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麻雀ファンにUnlucky Morpheusをプレゼンするnote

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10月1日、豊洲PITで行われたUnlucky Morpheusのワンマンライヴに行ってきました。本来であればキャパ3000くらいあるという大箱で、ステージをフルに使ったバカテク集団(※)の大迫力パフォーマンスを十分に堪能させていただきました。めっちゃ良かったです。

※バカテク・・・極めて高いスキルを持つミュージシャンを称する褒め言葉

このnoteを読んでいる方は麻雀ファンが多く、Unlucky MorpheusについてはMリーグをテーマにした「Top of the "M"」「"M" Revolution」の2曲で知った方が大半だと思います。感謝の意味を込め、会場でもらえたポジティブなエネルギーの一部を使って、「Unlucky Morpheusのここが魅力!」を、元バンドマンの僕がプレゼンしてみます。

音楽性

ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、メタルの細分化を表す言葉はジャンルの規模にしては異常なくらいあります。一般の方は「ヘヴィメタル」くらいしか耳馴染みがないかと思いますが、主流ジャンルでも「スラッシュ」「パワー」「ジャーマン」「デス」などがあり、そこから掘り下げていくと枚挙にいとまがありません。いちいち挙げていられないし本題から大きくそれるので、興味のある方は調べてみてください。

Unlucky Morpheusも一般的にはメタルに分類される音楽性ではあるのですが、メタラーは結構この音楽性にこだわりを持っている方が多い印象。そこで、Twitterのスペースに参加させていただいた際にご本人にそのことを直接尋ねてみました。

回答は「メロディックメタルバンド」とのこと。実際にUnlucky Morpheusの楽曲はハードな中にきらめく美しいメロディーが大きな特徴となっています。メタルバンドの中にはデスヴォイスなどを多用し(場合によっては何を歌っているか分からないことも・・・)、主旋律よりも演奏を重視するバンドも少なくはないのですが、自信のメロディーを聴かせたいという当人たちの自負が感じられます。

と言っても、メタルをあまり聴かない麻雀ファンの方の場合、どこがフックになるか分からないと思います。そこで、きっかけになりそうなキーワードを僕なりにいくつか挙げてみます。

■メタルファン

何を今さら、という話ではありますが、やはりメタルファンには聴いてほしいバンドです。特に日本のメタル「ジャパメタ」が好きな方であれば、Unlucky Morpheusのツインリードにはテンションが上がるはず。テクニカルなフレーズも多く、音楽を自らプレイする人にはいろいろな発見があると思います。

■ヴィジュアル系ファン

ヴィジュアル系はX JAPANの系譜からメタルの影響を受けたバンドが多く、ヴィジュアル系をよく聴いていた方は共通項を感じるところが見つけられるかもしれません。ちなみに、僕も元々はヴィジュアル系のバンドをやっていました。

■ゲームファン

Unlucky Morpheusは、元々は同人ゲーム「東方プロジェクト」の曲を演奏するバンドだったそうです。実際、ゲーム音楽はファイナルファンタジーや真・女神転生などハードロック・メタルの要素を取り入れたBGMの曲は多いですし、そうした曲を聴いてきた方には、耳に馴染みやすい曲もあるかと思います。

そして、さらに親和性があると思われるのが、悪魔城ドラキュラシリーズ。バイオリンの旋律などを含めたゴシックな雰囲気が好きな人には、Unlucky Morpheusの音楽もきっと刺さると思います。悪魔城ドラキュラと言えば、KONAMIの人気タイトルですね。そしてKONAMIと言えば、そう。

音源

 Unlucky Morpheusは今回のライヴが結成13周年記念ライヴとのこと。僕がやっていたバンドは長く続いて3年くらいだったので、メンバーの加入はあれ、同じメンバーでずっとバンドを続けているのは本当にすごいことだと思います。

その中で数々の音源を出しているわけなのですが、ある時期からオリジナルに変わっていたとのことで、リーダーの紫煉さんも分岐点をこのようにツイートされています。

ここにある「affected」は、2014年にリリースされた1stオリジナルフルアルバムのこと。今から聴く方は「affected」と、以降にリリースされた「Vampir」「CHANGE OF GENERATION」「瀧夜叉姫」「Unfinished」「"M" Revolution」をおさえておけば問題ないかと思います。興味があれば、そこからさらにさかのぼってもいいでしょう。ちなみに「affected」はiTunesだと2020年に配信されたとのことで、僕もさっきまで2020年リリースだと勘違いしていました。

なお、僕が行った今回のライヴと6月に高田馬場で行われたライヴは、冒頭から最新アルバム「Unfinished」の曲を収録順に最後まで演奏し、その後過去曲や新曲をやるという構成でした。

メンバー(楽器陣)

