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わたしはシャンプーマン【エッセイ】創作大賞2024、エッセイ部門


➖わたしはシャンプーマン➖

お客様をお通しする。無駄な話はしない。只々ただただ癒していく……わたしはシャンプーマン。

ただひたすらに、寡黙に、それが正しいという訳ではない。シャンプーマンの中には、お客様とお話しをして会話を楽しむ者もいるだろう。それを否定するわけではない。だが、わたしに言わせればそれは邪道だ。

 シャンプーは「究極の癒し」。自身の爪を極限まで切り詰め、お客様の皮膚を傷付ける事が無いように、細心の注意を払う。

 指の第一関節を曲げて、指の腹の部分で頭皮を擦る。爪は絶対立てるな。手のひらは卵を包み込むように、そう、まるでピアノを弾くように、リズミカルに、絡まる髪の毛を無理にとかさず。プロならば髪が絡まる前に感じろ、プロならば躱わすように指を入れ替える。

「入れ替える」?……入れ替えるというのは素人には分からないだろう。わたしクラスのシャンプーマンがお客様を洗うと髪がもつれて、傷ませる、なんて事はない

 おっと、ちょうどこちらのお客様はなかなかのハイダメージで多毛、それにシャンプーマン泣かせの超ロングだ。ふむ……こちらのお客様の髪はシャンプーの界面活性剤によりギシギシになり、その辺にいるシャンプーマンでは髪に指が通らず、まともにシャンプーなど出来ないだろう。だがわたしは違う。優しく流れる癒しの音楽に合わせる余裕すらある。そして奏でるように頭皮をほぐしていく。

「ンゴッ」っとお客様の鼻が鳴る。ニヤリとついつい笑みが溢れる。これは決して笑っている訳ではない。わたしは決してお客様の事を笑ったりはしない。

 嬉しいのだ。まさにシャンプーマンとして冥利に尽きるとはこの事だ。
 わたしがシャンプーをし、お客様が眠ってしまう。これほど喜ばしい事は無い。
「勝った!」心の中でそう呟き悦に入る。

 シャンプーの世界は奥が深い。わたしですら辿り着けない領域もある。お客様の中には男性を指名する方もいらっしゃる。それは何故か……男性の手は大きく安心感があるのだ。指のチカラも強い。
 だからわたしは考えた。ツボを極めよう。フェイスラインのツボ「神庭」、「曲差」、「がんエン」、「和リョウ」を覚え、頭頂部の「百会ひゃくえ」は優しく、首の「天チュウ」は割としっかり押す。チカラはいらない、軽い体重移動で充分だ。

 泡立った頭皮を優しく、時に強く、お客様の呼吸に合わせる。擦り終わったところへ流れるようにヘッドマッサージ、頭皮を摘むように内側から外に円を描く、慌てずゆっくりと吸ってぇ……吐いてぇ……そう、そういう感じだ。

 だがこれほどまでシャンプーが進化したのもここ二十数年の話だ。美容室に来られるお客様はご存知だろうか、シャンプー台は大きく分けて2種類存在する。1つ目はサイドシャンプー……これは施術するシャンプーマンがお客様の横に立ち、脇の下で抱えるようにシャンプーする、割と初期の施術方法だ。

 初めてシャンプーを教わった頃にこのシャンプー台だったのだが、これは本当にしんどい。
 1日に数十人のシャンプーをした際、腰が悲鳴を上げた。中腰の体勢から腰が麻痺して元の位置に戻らないのだ。ウソでしょ……こんなの毎日続けられるものじゃない、そう思った……だが時代は変わる。

 2つ目のシャンプー台の登場だ。バックシャンプーという腰を痛めたシャンプーマンを救う画期的なアイテム!いや、システム。システム?アイテム?う〜んまぁシステムで。それはサイドシャンプーの頃、お客様のお顔を脇の下に抱える際に、わたしの体臭で不快にさせているのではないかと気を使う必要もない。

