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【読書感想文】宮島未奈/成瀬は天下を取りにいく

**ネタバレを含みます**
著者はこれが初の単行本らしい。しかも、京都大学の卒業ということで、自身の体験も含まれているのかな。

涼宮ハルヒの憂鬱を初めて読んだ時の感覚に似ていた。変わっているけど凛として自分の意志を持っている成瀬あかりを、幼馴染の島崎みゆきの目線で見ていく。
と、思いきや、島崎だけでなく他の人間の目線でも見ていく。そして一つのエピソードごとに数カ月から1年経過していくので、彼女の歴史を知ることが出来る気がする。何より、コロナ禍での話となるので数年後に読んだときに時代背景がわかっていいと思う。

僕は滋賀について、昔3カ月に1回ほど出張で行っていたので膳所という街も電車で通っていた。そういう意味だと親近感の湧く内容だった。

地元のデパートが閉店する、というのは寂しいが、そのために思い出を作るというのもなかなか行動できない。それに、その場所にまたデパートを立てたいと本気で思っているところも面白い。
「ゼゼカラ」という名前でM-1グランプリの予選に出た時も「一生『M-1グランプリ』に出たと言えるようになったな」と言って見たり、いちいち格好いい。

一つ不満があって、他の人のレビューでも書いてあるが、もっと島崎とのやり取りが見たかった。次作も色んな人の目線で成瀬の様子が描かれるが、やっぱり島崎を軸にしてほしい、というのは、涼宮ハルヒを重ねるからなのだろうか。

だが最後とてもよかったのが、成瀬の目線で語られるシーンだった。島崎が大学進学と共に家族で東京に引っ越してしまう、という中で、合格確実だと言われていた京大の問題が解けなくなってしまったり、心身のバランスを崩した。こういう人でも、友達がどこかへ行ってしまうと寂しいんだな、というのでジーンときた。
結局引っ越すだけで彼女たちのコンビ「ゼゼカラ」は解散しないのだが。

さくさく読めるので続編もすぐに買ってしまった。また後日感想書く予定。

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