最初に書いた通り、このバンドはテクニシャン集団です。僕がライヴで見たのは2回だけですが、そこで受けた各メンバーの印象など書いていきます。

■紫煉(しれん)ギター・シャウトなど

Unlucky Morpheusのリーダーとして作詞・作曲などを担当、Mリーグをテーマにした「Top of the "M"」「"M" Revolution」はいずれもこの方の手によるものです。ライヴではギターや楽曲のシャウト・デスヴォイスなどを担当するのですが、歌いながらギターを弾く、いわゆる「ギターヴォーカル」ではなく、ギターパートでのみギター演奏をする、という曲が特に近年の曲では多い印象。そのため、ステージには弾きやすい高さにセッティングされたギターが設置されています。もちろんギターはめちゃくちゃうまいです。

また、ギター以外にもいろいろな楽器ができるようで、豊洲のライヴではハーモニカやピアノも演奏していました。もともとは一人で曲を完成させられるマルチな演奏スキルと音楽理論を持ったミュージシャンなので、他にもきっといろいろなことができるのだと思います。

ちなみに以前取材でお会いしたときは、元X JAPANのギタリスト・hideの立ちあげたブランドである「LEMONed」のジャージを着ていました。僕もガッツリ通ってきた道で、音楽のバックボーンに共通点を見つけられたことをうれしく思った記憶があります。

1点、紫煉さんは「スタインバーガー」というヘッドがないギターを愛用しています。メタル系のギタリストでは非常に珍しい印象があるのですが、何かこだわりがあるのか、機会があれば聞いてみたいところです。

※ご本人から訂正がありました。「スタインバーガー」ではなく、「ストランドバーグ」というギターだそうです。大変失礼致しました。

■仁耶(じんや) ギター

リーダーでギタリストの紫煉さんがライヴでギターを弾く場面があまり多くない中、ライヴ全般でバンドのギターサウンドを支えているのが仁耶さんです。こちらももちろん高いスキルを持ったギタリストで、特にライヴで注目していただきたいのが、ソロパートで紫煉さん、ヴァイオリンのJillさんと共に繰り出すツインリード。ツインリードは異なる二つのギターなどが同時にソロなどを弾いてハモる演奏手法で、特にメタルの世界ではよく見られます。お互いの息や演奏レベルが合っていないと非常にかっこ悪くなってしまいますが、仁耶さんはこれを完璧に合わせ、美しいソロを成立させてくれます。ライヴ中はあまりしゃべらないようですが、ギター職人って感じでかっこいいです。

■小川洋行(おがわひろゆき) ベース

一人だけ普通の日本人すぎるステージネームである小川さん。バンドとかに触ってこなかった人はあまりベースを聴くイメージがないのかもしれませんが、ライヴで生の演奏を聴くと、どっしりと構えて重低音で演奏を支えるベースの存在がバンドに必要不可欠なことが分かるはず。2回のライヴでも、ゴリゴリの低音で骨太なサウンドを支えていました。基本は2本指のフィンガーピッキングでトリッキーなプレイはあまりなかったと記憶していますが、もちろんそれをできるだけの技術はありますし、ソロではメタルとは雰囲気の違うテクニカルな演奏を聴かせてくれていました。引き出しもめちゃくちゃ多そうです。

ライヴではフロントの2人の次にMCをする印象。直接話したことはありませんが、結構ユニークなお人柄だと推察します。

■FUMIYA ドラム

メロディックメタルバンドの「メタル」の部分を特に担っているのがこの方だと思います。いくら演奏がテクニカルでも、ハードなドラムこそがメタルの根幹だと思うからです。体に響くツーバス、どんだけあるんだというタムを見事に叩きこなす手数、そしてパワー。まさにメタルドラマー!って感じです。ドラムソロとか、バンドをあまり見ない人にこそ一度見て、というか聴いて、いや、感じていただきたい。

個人的に好きなのが、「Unfinished」に収録されている「籠の鳥」という曲のサビの裏で、テクニカルなフレーズを叩いているところ。ああいうのって凝りすぎると歌やメロディーと食い合っちゃいかねないと思うんですけど、バランスが絶妙だなと。ただ手数が多いだけじゃなく、楽曲全体の土台をしっかり支えている素晴らしいドラマーだなと感じました。

■Jill ヴァイオリン

FUMIYAさんが「メロディックメタル」の「メタル」を支えているなら、「メロディック」の部分で多大な貢献を果たしているのがJillさんだと思います。ポジションは通常のバンドならリードギターが立つ位置である上手(観客から見て一番右)。そこで楽曲を彩る数々のフレーズを奏でてくれます。前述の仁耶さんとの、ヴァイオリンとギターで繰り出すツインリードは、このバンドならではの武器ではないでしょうか。

ロックやメタルのバンドでストリングスが入る曲は結構多いと思いますけど、正式メンバーになっているヴァイオリニストって、パッと出てくるのはSUGIZO(LUNA SEA/X JAPAN)くらいなんですよね。SUGIZOもメインはギターだし。たぶん僕が知らないだけで、そういう活動をされている方はたくさんいらっしゃると思いますけどね。

ちなみに、紫煉さんを除く4人は今年、「QUADRATUM From Unlucky Morpheus」としてメタルの名曲などをカバーした「Loud Playing Workshop」というアルバムを出しています。こちらを聴けば、メンバーのバカテクっぷりが伝わるのではないかと思います。