 呼吸をする際にもわざわざ顔を背ける必要もない。お客様も顔の前にチラチラと映り込む影を気にする必要もない。まさにウィンウィンなシャンプー台。

 ここからだった……そう、ここからわたしの伝説が始まったのだ。フラットに寝かせるシャンプー台により時代はまさに「極上シャンプー戦国時代」に突入した。

 お客様はわたしのことをこう呼ぶ「ゴッドハンド」と……

 シャンプーを習いたての頃、先輩のお客様のシャンプーはすべてわたしが行った。同期の子の中には頼まれた仕事に対して、露骨に嫌そうな顔をする者もいたが、わたしは違う。
 どれだけ頼まれようと嫌じゃない、ドMなのかと笑う同期もいたがそれは違う。わたしは認められたかった、先輩に?……違う……「お客様」にだ。
 どれだけ恐ろしいお客様に入らせてもらっても「気持ち良かった、ありがとう」と言わせる……言わせるは失礼か、言ってもらえるくらいになりたかった。

 なぜなら……それしか出来ないから

 わたしにはまだそれしか武器がない

 だったら今ある武器でわたしの存在を、価値を示そう。

 そう思い、月に500人はシャンプーさせてもらえただろうか……半年経った頃には3000回は繰り返した動作、もう目を瞑ってでも手を伸ばせばそこに何があるか分かる。わたしのテリトリー……

 今やわたしはシャンプーマンとして悟りの境地にいる

➖結局、わたしの存在って?➖

わたしというシャンプーマンの存在ってなんだろう?
学校を卒業して就職すると、先輩からスタイリストはお客様を輝かせる黒子だと教わった。
 じゃあ、シャンプーマンは?そのスタイリストを引き立たせる黒子?そう考えるとなんか切ない……黒子の黒子は何なの?

 スタイリストによっては、シャンプーマンをぞんざいに扱う者もいる。「ふざけんな!」心の中でそう叫ぶ。
 もちろんそうじゃない仏のようなスタイリストもいるのだが、わたしが直接付いてるスタイリストは前者だ。付いているって分かりますか?直接的な上司みたいな感じですね。基本的には技術もそのスタイリストに教わってます。

 シャンプーマンの仕事はお客様がスタイリストの仕事というメインディッシュを頂く前の前菜?技術を教わっている身としては肩身は狭いが、お互いリスペクトってもんがあるでしょ!っていうかリスペクトさせろ!リスペクト出来ねぇんだよ!……失礼。でも本当にそういうスタイリストはいる。どこの職場にもいるでしょ?……そう、そんな感じです。

「お前さぁ、シャンプーで指名入ってるけど、このお客さんは俺の客だからぁ!お客さんに余計な知識を吹き込んでるのお前だろぉ?いろいろ質問されるんだわ!面倒だから余計な事言うなよ」……ハァ!?なんじゃそりゃ!ふざけんなよ!っとまたまた失礼しました。もちろんそんな事は言えない。っていうか「お客さん」ってなんだ!「お客様」だバカやろ〜……とも言えない。だってわたしは「シャンプーマン」だから。

「あんたを輝かせてんの、わたしなんだけど!それにあんたの説明不足も補ってるのもわたしなんだけど!」とまたも心の中で叫ぶ……はっ!?そうか……黒子の黒子は、太陽か?影ではなく照らす太陽!

 お客様を人間だと例える、いや例えるというか人間なんで例える必要は無いが、とにかく例える。
 スタイリストはお客様を綺麗に見せるために努力する黒子……だよね。ふん、あんたのようなスタイリストは所詮黒子だ。だけどわたしは違う……わたしは「太陽」。なぜならどちらも照らすから、やばい、そう考えたらわたしって凄くね。でもそんな事言ってくれる人、誰もいなくね?

「太陽」……太陽といえばわたしの手は「太陽の手」って呼ばれてる。どういうこと?と思うでしょ。これはどうやら手が温かい人の事らしい。まさにマッサージに適した手、との事だ。語源は昔あったアニメでパン職人に適してるとかなんとか……ってオーナーが言っていた。だからマッサージの才能もあるらしい。ん?口の上手いオーナーがわたしの事を丸め込んでないか?うん……まあいいか、褒められてる事には変わりはない。

 ああ……自己満足、ふと我に返るとそんな風に思う。シャンプーマンとして極めつつあるわたしですら思うのだ。わたしの下にも数名のシャンプーマン達が存在する。はっきり言って、まだまだだ。全てのお客様を任せることは出来ない。
 果たしてこの子達はわたしの意志を継いでくれているのだろうか?何を思い、お客様の髪の毛を洗っているのだろうか?
気になる、気になるがこういうことは今の時代聞くもんじゃない。繊細なんで辞められても困る。いろいろと厳しい世の中ですから。

ふふ、しかしかれこれ一年以上シャンプーをしているわたしは、どんなスタイリストになるのだろう。きっとシャンプーマンを大切にするスタイリストになるに違いない……ああ楽しみ……あれ?同期はもうシャンプーしてなくね?

