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労働新聞編集長の気ままに労働雑感

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記事一覧

助成金活用で27万人が106万円の壁突破へ|気ままに労働雑感

福岡資麿厚生労働大臣はさきごろ開いた記者会見で、運用開始から1年が経過した「年収の壁支援強化パッケージ」の利用状況を明らかにしました。年収106万円の壁対策として創設したキャリアアップ助成金の社会保険適用時処遇改善コースについては、「今年8月末時点で、27万人の労働者への活用が予定されています」と実績に触れたうえで、「パッケージの活用は着実に進んでいると思われますが、引き続き多くの事業主に活用いただけるよう、さまざまな機会をとらえて周知広報に取り組んでまいりたい」と話しました

従業員参加型ボランティア活動のすすめ|気ままに労働雑感

先日、ある金融グループが実施するボランティア活動に参加してきました。 東日本大震災で津波被害が大きかった宮城県岩沼市において、防災林の育樹をする活動です。 首都圏や関西圏から同グループの役員・従業員とその家族など約200人が集まり、約2時間にわたって「草むしり」をしました。 同グループが被災地に対するボランティア活動を開始したのは2013年。 2014年には地元の中学生やボランティアの人たちとともに苗木を植樹し、それ以降は毎年1度、役員や従業員などの有志が現地を訪れ、苗木を

賃金のデジタル払いがようやく始動|気ままに労働雑感

厚生労働省は8月9日、昨年4月の改正労働基準法施行規則施行により解禁された賃金のデジタル払いについて、対応する資金移動業者としての厚生労働大臣の指定を初めて行いました。 指定事業者の第1号はPayPay(株)(提供サービス名:PayPay給与受取)です。 同社は、自社を含めたソフトバンクグループ10社の労働者を対象に先行的にサービスの提供を開始します。 グループ外の労働者については、年内にも開始する見込みです。 解禁当初は、早ければ同年夏以降に大臣の指定が行われるとみられて

テレワークと労働時間管理|気ままに労働雑感

民間調査機関の(株)東京商工リサ―チが実施した「在宅勤務に関するアンケート」で、新型コロナウイルスの感染者が増加した7月以降に新たに在宅勤務を導入した企業割合が0.9%に留まることが分かりました。 以前から在宅勤務を認めていた企業を合わせた導入割合は、大企業が36.5%なのに対して中小企業は19.5%と、規模によって格差が生じています。 通勤時間が発生しない在宅勤務は、感染防止のみならず、仕事と家庭の両立を図る観点からもメリットがある制度です。一方で、厳密に労働時間を把握す

荷主の協力得て長時間労働防止を|気ままに労働雑感

厚生労働省はさきごろ、令和5年に全国の労働基準監督署が自動車運転者を使用する事業場に対して実施した監督指導の結果を取りまとめました。 それによると、何らかの労働基準関係法令違反がみつかったトラック運送事業場が8割に達しています。とくに、36協定で定めた限度を超えて時間外・休日労働に従事させるなど、労働時間に関する違反率が48%とめだちました。 改善基準告示違反も少なくなく、主なものでは、最大拘束時間(1日当たりの拘束時間)が違反率43%、総拘束時間(1カ月当たりの拘束時間)が

育休取得率が若年層の獲得に影響!?|気ままに労働雑感

厚生労働省のイクメンプロジェクトがまとめた「若年層における育児休業等取得に対する意識調査」(速報値)で、回答者男性のうちの6割が就職活動において育休取得状況を重視していることが分かりました。 入社先を選ぶ際に、仕事とプライベートの両立を意識している男女が8割近くに上ることも明らかになっています。若い人材の獲得をめざす企業においては、育休の取得実績のほか、柔軟な働き方など両立支援の取組みについて積極的に発信することが重要といえそうです。 18~25歳の男女を対象に今年6月に

パワハラ相談、是正指導件数が増加傾向に|気ままに労働雑感

改正労働総合施策総合法によって令和4年4月から中小企業にも義務付けられたパワーハラスメント防止措置などを巡り、労働者から都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に寄せられる相談件数が増加しています。 厚生労働省の集計によると、大企業のみが義務化されていた令和3年度には2万件程度だったのに対し、義務化対象が広がった4年度は2倍以上となる4万6149件に増加。5年度には、その1.3倍となる6万53件に上りました。相談件数の増加とともに、都道府県労働局による是正指導件数も大幅に増えて

