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成立近し!労働関係改正法案――通常国会

厚生労働省が通常国会に提出中の労働関係法改正案の委員会審議が急ピッチで進んでいますので、お知らせします。
労働基準法改正案と雇用保険法等改正案の2本です。
すでに、労基法改正案は、2日間の審議で衆議院厚労委を通過し、前週に本会議を通過しました。
雇用保険法等改正案は、労基法改正案に引き続き審議が開始されています。両法案ともに3月末には成立の見通しです。

労基法改正案は、賃金請求権の消滅時効について、令和2年4月施行の改正民法と同様に原則として5年に延長しましたが、当分の間3年に短縮すると規定しています。審議では、この点が大きな争点となりました。
野党側は、初めから5年にできないのなら、少なくとも次の改正時には原則の5年に戻すべきと主張しています。
また、審議を急ぐ理由として、施行予定日までわずかな期間しかないことが挙げられます。
つまり、重要法案にもかかわらず周知期間がゼロということです。

厚労省は、最終的には5年に延ばしますとしていますが、賃金台帳などの記録保存義務期間が現行3年となっていることから、これに合わせて3年としたといっています。
このため厚労省では、令和元年度分から労働者名簿や賃金台帳の記録保存義務違反を厳しくチェックし、違反実態を改めて把握する方針のようです。野党から「当分の間」とはどれくらいかとの質問に対しては、現時点で「当分の間」としかいえないと答えていて、いつ原則の5年になるか分からないとしています。

周知期間がゼロとなっていることに関しては、施行日以降に新たに到来する賃金債権が改正法の対象となるため問題ないと回答しています。
つまり、仮に施行当日の2年4月1日に発生した賃金債権は2年後の4年4月1日から3年目に入りますので、改正法の対象となるのは2年後からとなります。

言い換えれば、施行日以前に発生した賃金債権の消滅時効は2年のままで、遡及適用しないということです。
厚労省としては、2年後までに周知広報を行うので、問題ないとしています。ちょっと異例のような気がします。

一方、雇用保険法等改正案の方は、前週に学者、労使など参考人の意見聴取を行いました。
いまのところ大きな争点はなく予定通り成立に至ると考えられます。
委員会では、新型コロナウイルスの感染拡大問題の審議でかなり時間を取られていますので、今回ばかりは労働部門担当の役人の方々の負担は大幅軽減されています?

労働新聞編集長 箱田 尊文

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