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知っていますか? エイジフレンドリーガイドライン|気ままに労働雑感

政府は6月21日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太の方針)において、今後の政策の方向性として、「高齢者の労働災害防止のための環境整備の推進」を盛り込みました。厚生労働省では今後、労働政策審議会において本格的な議論を行っていく方針です。

政府が高年齢労働者の災害防止対策を重視する背景には、60歳以上の死傷労働災害件数の大幅な増加があります。

全雇用者に占める60歳以上の労働者数の割合が高まるなか、その上昇割合を上回るペースで、死傷者数全体に占める60歳以上の割合が高まっています。
直近の令和5年をみると、雇用者全体に占める高齢者割合が18.7%であるのに対し、死傷者数に占める割合は29.3%に上っています。
今後さらに高齢化が進めば、死傷者数に占める割合がますます高まる恐れがあります。

60歳以上の男女の労働災害発生率(死傷年千人率)は30代に比べて高く、男性で約2倍、女性で約4倍となっています(2023年)。男性の場合、墜落・転落災害の発生率が、若年者(20代)の3.6倍に上り、女性では、転倒による骨折等の発生率が若年者(同)の15.1倍に達しています。

加えて、年齢が高くなるほど休業見込み期間が長期間に及ぶ傾向もあります。
このため、すでに多くの高年齢労働者を雇用している企業や、今後高年齢労働者が増加する企業においては、貴重な人材が休業することにならないよう、自主的に対策を講じることが重要でしょう。

その際に参考になるのが厚生労働省の「エイジフレンドリーガイドライン」です。同ガイドラインでは、高齢者を使用している事業場や、これから使用する予定の事業場において求められる対策として、(1)安全衛生管理体制の確立、(2)職場環境の改善、(3)高年齢労働者の健康や体力の状況の把握、(4)健康や体力の状況に応じた対応、(5)安全衛生教育――を示しています。
(2)としては、身体機能の低下を補う設備・装置の導入や、高年齢労働者の特性を考慮した作業管理、勤務形態の工夫などが含まれます。

ただ、厚労省のアンケート調査をみると、同ガイドラインの認知度が低く、取組み率も低調であるのが現状です。
令和4年11月に実施した調査では、ガイドラインを「知っている」とした事業場は17.1%と2割未満に留まっており、それに基づく何らかの取組みを行っている事業場はわずか10.6%でした。

企業においてはまず、同ガイドラインをチェックしてみてもらいたいと思います。

エイジフリーガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/001107783.pdf

労働新聞編集長

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