小説・小丸との日々(第2話・雨)

 雨。しかも土砂降り。今日は朝から雨だった。私は雨の日は、ありとあらゆるすべてが調子悪くなる。体も気分も心も髪型も。歯まで痛くなって来た。だから、私は雨は大っ嫌いだった。
「あああっ」
 予約しておいたテレビの録画が録れていなかった。
「楽しみにしていたのに・・」
 楽しみにしていた映画だった。
「うおおおっ」
 パソコンまでがフリーズした。
「もうやだっ」
 私は、パソコンの電源を抜いて、強制終了させた。
「最低だわ・・」
 だが、こんな日に限って、精神科の予約が入っていたりする。私はアパートを出ると、せめて傘ぐらいはと、昔ちょっと高かったけど無理して買った真っ赤な傘をさして、駅前の行きつけの富沢医院に向かった。
「・・・」
 今日も特段なんの救いも回復もなく、診察はあっけなく終わった。所要時間八分。だが、それ以外は、通院と待ち時間合わせて三時間。
「まあ、鬱は長引くから」
 それがにこにこと人柄だけはいい医院長先生の毎回のお言葉だった。
 帰り道も、バスに乗るお金ももったいなくて、駅前の自宅アパートから一・五キロあるその医院から私は雨の中歩いて帰る。
 私の住むアパートは、急坂を上りに上った丘の上にある。帰りは一キロの上りが待っている。
「はあぁ~」
 坂の上を見上げただけでうんざりする。
 バシャッ
「うわっ」
 そこへ、トラックが思いっきり水を跳ね上げた。
「・・・」
 それをもろに全身でかぶってしまう私だった。
「なんだよ。もうぅ~」
 私は叫ぶ。もう、踏んだり蹴ったりだった。
「今日は厄日だわ」
 毎日が厄日みたいなもんだが、今日は特別だった。


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