 待て待て、わたしがごちゃごちゃ考えている間にけっこう先越されてね?
 でも同期が付いてるスタイリストは甘いんだよ!それが原因。まだ入って間もない子達にシャンプーをさせて同期にはもう次の仕事を任せてる。シャンプー舐めんな!そんな事じゃ、きっとこの先身を滅ぼす事になる……って誰かが言っていたような気がする。

そうだ、シャンプーを疎かにするとダメなんだ!先生が言っていた……はっ!先生?……大先生だ

 最近の美容室の世界では、スタイリストの事を「先生」なんて言わないよね。昔はよくお客様から「先生」なんて呼ばれていたらしい。
 それで、さらにその上の人を「大先生」なんて呼んでいたそうだ。うちで言うところのオーナーがそうなのかな?まあとにかく美容師にも縦のつながりは存在する。
 講習に参加した時に長老のような「大先生」に声を掛けてもらえた。わたしからすれば雲の上の存在、そんな人だ……カラー講習に参加した際のシャンプーマンとして参加した時だった。もちろんメインはカラーリングなので、シャンプーなんて二の次……だがわたしは違うね。こんなとこでも全力出しちゃうもんね!
 カラーモデルで来てくださったお客様も寝かせちゃうもんね。まあ、プライド?ってやつかな。

 もちろんスタイリスト達に罵られるよね。長ぇだウゼェだ言われるよね。まあ無視だよね、だってわたしはあの言葉が欲しい……「気持ち良かった」……キタァ……あぁ嬉しい……わたしがお客様を癒して、わたしも癒される。

 スタイリスト達がぶつぶつと文句を言ったり、白い目で見たりする中、「大先生」が声を掛けてくれた

「あなた、とても素晴らしいモノを持っているわね……シャンプーを制する者は美容を制す!その事を忘れないでね」そんな言葉を頂いた事を思い出した。

 うむ、ボクシングやどっかの名作バスケ漫画で聞いたようなフレーズ……泣けた、泣けたよ、あん時は。鳥肌が立ったよ、「大先生、わたし、シャンプーしたいです」って今にも言いそうだったよ。
 でも、そうだった。わたしはこの言葉を伝えていかなくちゃいけない。これからのシャンプーマンのためにも自分自身のためにも……

➖上位のシャンプーマン➖

お客様が求めるもの。それはお客様の数だけ存在する。なんかカッコいい台詞のようだが、それを瞬時に察知する能力を、わたしは持っている。

 急ぎのお客様にはもちろん、最速で施術をするし、「最近眠れなくて……」とお客様がポロリとこぼした、スタイリストとの会話を、事前に入手し、じゅるりとヨダレを垂らす。本当に垂らしてる訳ではない。
 ただ気合いが入るというか……わたしが眠らせたい!わたしにお任せくださいと思ってしまう。

 事前に入手する情報も、わたしクラスになれば聖徳太子さながら、店中の会話を聴き取れる。
 ふふ、気持ち悪いと思うでしょ。でもこれが上位「シャンプーマン」の必須能力なのだよ。

そういった事を誰に言われるでもなく出来る人間は、どれくらいいるのだろう。教えようと思ってもなかなか教えられるものでもないはず。

 しかもお客様の寝息に喜びを覚えるなんて、キモッ!とか思われないだろうか。お客様からすると、どうですか?わたしはやはりキモいでしょうか?……そうですよね、そんな事ないですよね。
ありがとうございます、気を使って頂いて、ぜひ一度わたしのテクニックで、極上の眠りを提供させて頂きます。

 すみません、脱線しましたが、眠れないお客様はよく来られます。おそらく自律神経ですね、お任せください。

神庭しんてい」と「百会ひゃくえ」で自律神経の副交感神経を優位にして、脳をリラックスさせる。あくまで優しくゆっくりとメロディに乗せて、己の存在すら石ころのように消していく。

 するとどうだろう、不眠症で悩んでいると言われていたお客様が、「フガッ」……ふぅ……この瞬間のためにわたしは「シャンプーマン」をしている。

相変わらずのようだがニマニマと笑みが溢れる。ゾクゾクする。化学薬品を使っても眠れないと言われてたお客様が、わたしのシャンプーで眠りについた。
 ああ、癒したい。たくさん癒して、癒されたい。最近少し変態っぽいかもしれない、少し?うん、まぁ少しでしょ。

