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🖊️芥川龍之介と夏目漱石と森鴎外 三つ巴カップリング 「あれが森さんかあ」 読んでいいとも

基本同時代人だが、漱石鷗外は殆ど交流がない。


もちろん鷗外漱石は芥川=菊池寛の世代より上で、それぞれバックに大学関係者と新聞社がついているので、文藝春秋や芥川賞の影響は受けていない。

芥川龍之介を夏目漱石が激励

拝啓。新思想のあなたのものと、久米君のものと成瀬君のものを読んで見ました。あなたのものは大変面白いと思います。落着があって、ふざけていなくて、自然そのもののおかしみがおっとり出ている所に上品な趣があります。それから材料が非常に新しいのが目につきます。文章が容量を得てよく整っています。敬服しました。ああいうものをこれから二、三十ならべてごらんなさい。文壇で類のない作家になれます。ただし、「鼻」だけでは恐らく多数の人の目に触れないでしょう。触れてもみんな黙過するでしょう。そんな事に頓着しないでずんずんお進みなさい。群衆は眼中に置かないほうが身の薬です」1916 夏目漱石

恋文かと思うくらいしばらく漱石の爽やかな激励が芥川に向けられる。人物的にやばいやつだとか、ジジイにキレられたとか孫がいうが、文章の透明感は小説でも論文でも書簡でも偉いもんだ漱石は。

芥川が衰弱するのがこの11年後、漱石はこの年にこの世を去る。対する鷗外は漱石の五個上、芥川が衰弱死する5年前に死ぬがおそらく何か引き止めるような影響力はもうなかったはず。以下のエピソードは彼らがこの世をさるもっと前、青春時代の出来事だ。

あれが森さんかあ

 名刺には「森林太郎」とあるだけで、ほかになんにもない。私は名刺をそっと芥川の前におきかえた。芥川の目が名刺と鴎外の顔をみくらべた。と、思った瞬間、するどい緊張感が顔面一面にあふれ、そのひとみは異常な光をはなって鴎外の顔を見つめた。われわれも丁重なあいさつをかえした。だが、それっきり私も芥川もしばらくものを言わなかった。そして、鴎外の後ろ姿がやや遠のいたとき、芥川がはじめて息をはずませてはなしかけた。
---あれが森さんかあ。
---そうだよ。森さんだよ。君、いままでしらなかったのかい。
---うん。はじめてだよ。いい顔をしているな。じつにいい顔だな。
芥川は指をひろげて長い髪の毛をぐっと一つかきあげると、感嘆おくあたわずという風に、何度も同じ言葉をくりかえした。

誰かの葬式のシーンだったかと思うが、調べるのに多少時間がかかるが、ええ描写や。

鴎外については夏目漱石論があるが、鴎外らしいふざけた論文となっている

他に句会かなんかで一緒だったというのが年譜に入ってて、漱石から少し何か書いたので以上なはず。あとは娘さんからの言質となるが、森茉莉は父の鴎外が漱石のこと意識してたんじゃないかと三島由紀夫とのインタビューで答えている。

スター夢の共演みたいな文学話

実篤x森さん

臼井 森鴎外にはご関心はなかったんですか。

武者小路実篤 鴎外にはあんまり好意を持っていなかった。夏目さんの方に好意をもってたものだからね。若いときには片っ方に好意を持つと片っ方はいくらかね・・・。もちろん、鴎外さんの翻訳ものは愛読してるね翻訳では鴎外さんに教わったことは多いけど、鴎外さん自身の垣田モノは読んだことは読んだが・・・。
臼井 行き会ったことはないんですか。

武者小路 いっぺん自然主義に反対の連中が集まって会をしようっていうんで、「スバル」とか「三田文学」とか「新思想」「白樺」とで会合したときがあって、そのとき鴎外さんを初めて見たけど、ただお辞儀しただけで話したことはない。上野の静養軒だったか、ああいうようなところでやった。鴎外さんが来るとみんな非常な尊敬を示していた。ぼくたちはそんなに尊敬もしてなかったけど、丁寧にあいさつはした。鴎外さんの晩年の歴史ものなんか読んで感心したことはあるし、興味を持ったことはある。

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