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記憶という名のアルバム

ツーリングの途中で立ち寄った食堂
テーブルの上に無造作に置かれたわさびふりかけ
ご飯を口に運ぶとわさびの香りがなんとなく嬉しかった

ツーリング先で泊まった宿
目が覚めてカーテンを開けると深い霧が立ち込めていて
宿全体が幻想的な白い世界の中にあった

避暑地を通って
白樺の林を抜けて行くと
急に空気が変わる瞬間がある
皮つなぎを着ていてもそれははっきりわかった
冷たくて少しだけ湿気のある空気の中を
僕はバイクで走っていた

どんなに大勢でツーリングをしても
走っている間は全員が孤独
そりゃぁそうさ、全員が自分の走りに集中している
10台なら10の孤独が
20台なら20の孤独が
ひとつの集団になって走る
孤独の集団でも
連帯感はしっかり
最後尾の奴は左手を上げて後続できていることを
先頭の奴に告げる

先頭を走る奴が左手を出して
手のひらを下に向けて腕を上下にゆっくりと振る
後続にスピードを落とせという合図だ
少しでも早く危険を察知することは
連帯全員を守る

どれもこれも
スマホもない
アクションカメラも存在しない時代のこと
それでもその時の事は映像として記憶に残っている
カッコイイ言い方をすれば
記憶という名のアルバム
今は便利な時代になった
気軽に写真が撮れる
簡単に映像を残せる
何度でも再生できる
そんな時代でも記憶という名のアルバムには
まだまだ映像を残す

次に保存するのはどんな映像になるだろう?

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