衝撃を受けたヴォーカル・Fuki

僕はバンドをやっていた頃、ヴォーカルを担当していました。ですから、ライヴに行くときは必然的にヴォーカルに最も注目します。というわけでFukiさんについては、別枠で書かせていただくことにしました。

ヴォーカルって自分の体がそのまま楽器になるので、もちろん訓練で質は高められるにせよ、天性の部分によるところが結構大きいと思うんですよね。特に声質とか。一方で最近ではテクノロジーの進化もあって、声を加工するのはもちろん、ズレた音程を直すなんていうこともできるので、やはりライヴで生の歌声を聴くのが、ヴォーカルを知るには一番だと思っています。

なので、ライヴではFukiさんの歌声はすごく楽しみでした。どんな歌声を聴かせてくれるのだろうと。

僕が初めて見た今年6月の高田馬場でのライヴでも、「Unfinished」を頭から演奏しました。表題曲となっている1曲目「Unfinished」はほぼインストの曲で、ドラムからベース、ヴァイオリン、ギター、シャウト、そしてヴォーカルと、順番に音が入っていく構成になっています。ライヴでメンバー紹介アピールに使うことを考えられた、冒頭にふさわしい曲だと思います。

そこで、最後に入るFukiさんのハイトーンビブラート。生で聴いて、衝撃でした。声の抜け、芯の入り方、ビブラートのかかり方に幅、そして安定感。全てが音源で聴く以上、想像以上に素晴らしかった。そして、そこから本編で見せてくれたパフォーマンスはまさに圧巻でした。なんで動きながらもあんなに高いレベルで安定感抜群の歌が歌えるのかと。

高田馬場でも豊洲でも思ったんですけど、1時間以上歌っていても、全然声がかすれたりよれたりしないんですよね。声質などは生まれもってのものですが、それに加えてものすごい鍛錬をされてきたのだと思います。

あと、どうしても触れたいのが、声量です。

一般の人で、歌がうまいと言われる人はたくさんいます。お風呂場やカラオケなどで自分の歌を自分で聴いて「あれ、俺(私)って歌うまいんじゃない?」と思った経験がある人も少なくはないでしょう。お風呂場はともかく、カラオケボックスは人の歌をうまく聴かせる作りになっています。ボリュームも、歌い手が全てを決められるわけですよね。

そこへ行くと、バンドは違う。各楽器が自分の音をしっかりと作って出しますし、特にハードロック、メタルバンドであればそれは爆音になります。ヴォーカルはそれに負けない声を出さなければなりません。生半可な声では演奏にかき消されて聞こえなくなります。

「だったらボリュームを上げればいいじゃないか」と思う方もいるかもしれません。でも、小さい声を拾おうとしてボリュームを上げると、楽器の音も拾うようになってハウリングを起こすようなことになりかねないんですよね。ボリューム不足を補うテクニックとしてマイクの歌う部分を手で覆い隠す、なんて方法もありますけど、これも同様のリスクがある。だからバンドのヴォーカリストにとって「声量」「声の出し方」は非常に重要な要素になるんです。

そこへ行くとFukiさんは、歌声そのものがパワフルなのはもちろんのこと、おそらくですけど、声をマイクに乗せるスキルが非常に高い。だからバックの轟音に負けない、インパクトのある歌声を出せるのだと思います。僕は歌い手としてその辺に課題を抱えていたので、余計にすごさを感じました。

僕は昔、スウェーデンのメロディックデスメタルバンド「ARCH ENEMY」のライヴに行ったことがあります。そこで女性ヴォーカルのアンジェラ・ゴソウはおへその見えるタンクトップで歌っていたのですが、お腹が仮面ライダーかというくらいバキバキのシックスパックだったことに驚きました。トップクラスのデスメタルシンガーはこうなのかと。

ジャンルは少し違いますが、もしかしたらFukiさんも、バッキバキの腹筋の持ち主なのかも。

最後に

僕は、Unlucky Morpheusの存在自体は「Top of the "M"」の前から知ってはいたのですが、「Top of the "M"」をきっかけに深く聴くようになり、音楽性や演奏に魅了されました。過去の曲を聴いてお気に入りになったものも少なくありません。

そしてやはり、このバンドはライヴで感じてほしい。生のパフォーマンスこそが真骨頂のライヴバンドだと思います。ライヴのMCで話していましたが、「Unfinished」は「未完成」、オーディエンスのコールなどが入って初めて「完成」するのだそうです。その意味では、僕はまだ真のUnlucky Morpheusを見ていないのかもしれません。このバンドの魅力がさらに伝わるためにも、より多くの方がライヴを楽しめる環境が戻ってきてほしいですね。

とまあ、プレゼンすると言っておいてもしかしたらかなり麻雀ファンを置いてけぼりにしてしまったかもしれませんが、これを機にUnlucky Morpheusの曲を聴いていただけると、僕もうれしいなと思います。

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