「分かりにくさ」がネックの人材開発支援助成金|気ままに労働雑感

厚生労働省がこのほどまとめた「令和5年度能力開発基本調査」で、過去に人材開発支援助成金を利用したことがない事業所が9割を超えることが分かりました。 利用しない理由として、助成率の低さや、金銭的な理由がなく職業訓練を行っていないことを挙げる事業所は少なく、手続きが面倒または制度が分かりにくいことが最大の理由になっています。 同助成金は、事業主が労働者に対して訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。現在は、人材育成支援コースや教育訓練休暇等付与

知っていますか? エイジフレンドリーガイドライン|気ままに労働雑感

政府は6月21日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太の方針)において、今後の政策の方向性として、「高齢者の労働災害防止のための環境整備の推進」を盛り込みました。厚生労働省では今後、労働政策審議会において本格的な議論を行っていく方針です。 政府が高年齢労働者の災害防止対策を重視する背景には、60歳以上の死傷労働災害件数の大幅な増加があります。 全雇用者に占める60歳以上の労働者数の割合が高まるなか、その上昇割合を上回るペースで、死傷者数全体に占める6

国内外企業の「職務給」を紹介|気ままに労働雑感

労働新聞では、7月1日号から新しい連載企画を掲載しています。 そこで、新連載のなかから一部を紹介したいと思います。 読者の皆様から寄せられた「労務管理に関する基本的な事項を学びたい」などとの意見を受けて開始したのが、『ケーススタディー 人事学Q&A』です。身近に起こるトラブルや、そのタネに対して具体的にどのように解決を図っていけばよいかについて、咲くやこの花法律事務所の西川暢春弁護士にご解説いただきます。 初回では、着替え時間の取扱いを取り上げました。今後、使用期間中の解雇

新型コロナ対策や働き方改革に注力~加藤厚労相が就任あいさつ~|気ままに労働雑感

8月10日に第2次岸田改造内閣が発足し、厚生労働大臣には、加藤勝信元厚労大臣が就任しました。 安倍政権時から通算して3度目の登板となります。そこで、就任当日に記者クラブで行ったあいさつの内容を紹介します。 加藤大臣は就任に当たり、「厚生労働行政は、国民の暮らし、生活に密着している行政であり、 期待をいただいている分野であるため、そうした分野を担う重責をしっかり果たしていきたい」、 「今回で3回目の就任となるが、厚生労働行政を取り巻く環境が変わっている。初心に立って、取り組ん

最低賃金引上げ議論がスタート|気ままに労働雑感

中央最低賃金審議会(中賃審、会長=藤村博之法政大学大学院教授)は6月28日、令和4年度の最低賃金の引上げの「目安」策定に向けた議論を開始しました。 後藤茂之厚生労働大臣が藤村会長に諮問文を手交し、できる限り早期の全国加重平均1000円以上の実現をめざし、生計費、賃金、賃金支払い能力を考慮して検討するよう求めました。 「できる限り早期の全国加重平均1000円以上の実現」は、6月7日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針2022)や「新しい資本主義

健康づくりを通じて行動災害防止を|気ままに労働雑感

小売業や介護施設など第三次産業における労働災害増加を受け、厚生労働省は今年5月、とくに増加の顕著な転倒・腰痛の防止・予防対策に関する検討会を設置し、議論を開始しました。 6月19日に開いた第2回会合では今後の論点として、(1)安全衛生教育のあり方や関係者の意識改革、(2)業種・業務の特性に応じた取組み、(3)職場における対策の実施体制の強化、(4)労働者の健康づくりによるアプローチ――などが挙がりました。 もちろんどの項目も重要ですが、注目したいのが、(4)の健康づくりによる

女性の就業促進へ制度見直しも|気ままに労働雑感

政府は6月14日、令和4年版男女共同参画白書を閣議決定しました。 共働き世帯が増えるなか、その女性の働き方がフルタイムではなくパートタイム中心となっていることに触れたうえで、昭和の時代に創設された税制や社会保障制度が、女性を専業主婦や家計補助というモデルの枠内に留めている一因と指摘しています。 多くの企業が支給している配偶者に対する家族手当についても要因の1つとして挙げました。 税・社会保障制度などのさらなる見直しが必要としています。 総務省の調査によると、有配偶の非正規雇