見出し画像

戦力外通告は『前向きな撤退』への号砲

[要旨]

元Jリーガーの嵜本さんは、選手を辞めて父親の経営するリユース会社で働いていたとき、汚れた冷蔵庫を安く買い取り、磨いて綺麗な状態にすると、高く売れるという経験をしました。このように、冷蔵庫は人によって安くも高くも見ることができるように、自分の人生も、不幸な出来事と思われた戦力外通告は、自分一人では決断することができなかった、『前向きな撤退』への号砲だったと考えることができるようになったそうです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、バリュエンスホールディングス社長の、嵜本晋輔さんのご著書、「戦力外Jリーガー経営で勝ちにいく-新たな未来を切り拓く『前向きな撤退』の力」を読んで、私が気づいがことについて述べたいと思います。前回は、嵜本さんがサッカー選手を辞め、父親の会社で働くことを決めたとき、サッカー選手に復活できるわずかな確率にかけるよりも、確実に自分が活躍できることを見つける方が妥当であると判断したように、願望に引きずられずに、冷静に判断できるようにすることが大切ということについて説明しました。

嵜本さんは、サッカー選手を辞めたあと、父親の経営するリユース会社で働き始めましたが、その後、ご自身が、かつて、ガンバ大阪で戦力外通告を受けたことについての考え方が変わったということについて述べておられます。「私が父や兄とともに、リユースの仕事をするようになったのは、2004年のサッカーシーズン終了後です。何事にも素直に、謙虚に向き合い、地道にビジネスを学びながら、その中で自分の好きなもの、得意なものを探していく-そう私は心に決めました。

その決意をもって仕事をするようになってから、割合に早い段階で、はっきり気がついたころがあります。それは、ものの価値を決めるのは人であるということ、そして、人によってその価値観は異なるということです。例えば、冷蔵庫について見てみると、私たちは、家庭や店舗で不要になった冷蔵庫を買い取ります。新品同様のものもありますが、時には、何年も使われてきて、内側には食品のシミが残っており、外側にはほこりだらけという場合もあります。そのままでは、タダであげるといわれても、遠慮する人もいそうな冷蔵庫です。

だからこそ、私たちは、新品で買えば数万円はするその冷蔵庫を3,000円程度と、かなり安く仕入れることができたのです。その冷蔵庫をトラックに乗せて持ち帰り、丁寧に洗います。(中略)すると、冷蔵庫を見る人の評価が変わります。そして、タダどころか、私たちが値札に書いた通りに、12,800円を支払って手に入れたいという人が出てくるのです。(中略)そして、このことは(中略)、自らの人生にどう向き合うべきかということについても、深い示唆を与えてくれました。『ある冷蔵庫』を『ある出来事』に置き換えてみれば、どうなるでしょうか?(中略)

この数年の間に自分の身に起きたことについても、あらためてそれをポジティブに評価してみようと思いました。戦力外通告をポジティブにとらえれば、どうなるか、たどり着いたのは、『お前にはもっと向いている世界がある』と背中を押す、新しい分野で一歩を踏み出すための、きっかけだったのではないかという結論でした。(中略)このようにポジティブにに捉えるならば、戦力外通告とは、自分一人では決断することができなかった、『前向きな撤退』への号砲だったのです」(46ページ)

この嵜本さんの考え方は、和田裕美さんが述べておられる、「事実はひとつ、考え方はふたつ」という陽転思考と同じだと思います。また、私も、自分が不幸を感じた時は、それは、中国の古典にある、「人間万事塞翁が馬」のようなものかもしれないと考えるるようにしています。この故事は広く知られていますが、念のためにその内容を書くと、昔、中国の北方に住んでいた塞翁という老人の馬が逃げてしまったけれど、その馬は、数か月後に駿馬をつれて帰ってきた。その後、塞翁の息子が駿馬に乗っていたところ、息子は落馬して骨折した。

その時、隣国と戦乱が起き、多くの若者が徴兵され、戦死したのに、息子は骨折によって兵役を免れていたので、戦死せずに助かったという故事です。このように、飼っていた馬が逃げた、息子が骨折したという不幸は、後からみれば、結果として幸福なことだったということを示唆しています。嵜本さんは、戦力外通告を受けたことは、その時は不幸なことと思いましたが、今では、上場会社の社長となったことからも分かる通り、その戦力外通告は、早い段階でビジネスの世界に足を踏み入れることができるようにしてくれた、「前向きな撤退」への号砲だったわけです。

このように、自分が経験した出来事を、ポジティブに捉えるようにすべきということは、多くの方が分かっていながら、実際には、困難に遭うと、「自分はなんて不幸なのだろう」と考える方(そういう自分も含まれます)は少なくないように思います。でも、一時的に不幸と思われる出来事を、1秒でも早くポジティブに捉えることができるようになれば、嵜本さんのように、若くして成功者になることができると、改めて感じました。

2023/6/28 No.2387

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?