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【ボランチを変えた理由】Monthly Review 2021 Vol.3【意外なキーマン】

どーも、ロッドです。

2021マリノスは第3章に差し掛かってきました。

4月の終わりにマンスリーレビューVol.2を書いたときから色々なことがあり、それに準じて変化もしています。

その変化について今回はまとめつつ、いつも通り前月繰越課題についての整理もしていきますのでどうぞ最後までお付き合いください。

では、Monthly Review 2021 Vol.3始めます。
5月の航海を一緒に振り返っていきましょう。


【対象試合】

▼試合数:6試合
▼成績:4勝1分け1敗 10得点7失点


vsFC東京(Away) 3-0(Win)


vs神戸(Home) 2-0(Win)


vs鹿島(Away) 3-5(Lose)


vs柏(Home) 1-1(Draw)


vs大分(Away) 1-0(Win)


vs清水(Home) 2‐1(Win)


【課題の解決法と意外なキーマン】


Vol.2では、引いた相手から点を取ることを課題として挙げました。これについて、私の質問箱に届いた質問を引用しつつ考えてみます。

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質問者の方が言っている通り、たしかに今のマリノスは4-4-2のような特に守備を固めてくる相手に対してやりにくさを感じている部分は同意です。

なぜやりにくそうに見えるのか?
それは、こうやって得点を取る、という単一のパターンを有していないからです。

例えばですが、「誰がここに動いてここのスペースを空けて、ここにパスを通す」という決まりきったパターンを一つ用意するとします。そのパターンを磨いたところで、相手はそれに対応してきます。次の試合どころか、今の現場の分析能力であれば、飲水タイム明けには同じ手は通用しなくなっているはずです。

そうであるならば何が必要になるのか、それは、「あの手この手感」です。

つまり、右も左も中央も、ハイテンポもスローテンポも、自陣からも敵陣からも、あらゆる手を尽くしてゴールに迫ること、これが肝要です。

停滞気味に見えた柏戦に顕著ですが、前半からあの手この手感が出ていない試合はマリノスが苦戦している傾向があります。


逆に清水戦では、あの手この手感を見ることができました。

例えば左の大外でティーラトンがパスを受けた場面。次のような攻撃方法が展開されていました。

・ボックス内に人数をかけた状態でのアーリークロス
・斜めに鋭い楔のパス
・前田大然へのスルーパス
・中央のボランチへ展開してサイドチェンジ

特にボックスに人数をかけてアーリークロスを放った後に斜めに楔のパスを入れると、相手DFは対応するのが難しくなります。こうやって相手DFの予想を裏切り続けることがゴールへの近道です。

これ以外にも、トランジションに持ち込んで速攻で刺す(ただし…最近はトランジション局面をつぶしてくるチームが増えている)など、マリノスは徐々にではありますが、多彩な攻撃方法を身に着け始めています。

あの手この手でゴールを狙い続けること、そのキーマンとなっているのが、前田大然です。今のマリノスは、大然によって攻撃が決まっていると言っても過言ではありません。

爆発的なスピードを活かしたプレーだけでなく、楔のパスを受けることもできる前田大然は、今のマリノスの攻撃をリードする存在です。

❶大外からのクロスに合わせる
❷後方からのスルーパスに反応
❸相手のビルドアップに対してプレスをかけて奪って速攻
❹縦パスを引き出してコンビネーション形成

上記の攻撃パターンのすべてをこなしているのが今の前田大然なのです。

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前田大然が出ている試合と出ていない試合では、マリノスの攻撃のテンポが違います。これは善し悪しではなく。例えば彼が出ていない試合がルヴァン杯ではいくつかありました。代表的なのが、最後のホーム清水戦(@三ツ沢、○5-1)です。この試合では、試合開始から清水を押し込んだ状態でじっくりパスを回して崩しにかかっていました。その結果、今季リーグで見られるサッカーとはまた違った素晴らしいスペクタクルを見ることができたわけですが。

これは、チーム全体のポジショニングにも言えることです。今季は比較的ポジションチェンジを自重しがちなマリノスですが、これは前田大然が出ているかどうかによる影響もありそうです。

というのも、前田大然が出ているときはポジションチェンジを行なう前にゴールに迫ってしまうため、その時間がない、という仮説。逆に前田大然が出ていないときは比較的じっくりパスをつないでゴールまで迫るので、ポジションチェンジを行なう時間的な余裕が生まれるのではないでしょうか?