 ホットタオルを使い首筋と耳の後ろを温める。耳……駆け出しのシャンプーマンは気をつけて欲しい。わたしがまだ駆け出しの頃、お客様の耳にそっと触れてしまったのだ。「ンフッ」、――!変な声を出させてしまった。あの時は気まずかったなぁ……って本当に申し訳ございません。以後気をつけています。

 そうなのだ、敏感なお客様はいらっしゃる。あの日の経験を経て、上位のシャンプーマンとなったわたしであれば、もう、くすぐったいなんて言わせない!言う間を与えない。駆け出しのシャンプーマンは耳が敏感だからと、そっと触れるのが良くないのだ。グッとしてギュッだ。
 分かるだろうか?……耳でない部分にも圧をかけつつ、グッとしてギュッなのだ!イメージだイメージでいける。

 お客様は耳を触れられた事に気付いてないのだよ。触れられた事にも気付いていない。切られた事にも気付いていない!ってあのイメージ。
 そんなアホなと思うでしょ。でもこれが案外気付かない。

 人間は視覚からの情報が80%以上で触覚は1.5%らしい。つまりシャンプー台という環境では、お客様の五感は、ほぼわたしのさじ加減ということ。

 特にここ最近の美容室のシャンプー台は個室になっており、環境的にもう寝て下さいっていう環境なのだ。お店にもよるけど……
 つまりシャンプー台でのわたしは、生まれたての赤子をあやす母のようにお客様に接することが出来るということなのだ……ふぅ、これ以上言うと本当に気持ち悪くなるから、この話はここまでにしましょう。

 さぁ、起こします。言って頂けるかな?あの台詞……しかも今回は「気持ち良かった」に付け加え「寝てたわ」と言ってくださるかもしれない。

 ドキドキ、あぁどうだったかな、わたしのシャンプー、もちろん催促はしませんよ。言って欲しいけど、そんなモノ欲しそうな顔はしません。

「あぁ、気持ち良かった。ありがとう!寝そうだったわ!」
ん?なん……ですと!寝そうだった……寝そう……いやいや完全に寝てました。常に頭を持ち上げているわたし達シャンプーマンには分かるのです。
 頭の重さ、安定感でお客様が、落ちているか落ちていないか分かるのです。
 うう……聞きたかった……お陰でよく眠れたわ、って聞きたかった。とまぁ、こういう事はよくあります。

 寝ていたのに寝そうだった……これめちゃくちゃよく言われます。こういう時のお客様の心理状態は正直言って、わたしクラスでも分かりません。

 寝ていたことに気付いてないのか?それとも寝ていたことを恥ずかしいと感じ、寝ていなかったとおっしゃっているのかは分からないのです。

 失礼にあたるから聞くわけにはいきませんから……どうでしょう?皆さんは経験ありますか?
 ふむふむ、なるほど、そうですね。野暮でしてた。わたしは知らず知らず、お客様に依存をしていたようです。シャンプーマンたるもの野暮は出来ません。

 洗練されたシャンプーマンにはまだまだ届かない汚れたわたしですが、今もまたお客様に喜んで頂くべく精進して参ります。

➖シャンプーマン冥利に尽きる➖

 シャンプー指名をたくさん頂いている上位「シャンプーマン」のわたしですが、スタイリストの中には怪訝に感じている者もいる。

 わたしクラスになれば、お客様から相談や質問を受けるのです。そう、スタイリスト以上に信頼してくださっているのでしょう、たぶん、おそらく……

 で、それを良く思わないスタイリストは言うよねぇ「お前ってずっとそれでいいの?」……は?どういう意味?ずっとシャンプーマンなのかってこと?わたしって邪魔ってこと?嫌味?アンタ支えてんのわたしなんだけど、さっさとスタイリストになれってこと?

