見出し画像

失敗を恐れると事業の改善は進まない

[要旨]

経営コンサルタントの板坂裕治郎さんによれば、板坂さんに事業改善の方法を相談にきても、その後、数か月経っても、それらを実践していない方が多いということです。その理由は、「完璧にやりたい」ということなのだそうですが、それを理由にしていると、時間だけが過ぎ、いつまでも改善は実現しない状態になるということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの板坂裕治郎さんのご著書、「2000人の崖っぷち経営者を再生させた社長の鬼原則」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、板坂さんによれば、業績が改善しない中小企業経営者の方は、居心地の良さを優先し、付き合う人を変えようとしないため、居心地が悪くても自社よりも業績の良い会社の経営者と会うことで、自分自身を変えるきっかけをつかむようにようにしなければならないということを説明しました。

これに続いて、板坂さんは、知識は習得しても、実践しなければ意味がないということについて述べておられます。「人はすごいなと思える人に会うと、よく『あの人にはオーラがある』『実物に会うとオーラが違う』といった言い方をする。あのときの『オーラ』とはなんだろう?私なりの解釈は、過去の人生の中で掴み取ってきた自信からの一挙手一投足。借り物の『知識』ではなく、自分が体験して体に覚えさせた『知恵』から発するものだと考えている。

例えば、2代目社長さんよりも創業社長さんの方がオーラを感じさせる人が断然多い。2代目社長さんたちは、悩んだふりをして勉強しないといけないと思っているいる自分に酔っているところがあるからだ。私のところに相談にやってくる2代目社長さんたちの悩みは真っ当で、こちらの話にもきちんと耳を傾けてくれる。しかし、何か月後かに会っても、相談をして得た知識をまったく実践していない。親から『勉強しろ』『見分を広めろ』と言われ、さまざまな異業種交流会に入って“仲良し倶楽部”を作っているから、知識はどんどんインプットしている。

だが、『知識』のオンパレードで、自ら動くアウトプットをしていないから、体で覚えた『知恵』にはなっていない。行動に移せば、必ず失敗もある。そして、失敗があるから成功があるのだ。こんな簡単なことなのに、なんでみんなは動こうとしないのだろうか?そう思って聞いてみると、動かない社長さんは共通して『せっかく行動に移すんだから、完璧にやりたい、やるからには100点を取りたい』と考えていた。しかし、下手に失敗したくないから、頭の中で考えて『知識』と煮詰めていっても、時間だけが過ぎて機会を失い、知識は闇に葬り去られるだけだ」(223ページ)

知識は学んだだけでは役に立たず、実践しなければ意味がないということは、ほとんどの方がご理解されると思います。ところが、板坂さんがご指摘しておられるように、失敗することを恐れて学んだことを行動せずにいる経営者は多いようです。すなわち、事業が成功することよりも、経営者が行動して失敗したときに、それを批判されることを避けることを優先していると言えます。とはいえ、「完璧にやりたい」と考えている経営者の方の多くは、自分が批判されることを避けようとしているとは考えていないのかもしれません。

でも、スピードが求められる事業活動において、完璧さを目指すという主張は、あまり説得力がありません。そのような主張は表向きの理由で、本当は、自分が失敗したときに批判されたくない、または、自分が失敗すると、自分の能力の低さが露見してしまうので、それを避けたいという恐れを隠そうとしているのだと、私は考えています。ここまで、私は、中小企業経営者の方の多くが、なかなか現状を変えようとしないという批判をしてきました。でも、現状を変えようとしない人は、中小企業経営者の方に限らず、私を含め、立場の異なる人のほとんどは、同様に、なかなか現状を変えようとしません。

ただ、中小企業経営者の方は、従業員やステークホルダーと関わりながら指揮をとって事業を行っているという観点から、その責任は比較的大きいので、「責任逃れ」をすると、その影響も大きくなってしまいます。したがって、経営者の方は、他の人のお手本となるように、現状の改善に積極的にならなければならないと思います。もうひとつお伝えしたいのは、現在、経営環境がきびしく、なかなか思い通りに事業展開をできないと悩んでいる経営者の方は多いと思います。そして、との対策として、うまい方法はないかと、板坂さんのようなコンサルタントの方にご相談されると思います。

ところが、コンサルタントに改善方法を教えてもらったとしても、もし、それらを実践しなければ、前述したように、現状は改善しません。そこで、事業改善に苦心している中小企業の多くは、どのような改善策を行えばよいのかというよりも、まず、教えてもらったことを実践するというだけでも、改善が進むのではないかと、私は考えています。すなわち、業績が改善しない中小企業は、改善方法がわからないのではなく、単に、改善策を実践していないだけということが多いのではないかと、私は考えています。

2024/6/7 No.2732

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?