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銀行による『粉飾の後押し』への対処法

[要旨]

希な例ではあるものの、業績があまりよくない会社は、融資を受けている銀行から、「もっと利益が出ているのではないか?」などといった、粉飾の後押しをされることがあります。そのような場合であっても、そのような銀行は、今後、自社を支えることは期待できないので、粉飾をせず、その銀行との取引を解消することが妥当です。

[本文]

日経BPが発行している月刊誌、日経トップリーダーの編集部が出版した、「なぜ倒産-令和・粉飾編-破綻18社に学ぶ失敗の法則」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。「驚くべきことに、中小企業の粉飾決算では、融資先の金融機関が重要な役割を果たしていることがあります。『被害者』の役割ではなく、『粉飾を後押しする』という役割です。

その現場を目撃した関係者は、『クライアントの経営者に付き添って銀行を訪問すると、時折、営業担当者が、粉飾するようにほのめかす場面に出くわす」と話していました。具体的には、融資先が提出した決算書を見て、『もっと利益が出ているのではないですか』といった言葉で、粉飾を促すそうです」(33ページ)このような、不心得な銀行職員は、極めて少数とは思いますが、実際にいると思います。

その理由として考えられることは、(1)銀行側としては、融資額を減らしたくないので、融資相手の会社の業況が下がって欲しくない、(2)融資相手の業績が下がると、債務者格付を下げなければならないことになり、その場合、貸倒引当金を増やすことになる、(3)本来なら、銀行職員が、定性情報など、融資相手の詳細な情報を把握して、融資稟議書を作成し、融資承認を得なければならないのに、銀行職員の力量が低いため、業績を下げさせないことによって、融資承認を得やすくしたいと考える、などがあります。

では、もし、前述のような、「粉飾の後押し」をされたときはどうすればよいでしょうか?勇気のいることですが、可能であれば、その銀行との取引を解消することです。なぜなら、そのような銀行は、もし、会社の業績が隠し切れないくらい悪貨したときは、融資相手を支えようとはせず、すぐに融資を回収しようとすると考えられるからです。

とはいえ、現実的に、すぐに融資取引を解消できないということも多いと思いますので、そのようなときは、辛抱強く、粉飾をせずに取引を継続し、業績を挽回する機会を伺うことをお薦めします。業績が回復すれば、取引を解消する機会が出てきます。ここで、「粉飾の後押し」は、銀行側が悪いのに、融資を受けている側だけが耐えることはおかしいと考える方がほとんどではないかと思います。それはその通りであると私も考えていますが、これについては、次回、説明したいと思います。

2022/7/18 No.2042

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