 いやぁ、ウザいでしょうねぇ、わたしはアンタよりたしかに技術は無いけど、知識はあるからねぇ。お客様もわたしを頼るよねぇ、これがシャンプーマンとして高みに至った者の悩み。

 ドラマでよく見るお医者さんにとってのベテラン看護師長みたいな感じかな?スタイリストとお客様に挟まれるわたし、どっちを取るかって?ふふ、当然、お客様……と言いたいところだが……両方……と答えるね。

 うちのスタイリストもわたしにイラついてはいるんでしょうけど、きっと、絶対、感謝もしてるんだよ、たぶん、おそらく……

 はけ口?みたいなもんかな。美容室によってはチームを組んでるから、スタイリストのイライラを受け止めるのも、わたしの仕事ってやつだね。

 まぁもちろん、わたしはシャンプーマンなんで逆らいません。どう対応するか……ふふ、転がせますよ、手のひらでね。

特に男性のスタイリストは簡単に、え?オンナを使う?いえいえ、わたしにそんな色気はございません。じゃあどうするか?簡単なこと。お客様の前でスタイリストの「技術」を褒める。それだけ。

 ククク、男性スタイリストは基本的に技術者が多い。だからその「技術」を褒めるだけ。そうしたらコロッと機嫌が良くなり、お客様も喜んでくださる。

 簡単、簡単、「⚪︎⚪︎さんのカットって本当に上手なんですよねぇ!⚪︎⚪︎様もとっても似合ってて可愛いですよぉ」……これだけ……たったこれだけですべて解決。もちろん目標のスタイリストに聞こえるように。

 腹黒って思いました?そうなんです。わたしは腹黒女なんです。これでお店の空気や相手の態度が変わっていくことを実感するのも好きなんですよ。なんか変態っぽいけど快感なんですよ、クク……失礼。

 これで何者にも邪魔されずに癒しを提供出来るうえ、お客様のご質問を気兼ねなくお答え出来る。

「ヘッドスパとシャンプーってどう違うの?」……これ、めちゃくちゃよく聞かれます。ヘッドスパとシャンプー……これは施術的には、ほとんど変わらない。

 何が違うのか、スパ用のオイルを使っているかいないかだけ。つまりわたしクラスのシャンプーマンがシャンプーすればそれはもう「ヘッドスパ」と言ってもいいでしょう!は?どういうこと?ってなりますよね。

オイルは頭皮の油分をコントロールして保湿しているだけです。だけって言ったら怒られますね。乾燥によるフケなどを防ぐ効果もあります。香りもいいですしね。

 よって結論言いますよ。わたしクラスのシャンプーマンが毎回シャンプーしてくれているのであれば……保湿以外はシャンプーと同じ……です

 ふふ、ついつい語ってしましたが。営業妨害ですね。そうなんです、上位「シャンプーマン」が行うシャンプーは「ヘッドスパ」に匹敵する……です。

 ん?来られましたかね。わたしを指名してくださるお客様が。メニューは「ヘッドスパ」です。

 わたしはシャンプーマンですのでカットは出来ません。しかし予約表に……わたしの名前の欄にお客様の名前が……載るのですよ!しかもご指名。ククク、カットの時は誰も指名されないお客様が、ヘッドスパを指名する。

 これ、めちゃくちゃ優越感ですよ。スタイリストですら心を掴めなかったお客様の心を掴む……ヤバくないですか?ヤバいですよね!あぁ誰か褒めてくれないですか?当然わたしは舞い上がりますよ、有頂天ですよ。でも表には出しません、冷静です。

 だからスンッです、スンッ。スンッと平気なふりしてます。わたしには先輩もいる、後輩もいる、カッコつけてスンッと平静を装ってます。

 ご指名だからと言って特別扱いは致しません。いつも通りに全力で施術をさせていただくだけです。

 お店のコンセプトにもよりますが、うちのヘッドスパはシャンプー台を倒す前にオイルをつける。そこであらかじめ頭皮全体をほぐす。お客様との距離感、近過ぎず離れ過ぎず……一度お客様に触れると施術が完了するまで指を離してはならない。

 お客様が「ん?終わったの?」と勘違いをさせてはならないから、常に触れていること、動き続けること。止めてはならない、止める時は次の施術に入る時だけだ。

 流れるように……川を流れる木の葉のように流すのだ。そう、そういう感じに血流を意識して……わたし自身の息遣いが決してお客様に悟られないように……そう……そうです、そんな感じ。

 ほぐれてきましたね。あとはいつものシャンプーですよ。多少のペースは違っても工程はほぼ変わらない。これが「ヘッドスパ」です。

 全ての施術が完了しました。お客様への癒しがわたしの癒し……「あぁ、もうこのまま寝かせてて、私を起こさないで」……ふぅ、最上のお言葉を頂きました。

 何度も言うがシャンプーマン冥利に尽きる



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