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全社目標より個々の目標が大事?

[要旨]

大企業の役員たちが組織的な活動ができない理由のひとつは、自分に割り当てあられた目標を達成しさえすればそれでよいという部分最適な考え方をしてしまうことです。しかし、本来は、お互いが協力し合って、組織全体の目標を達成するという、全体最適の考え方を持たなければなりません。そして、そのような考え方を持ってもらえるようにすることは、トップに求められる重要な役割です。

[本文]

今回も、前回に引き続き、エグゼクティブコーチの鈴木義幸さんのご著書、「未来を共創する経営チームをつくる」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、大企業では、優秀な人材が役員に就くものの、その役員たちは組織的な活動を行わないことが多いということを書きました。今回は、役員たちが組織的な活動を行わない原因のひとつについて説明します。

「”チームとしての目標”を達成するかどうかを考えたときに、”個々の目標”にブレークダウンすることがよくあります。ここで、問題が起きます。本来は、チームの目標を達成することが、チームの存在意義であるのに、気が付くと、個々の目標に強く意識がいってしまうのです。例えば、執行役員が自部門の目標ばかりに眼をむけてしまう、というようなことが起こるわけです。チームに5人いたら、5人は、それぞれに割り当てられた責任を果たす、それを足せば、全体の目標は達成できる-という考え方は、考え方としてはあると思うのです。

この考え方で、5人全員が、それぞれの目標を達成できれば問題はないかもしれません。問題は、すべてがうまくいくほど経営環境はやさしくないということです。誰か1人、あるいは2人だけが、目標達成が難しいときにどうするか、他の3人が、『自分は自分の責任を果たしているので、他人の目標未達成は自分の問題ではない』となったら、チームとしての目標は達成できなくなります。これが、実は、多くの重電系企業で起きたこと、そして今も一部で起きていることです」(63ページ)

この鈴木さんが指摘しているような状態は、組織の構成員が、全体最適よりも部分最適を優先するという状態です。そして、部分最適を優先してはいけないということは、多くの方が理解できることであり、大企業の役員になるような人なら理解していないわけはありません。それでも、役員が部分最適を目指すようなことが起きているとすれば、それは会社に強固なセクショナリズムが根付いているからでしょう。

そのセクショナリズムも望ましいものではないということは、誰でも理解できることですが、それをなかなかなくすことができないというのは、組織の中でのいあみ合いなどの感情の問題が起きているからでしょう。したがって、具体的な方法は割愛しますが、組織がうまく機能するには、人の感情の問題を解決することがとても重要です。構成員がいがみ合っている組織より、助け合っている組織の方が、成果は高いということは容易に理解できると思います。そして、そのような組織をつくるには、トップに立つ人が中心になって働きかけなければ、なかなか実現しません。

2022/8/25 No.2080

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