大然のはっきりとした裏抜けの動きやプレスの速さがチームに伝播し、テンポが上がってある意味"攻め急ぎ"のような様相を呈す。

というのはあくまでも仮説ですが。笑


話が散らかったのでそろそろまとめます。
「引いた相手から点を取る」部分は依然として継続課題です。

その原因は、あの手この手でゴールに迫ることができていないから。細かいパスで相手を崩さなくても点を取る方法はいくらでもあるので、そこは川崎を追ってはいけないところです。

ただパスを回すだけではなく、あらゆる手段でゴールに迫る。そのキーマンとなっているのが、前田大然です。彼の持っているプレーの幅によって今のマリノスの攻撃は支えられています。彼の裏抜け、周囲との関係性、クロスに合わせる上手さ、そしてプレッシング。マリノスは意外にも前田大然のチームになっているのかもしれません。


【ボランチを変えた理由】

皆さんにとって、ボスのマリノスのダブルボランチといえば誰ですか?

おそらくほとんどの方が「喜田と扇原」と答えるはずです。

しかし、この5月にその状況は一変しました。

2019シーズン途中からコンビを組み、15年ぶりの優勝をもたらし、その後も安定感のある補完性を披露してくれたあのゴールデンコンビの地位が今、脅かされようとしています。

発端は5/15の鹿島戦、マリノスは開幕戦以来の黒星を喫しました。決して喜田と扇原が悪いから負けた試合ではなかったのですが、このような事態になってしまいました。

すると、ルヴァン杯を挟んだ5/22の柏戦、開幕から不動のスタメンを守り続けてきた扇原がベンチスタートとなり、代わりに天野がボランチ(インサイドハーフ?)の一角に入って喜田とのダブルボランチを形成しました。

さらに状況が変わったのがその次の5/26の大分戦。喜田と扇原がメンバーにすら入らず、岩田と渡辺皓太がスタメンを飾りました。その後の清水戦も同じコンビで臨み、今に至るというわけです。

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なぜこのような変化が起こったのか?それを考えてみます。

理由は大きく分けて3つです。

①求められるボランチ像の変容
②よりハイスペックなボランチの台頭
③マンネリ化防止

それぞれについて詳しく述べます。


①求められるボランチ像の変容

相手チームがマリノスに対してやってくることも徐々に変容してきます。特にここ数試合で顕著なのは、自分たちでボールを保持することを放棄し、マリノスにボールを持たせてくる相手が増えていることです。

そうなると求められるのは、ボール奪取能力に優れたボランチではなく、ボールを動かして攻撃を組み立てることに長けている、あるいは、ゴール前でクオリティを発揮できるボランチです。

そういう環境にチームが置かれたときに良さが生きるのが本当に喜田と扇原なのか、という部分は考えなければなりません。


②よりハイスペックなボランチの台頭

渡辺皓太と岩田智輝、この2人の良さは、ボールを持ったときのプレー選択の幅にあります。長短のパス、ドリブル、ミドルシュート、ゴール前への思いきりの良い飛び出しと、ラスト1/3を攻略するうえで必要な引き出しをたくさん持っているスペックの高い選手たちです。

こうしたゴール前のクオリティは、喜田と扇原にはないものです。

現段階でスペース管理やカバーリングの部分に課題があったとしても、ボスがボランチにゴール前のクオリティを求めているとしたら、渡辺と岩田をチョイスするのは不思議なことではないのかもしれません。


③マンネリ化防止

ボス4年目、選手もボスのサッカーに慣れてきて、マンネリ化することが予想されます。完成度・熟練度と言えば聞こえは良いですが、それは今まで築き上げてきたものからもう伸びないことと同義です。

今季のマリノスは、そうしたマンネリというものに対して懸命に抗い続けているように見えます。

喜田と扇原を使っているときでさえ、喜田を前に出して4-1-2-3のような陣形でやっていました。チームの屋台骨であるボランチに従来とは異なる動きをさせた場合、その周りの選手もそれに対応する必要が出てきます。
喜田と扇原のタスクが変わったことで、必然的にチーム全体の喜田と扇原に対する依存度が下がります。

今まで喜田と扇原にしかできなかった働きを、ほかの選手にも分散させることで、喜田と扇原じゃなくてもやれるチームになります。その結果、ボランチに求められる役割を再定義することができるのです。

部屋のリフォーム・模様替えと同じです。一度レイアウトを組み立てて生活していた部屋に別のものを置くとなった場合、一から部屋のレイアウトを考え直す必要に迫られることってありますよね。

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というわけで、ボランチを変えた理由でした。

これは今季のシーズンプレビューを書いたときから言っていることですが、今季のマリノスの浮沈を左右するのはダブルボランチの非聖域化でした。

いつまでも喜田と扇原が鎮座しているチームでは優勝なぞできない。このコンビを脅かす存在が必要でした。個人的には夏場の連戦で入れ替わりが起こるものと予想していましたが、想像していたより3か月早く入れ替わりが起こったことには驚いています。

喜田と扇原の逆襲にも期待したいですし、推しの和田拓也や他の選手にもボランチの座を奪い取ってほしいです。今後も熾烈な競争を続けながら最後まで走りきってほしいですね。




写真提供:ゆかさん

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