1~2年の授業を振り返る①必修科目(音楽学)編

GEIDAI見聞録なんてカテゴリーを作っておきながら学期中ほぼ放置してしまった…。マストじゃない原稿はやはりどうにも進みませんが、見聞録はどう考えたって残しておいたほうがいいと思われるため、1~2年生の間に学んだこと・考えたことをここらでまとめて振り返っておこうかと思います。必修科目(音楽学)編、必修科目(語学&実技)編、選択科目編、一般教養科目編の全4回連載予定。

■必修科目:音楽学編

・西洋音楽史概説【1年通年:良】

古代~現代の西洋の音楽について、それぞれの時代を専門とする4人の先生が持ち回りで講義。「音楽史とは何か」的な授業が多かった2年生を終えた今振り返るとびっくりするほど、一般人が思ういわゆる音楽史の授業という感じだった。さすが概説。新鮮だったのは、私が普通に「クラシック(=古い)」と思っていた音楽が、後期に入ってから教わるくらい、音楽史上は最近のものだったこと。ちょっと不満だったのは、そのクラシックの先生の担当回が永遠のように長く続いて、現代の先生の担当回がたった1回になったこと…。成績評価はレポートで、興味のあるテーマで書いていいとのことだったので、前期はマドリガーレ、後期はライトモチーフで書きました、当然どちらもミュージカルと絡めて。評価が低かったのはしかし、ミュージカルと絡めたせいではなく、出典を明記するなどのアカデミックな書き方ができていなかったためと思われます。あと単純に、内容が浅かったのでしょう(笑)。

・音楽美学概説【1年通年:優】

古代ギリシャから近代までの音楽にまつわる思想を一人の先生が講義。音楽学者の思想もだけど、プラトンとかの普通に有名な哲学者の音楽観まで一人で全部説明できちゃう先生すげーと思いました。音楽観を説明するためには当然その人の基本的な思想も抑えなきゃいけないわけで、受験科目だった倫理のために用語としては覚えてた「イデア論」とかの意味まで初めてちゃんと知れた気がしたり。というわけで授業としてはとても面白くて有意義だったけど、音楽美学というものに対しては、結局のところ音楽がなぜ人の心を動かすのかは2000年前から今まで誰も解明できていないんだね? っていうか哲学者諸君、文章が揃いも揃って独りよがりすぎないかい? という感想を持つに至りました。しかしながら、その感想をレポートに素直にぶつけ、「音楽美学は主観的すぎて私がやりたいことじゃないと分かったので、来年以降は客観的な自然科学系の授業を多く取っていきたい」と結論付けた私に、先生は「いやいや、町田さんのその考えだって美学ですよ」と。やっぱこの先生すげーわと思った次第です。

・音楽理論概説【1年通年:良】

音楽って昔は数学の一種だったくらい実は理系の学問だって、言われても最初はピンと来なかったけど本当にそうだった。どう「本当にそう」なのかをこの授業の前期で教わったわけですが、ワタクシ完全文系脳なんでね…。なんとなく、音には法則があるんだなってことと、その法則をもってしても人間が共和・不協和と感じる原理は説明できないんだなってことくらいしか理解できませんでした。そんな前期を経て、後期はガラッと変わって私の大嫌いな先生による、「音楽とは何か」「音楽とそうじゃない音との境界線はどこか」みたいな抽象的な授業。彼の言っていることはひたすらうざいだけだったけど、彼に勧められて聞いた小泉文夫の昔のラジオ音源だけは面白かったです。要は音楽の起源の話なんだけど、愛を伝えるため説とか軍事的に必要だった説とか色々あって、確かに音楽の起源って言語と同じくらい謎だよなあと。謎すぎて、生まれたばかりの赤ん坊をアダムとイブ状態にして放置観察する、という非人道的な実験がしたくなりました。実際、そうでもしなきゃ分かんないよね。

・日本音楽史概説【2年通年:優】

雅楽、声明、琵琶楽、能・狂言、三味線音楽、筝曲、地歌、尺八音楽、浄瑠璃、歌舞伎、近現代音楽と、日本に存在する音楽をひたっすら誕生したのが早い(であろう)順に辿っていく、付属高校の校長でもある一人の先生による講義。評価がテストだったこともあり、前後期の最後にひととおり復習する感じになったおかげで、一つひとつの流れと特徴はなんとなくつかめたんだけど、広大すぎてとても系図は描けません!という感じ。あと、江戸絵画とかの日本の美術を見るとすごいしっくり来て「私、日本人…!」ってなるのに、少なくとも授業で聴いたり観たりした限り日本の音楽に対してそうはならず、もうちょっと一つひとつの魅力まで分かるというか、先生が熱く語ってくれる授業でも良かったのになと思ったりもした、西洋音楽と違って私以外の学生にもわりと未知の分野だったっぽいし。けどま、知らないことを知りたいという欲は満たされたし、歌舞伎音楽に興味が湧いて長唄やってみよう~とかも思えたから、全体的には良き授業でした。

・東洋音楽史概説【2年通年:優】

東アジア(中国、韓国・朝鮮ほか)、東南アジア(タイ、インドネシアほか)、南アジア(インドほか)、西アジア(イラン系、アラブ系、トルコ系)という広大な範囲の音楽を、習俗から音律まで全部知っている先生がすごすぎた授業。日本音楽史にはそれぞれの専門家が書いた教科書があったけど、この授業にはないんだよ、ただただ一人の先生が自分の知識を元に講義するんだよ。そんでもって最後には、「東洋とは何か」「東洋音楽とは何か」「東洋音楽史とは何か」という哲学的な問いまで投げかけて来て、これは西洋音楽に興味があって入学したはずが途中で東洋を専攻するようになりがちという楽理科あるあるも頷けるというもの。あと、ガムランを実際に演奏してみましょうという回もあり、①ウン百万の楽器に触れた ②最初は無理って思ったけど何回か繰り返すうちにそこそこできるようになった ③芸大生と合奏できた♪ という理由により最高に楽しかったです、先生が感じてほしかったのはおそらく別のことだろうけど(笑)。成績評価は、授業回数の関係により前期がレポートで後期はテスト。レポートは、京劇と歌舞伎の違いを考察する振りして、実際にはその二つとミュージカルの違いを勝手に考えました。楽しかった。

・音楽民族学概説【2年通年:優】

東洋音楽史概説が、東洋の色んな音楽を解説とともに聴かせた末に東洋音楽史とは何かを問うてきたのと対照的に、講義は「音楽民族学とはどういう学問か」にほぼ終始し、世界の色んな音楽についてはサークルなどでやっている学生が時おり発表形式で紹介してくれるだけの授業。音楽学=西洋のクラシック音楽を研究する学問だった19世紀から、だんだん世界の音楽にも対象が広がっていったものの、西洋中心主義からなかなか脱却できなかった、というか今もできてないという「音楽民族学」の歴史を考えると仕方のないことなのだろうし、こういう認識ができたのもこの授業のおかげではあるのだけど、さすがに1年間ずっとそれなのには飽きてしまったな。で、飽きると敵意が湧いて、もういっそ「音楽民族学」のことを「音楽学」と呼ぶことにして、今までの「音楽学」は「西洋音楽学」と正式に名前を改めればいいじゃん!それくらい単純化しないと、世界の音楽の研究なんて永遠に進まないよ!みたいな気持ちに。実際、音楽民族学やってる人のほとんどが西洋音楽を通ってきちゃってる真面目な人なのは多分事実だから、私みたいに何も知らない、過度に柔軟な人の意見に耳を傾けてくれても損はないような気がしますよね、うん。

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