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バンドの体験感覚をそのまま真空パックしたみたいなレコード。 Big Thief『Dragon New Warm Mountain I Believe in You』

インディー・フォーク・バンド Big Thiefの2022年最新作『Dragon New Warm Mountain I Believe in You』。4ADからのリリース。本作は20曲入り2LPだ。動物たちが火を囲み楽しく演奏している姿のアートワークは、まるでバンドが寄り添って、静かに音楽を奏でているかのよう。

ひとつのスタイルだけでなく、雰囲気も様々な曲たち。この作品は、アルバムというカテゴリーだが、コンピレーションアルバムと言ってもいいかもしれない。それもそのはず、このレコードは合計4箇所にも及ぶ別々の場所でレコーディングされたものなのだ。というのも、ニューヨーク州北部、トパンガキャニオン、ロッキー山脈、アリゾナ州ツーソン...バンドは5ヶ月間の制作期間を経て、全45曲を完成させた。 その中から最も心に響く曲を選び、20曲の2LP作品を作った。

中でも特に気になるトラックをピックアップしたいと思う。Adrianne Lenkerの、「…OK?」という一言からセッションが始まるオープニングトラックの「Change」。最初から、このアルバムがこういった空気感を大切にしていることを改めて知る。そして、スロウテンポに展開していくこの曲は、変化していく空や、まだ見ぬ・知らぬ死、について歌った曲だ。

そして「No Reason」は、コーラス、フルート、アコギが優しく重なり合うラブソング。ライブなど、人が集まる場所で声を出して歌いたくなる曲だ。れこそ、ジャケットのように火を囲んで聴いてみたい。これは、バンドのための曲ではなく、"みんなの曲"という感覚。

音楽はスタジオやベッドルームで作るもの、という常識を逸脱した、壮大なるフィールドワーク。バンドの体験感覚をそのまま真空パックしたみたいなレコードだ。

リリース後に公開されたこちらの映像なんて、まさしくアートワークのようにぐるりと円になって演奏しているではないか。何度も見返してしまう映像です。ああ、終わって欲しくない。

Dragon New Warm Mountain I Believe in You / Big Thief (2LP:Black)
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