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エンジンオイルの話ー2

2サイクル用オイル、4サイクル用オイル

またしてもエンジンの構造の違いに関するお話です。
エンジンオイルの話-1で触れた通り、二輪のエンジンと四輪のエンジンではミッションが別体だということに触れました。
ここでは四輪のエンジン構造については触れませんが、2サイクルと4サイクルでもエンジンの構造が違いますのでこれに関してお話したいと思います。
そこから、「何故2サイクル用オイルと4サイクル用の二種類のオイルがあるのか?」 についてお話をしようと思います。

つまり、2サイクルエンジンと4サイクルエンジンではそれぞれに専用のオイルでなければなりません。
その理由は、四輪用と二輪用ではエンジン構造の違いにあるのと同じように、2サイクルと4サイクルでもエンジンの構造に大きな違いがあるからです。
ではどのように違うのか? というところから進めてみます。

2サイクルにはカムシャフトがない

2サイクルエンジンには4サイクルでいうところの「シリンダーヘッド」がありません。
正確には、2サイクルのシリンダーヘッド部には燃焼室があるだけで、カムやカムシャフト、ロッカーアームなどのパーツが存在しないのです。
4サイクルのような吸気バルブもなければ排気バルブも存在しません。
では、燃料となる混合気はどこからシリンダー内に入るのか?

ピストンが下死点から上死点へ向かって動く時に、ピストンの燃焼室側では圧縮行程に入るわけですが、同時にピストンの下にあるクランクケース内は減圧(負圧)されていきます。
すると、クランクケース内は負圧なので、必然的にキャブレターからクランクケース内へ混合気を吸い込むことになります。

ピストンが上死点に達すると、今度は下死点へと向かい始めます。
すると、一度はクランクケース内へ吸気された混合気が、ピストンに押される形でシリンダー壁内の掃気ポートを通ってシリンダー内に入り、同時に燃焼後の排気ガスを排気ポートへと押し出すことでシリンダー内のガスが新しい混合気に入れ替わります。

お気付きだと思いますが、このように2サイクルではクランクケース内に燃料となるガソリンと空気の混ざったガスを溜めておく構造なので、
このガスが他へ逃げてしまわないようクランクケース内を密閉に近い状態にしておかなければいけません。
つまり、4サイクルのようにひとつのクランクケース内でクランクシャフトとギヤやクラッチが同一の室内に格納されてしまうと、混合気をシリンダー内に送ることができなくなってしまいます。

そのような事情から、ミッションやギヤ、クラッチなどが格納されているギヤケースとクランクケースとを完全に仕切り、1つのエンジン内部を2室に分けられているのが2サイクルエンジンです。
これが2サイクル用エンジンオイルと4サイクル用エンジンオイルを使い分けなければいけない理由です。

2サイクルエンジンでオイル交換は何故必要ない?

2サイクルエンジンでは、上述のような燃焼系(シリンダーやピストン、クランクシャフト)の部分にエンジンオイルを使いますが、
別室にある駆動系のミッションやクラッチにはギヤオイルを使います。
ギヤオイルは常にミッションケース内を潤滑していますので、定期的に交換する必要があります。
しかし、エンジンオイルは交換の必要はありません、というかできません。
何故なら、ガソリンと一緒に燃焼し、排気ガスとして排出されてしまうからです。
ですので、2サイクルエンジンではエンジンオイルを交換する代わりに、ある程度走行する都度オイルを補給する必要があるわけです。

機能や性質の違い

2サイクル用エンジンオイルでは、
・シリンダーやクランクシャフトの摺動部の潤滑だけに特化すれば良い
    噛合部の潤滑もクラッチの滑り対策も相応に度外視できる
・オイルポンプで定量のオイルを送り出して用いるので、ある程度粘度の低 
   いオイルであること
   また、4サイクルエンジンと違って常温での粘性、特性を考慮する
   (通常はオイルタンクに蓄えられているものを使うので高温での粘性や粘
    度は考慮しない)  
 ・混合気と一緒に燃焼するため、燃焼後にカーボンなどの発生をできるだけ
    抑える必要がある
・4サイクルエンジンオイルと違い、クラッチの滑り対策をする必要がない
・エンジンオイルはミッションの潤滑ができる構造ではないので、ミッショ
    ン用のオイルが必要

4サイクルエンジンでは、
・走行中は常に高温にさらされている
・摺動部分と嚙合部分の両方について潤滑する機能が必要
・クラッチ板を滑らせないようにする必要がある
・エンジン内部の温度は一定ではないため、低温時、高温時の両方について
   一定の粘度を確保する必要がある

少し雑談

4サイクルオイルの油面、油量を皆さんはどのように管理或いはチェックしているでしょうか?
これを間違えたからと言ってすぐに大変なことになるわけではありませんが、知っておくと便利な知識です。

4サイクルエンジンでは、エンジン内にオイルを循環させる方式が2種類あります。
ひとつはウェットサンプ、もうひとつがドライサンプです。

現在市販されている4サイクルのオートバイでは殆どの車種がウェットサンプの方式を採用されていて、エンジンオイル量をチェックする時には
・給油口にあるキャップについているレべルゲージを使う
・給油口近くにある窓から直接油面レベルを確認する
などの方法が主流のようです。
ウェットサンプでは、オイルパン(エンジンの一番低い部分)に溜めているオイルを循環する方式なので、ある程度エンジンオイルがオイルパンに落ち切った状態で油面をチェックすればほぼ問題はありません。

ドライサンプ方式では、旧車として有名なホンダCB750 Kシリーズ や ヤマハ SR400、SR500で採用されている他、一部のオフロード車でも使われているようです。
ウェットサンプの場合と違い、少し面倒なのは、エンジンオイルを溜める場所、つまり給油する場所はエンジンではなくエンジンとは別体のオイルタンクがあるので、オイル量の確認にはひと手間ふた手間かかることです。
前述のCB750ではサイドカバーを開けるとオイルタンクがあり、そこへ給油しますが R400・500ではガソリンタンク前のフレームに給油口があります。

オイル交換をする時にはドレンボルトを外して古いオイルを抜きますが、エンジンとタンクの両方から抜きます。
さらに、タンクに新しいオイルを入れてから一度エンジンをかけてタンク内のオイルをエンジンへ送ります。
すると、オイルタンク内のオイルはほぼなくなってしまい、オイルはエンジン内部に溜まっている状態になります。
この状態でエンジンを止めてオイル量を計る(オイルタンクにあるレベルゲージで測る)と、殆どの場合オイルタンクは空に近い状態になっています。
ここでオイルを満タンになるまで足してしまうと規定のオイル量よりも多くのオイルを入れてしまう場合があるので注意が必要です。
オイルがタンクからエンジンへまわり、オイルタンクにオイルが戻り、ほぼエンジン内にオイルが行き渡った状態でオイル量をチェックするということが必要です。

まとめ

このように、エンジンの構造や仕組みが違うため、2サイクルエンジン用オイルと4サイクルエンジン用オイルはそれぞれ正しい用途に応じたものを使う必要があるのは記事の中で説明した通りです。

オートバイを大切に長く乗れるようにするためにも、適切なオイルを適切な量で使用しましょう。


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