり、そうこうしているうちに占いのイベントを開いたり、職種を知ったら絶対にみんな引き留めるであろう仕事をあっさり辞めたり。
…そして今の私がいる。

私は今、数か月に一度さる御方(カウンセラー)を訪ねて京都に通っている。
大学時代、あんなに興味がもてなかった自分自身や他人の気持ちをやっと考えるようになった。

ことあるごとに言っていることだけれど、私はバラバラの感情やバラバラの性別や人格が寄せ集めで出来ている。
誰にでも二面性はある。それは分かる。
でも、私の中にはいくつもの主義主張がいくつもあって、それが場面や相手を選んで出てくる。(関係なく出てきてしまうこともあるけど)

好きなファッションが日々違う(服のカタログは日にちを変えて読み直さないと全部選べない)(実は男装したい)。
一人称が「私」か「おれ」のどっちかになる。何故か「僕」とは言わない。
その時により話し方(口調)が違う。
占い中の記憶を覚えていられない。また、占い中のROKUJOの様子が変わる。
記憶が途切れることもある(まれ)。
その日によって出来ることと出来ないことが異なる(中学高校のテスト時期に内面が安定していないと点数ヤバかった)。
…もしかしたら、この他に私自身でも分かっていない変化があるかもしれない。

最近京都に行った時に御方から
「貴女の持つ”バラバラ”は全部合わせると”本当の真ん中”とか”完全な中性”になるんだよね」と言っていただいた。

男性っぽい自分がかなりの数いるのは知っているけど、中性は考えていなかった。

舞台のライト照明みたいだなと思った。
照明の光って全部の色が混ざると透明になる。
何色にも属さず。でも、全ての色が混ざっている。

昨日の夜、「そろそろ髪切りたいなあ…」と鏡を見ながら思った。
案の上、私の中で「切っちゃ嫌ー!パーマかけたいー!」や「スポーツ刈りか坊主で!」という声が上がる

「形から入っても良いかな」
透明な私が選んだのは、ショートカットのツーブロック(隠せるように前髪は切らない)だった。
これなら、女性でも男性でも良いし、世にいる中性の方がやっているのを見たことがある。

「何にでもなれる」

家に帰って洗面所でツーブロックを見ると何故か嬉しくなった。
似合っているかどうかは分からないけど、少なくとも心が満足している。

透明こそが私。
どんな自分にもなれるし、どんな色だって出せる。
でも、何色かでい続けると心がつらくなる。
透明こそが私の普通。

やっと自分が納得できる答えが出た気がした。
一番未来の可能性を感じられる答えだ。

さて。
どうやって透明の色を出していこうか。

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