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在職老齢年金めぐりヒートアップ――臨時国会|迷想日誌

開会中の臨時国会で、在職老齢年金の支給調整基準額を引上げまたは完全撤廃するかが、与野党の大きな争点となっていますので、何が問題点なのかを整理したいと思います。

在職老齢年金制度とは、就労により一定以上の賃金を得ている厚生年金受給者について、賃金(ボーナス含む)と年金の合計額が基準額を上回る場合、賃金2に対し、年金1を停止する制度です。

その基準額は、65歳以上の高齢者については、現役男子被保険者の平均月収(ボーナスを含む)を目安として設定した47万円です。
厚労省の見直し案では、この47万円を62万円に引き上げるか、または完全撤廃して調整しないこととするかの2つの選択肢を提示しています。

国会審議では、野党から強烈な批判が表明され、答弁する厚労省もタジタジとなっていて、基準額の完全撤廃については難しいといえます。
野党が批判する問題点は、要するに基準額を62万円に引き上げること、当然、高所得の高齢者に多くの年金が支払われることになりますが、一方でそれ以外の年金を広く薄く減額して財源を確保しようとしていることです。

野党は国会において、高所得者優遇で、しかもわずかな年金を受給している者から財源を得ようとする見直し案であり不公平を増長するものと反対しているわけです。
このため、加藤厚労相は、記者会見で高所得者優遇にならないよう留意すると答えています。
今後、基準額を51万円に下げる案が出るようです。

厚労省の試算では、基準額を62万円に引き上げた場合、年金支給停止額は現在の約4100億円から約1900億円に、支給停止対象者は約41万人から約23万人へ減少するとしています。

とはいえ、厚労省は次期通常国会で70歳までの雇用・就業を念頭に高年法の改正を考えていますので、この年齢層の働き手を増やすには就労に対して中立的な制度が求められます。
年金支給停止のボリュームをより小さくして就労意欲を伸ばそうとする考え方も分かります。
また、50~60万円の賃金が高所得といえるかも疑問です。在職老齢年金制度の行方を見守りたいと思います。

労働新聞編集長 箱田 尊文

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