大雷の厭勝

表題

大雷の厭勝(えんしょう)


概要

天保2年(1831年)の夏、江戸で大きな雷が落ちるという噂が広がった。そのう雷を避けるには胡麻入りの豆腐の味噌汁を食べればよいという噂も同時に広まったため、あちらこちらの家で豆腐の味噌汁を食べている。

訳文

 江府(江戸のこと)の町で、この夏誰が言うともなく近辺に大きな雷が落ちるという噂が流れている。その落雷から逃れるためには、豆腐を味噌汁にして胡麻を加えて食べればよいとも言われていて、江戸の家々では味噌汁を食べている。この夏は例年よりも雷は少ない。一体どこの愚か者が言い出したのだろうか。


 
原文

 江府の市俗、此夏誰いい出せるとなく近きに大雷あらん事を流言す、其災をのがれんには、豆腐を味噌汁にし是へ胡麻を加えて食せよと伝えて家々に喰ふ、此夏は常よりも雷鳴少し、何国のをこの者のいい出たるならんか

出典

『事々録 巻一』天保2年‐嘉永2年(1831年‐1849年)刊(『未刊随筆百種 第3巻』、中央公論社、1976年)


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